Sightsong

自縄自縛日記

クリス・ピッツィオコス『One Eye with a Microscope Attached』

2016-12-06 18:51:56 | アヴァンギャルド・ジャズ

クリス・ピッツィオコス『One Eye with a Microscope Attached』(Eleatic Records、2016年)を聴く。

Chris Pitsiokos (as)
Andrew Smiley (g)
Henry Fraser (b)
Jason Nazary (ds) 

これまでのピッツィオコスとは随分と印象が異なる。すべてかれの手により作曲された曲の演奏なのであり、即興演奏とは異なる。

もっとも、即興であれ曲であれ、猛烈なスピードでの猛禽のようなアルトソロがかれの持ち味でもあったから、そのことは大した違いではないのかもしれない。ここでも、どうなっているのかというほどの変態的な高速フレーズを平然と吹いている。アンドリュー・スマイリーのギターの効果は絶大で、極彩色のパンクサウンドである。しかもアレンジもしっかり構築されているように聴こえる。 

アルトの白石民夫さんにピッツィオコスについて尋ねてみたところ、「かれは曲を演る」と答えた。そのときは、同じニューヨークで活動しながら音楽上の接点はなかったのだが、その後、Downtown Music Galleryでのライヴで共演している。白石さんの印象はどのようにか変わっただろうか。

●クリス・ピッツィオコス
ニューヨーク、冬の終わりのライヴ日記(2015年)
クリス・ピッツィオコス@Shapeshifter Lab、Don Pedro(2015年)
クリス・ピッツィオコス『Gordian Twine』(2015年)
ドレ・ホチェヴァー『Collective Effervescence』(2014年)
ウィーゼル・ウォルター+クリス・ピッツィオコス『Drawn and Quartered』(2014年)
クリス・ピッツィオコス+フィリップ・ホワイト『Paroxysm』(2014年)
クリス・ピッツィオコス『Maximalism』(2013年)


トリオ・クルピラ『Vinte』

2016-12-06 16:05:10 | 中南米

神楽坂の大洋レコードで、ジャズとして面白いものはないだろうかと尋ねたところ、トリオ・クルピラ『Vinte』(2016年)をご紹介してくださった。エルメート・パスコアール集『Viva Hermeto』を作ったアンドレ・マルケスが参加するピアノトリオであり、ここでは、御大エルメートを含め、多くのゲストがトリオに加勢したアルバムになっている。

Trio Curupira:
Andre Marques (p, fl)
Fabio Golveia (b, g)
Cleber Almeida (ds, g, vo)

Guests:
Ricardo Zohyo (b) (1)
Gabriel Grossi (harmonica) (2) 
Hamiliton de Holanda (bandolim) (3)
Jane Duboc (vo) (4)
Itibere Zwarg (b) (5)
Raul de Souza (tb) (6)
Hermeto Pascoal (bass fl) (7)
Natan Marques (g, vo) (8)
Jota P (ts) (9)
Arismar do Espirito Santo (g) (10) 

確かにマルケスはエルメート・パスコアールの後継者的な存在なのかなと思わせてくれる。軽やかなタッチのピアノもそうだが、どの曲も、うきうきとしてはじけるようでいて、愁いのようなものもあり、魅力爆発なのだ。10曲の中でエルメートの曲はひとつに過ぎないのに。

1曲ごとに異なるゲストが参加していて、それぞれ趣向が異なっている。ガブリエル・グロッシがハーモニカで参加した3曲目、ジェーン・ドゥヴォックの軽いヴォイスとマルケスのフルートが絡む4曲目、そしてエルメートがベース・フルートを吹いた7曲目など、とても愉しい。特に、エルメートである。息と声をベース・フルートにミックスして、この人はやはり妖精なのだった。

いままで知らなかったのだが、トリオ・クルピラは結成20年にもなる長寿バンドである。遡って聴く楽しみができた。

●参照
アンドレ・マルケス『Viva Hermeto』(2014年)
エルメート・パスコアールの映像『Hermeto Brincando de Corpo e Alma』(最近?)
2004年、エルメート・パスコアール(2004年)
エルメート・パスコアールのピアノ・ソロ(1988年) 


デイヴ・ホランド『Dream of the Elders』

2016-12-06 08:39:59 | アヴァンギャルド・ジャズ

デイヴ・ホランド『Dream of the Elders』(ECM、1995年)を聴く。

Dave Holland (b)
Steve Nelson (vib, marimba)
Eric Person (as, ss) 
Gene Jackson (ds)
Cassandra Wilson (vo) (4) 

これに限ったことではないが、デイヴ・ホランドは、自身のサウンドでは、常に中央でダンスを踊るようなベースを弾く。もう、そのたびに耳がホランドの旋律に貼りついてしまう。

実はいま頃思い出したようにこれを聴いているのは、ドラムスのジーン・ジャクソンが参加しているからである。大きなエンジンをフル稼働させて機敏に動いているようであり、自在に急停止と急発進を続け、「ん、バシャバシャ」とキメを入れてくる。ハービー・ハンコック・トリオのドラマーだったかれは、いまは日本でも頻繁に演奏しているのだから、もっと観に行かなければなと思っている。

カサンドラ・ウィルソンが歌うマヤ・アンジェロウの詩「Equality」も悪くない。アルバムすべてをアンジェロウの詩で埋め尽くしてもよい。

●デイヴ・ホランド
『Aziza』(2015年)
デイヴ・ホランド『Prism』(2012年)
デイヴ・ホランド+ペペ・ハビチュエラ『Hands』(2010年)
デイヴ・ホランドの映像『Jazzbaltica 2003』(2003年)
ケニー・ホイーラー+リー・コニッツ+デイヴ・ホランド+ビル・フリゼール『Angel Song』(1996年)
カール・ベルガー+デイヴ・ホランド+エド・ブラックウェル『Crystal Fire』(1991年)
デイヴ・ホランド『Conference of the Birds』(1973年)