シルヴァ+ラスムセン+ソルベルグ『Free Electric Band』(fortune、2014年)を聴く。ポーランドでのライヴ録音。
Alan Silva (syn)
Mette Rasmussen (as)
Ståle Liavik Solberg (ds)
まずはメンバーの妙に少し驚く。フリージャズの闘士的な大ヴェテラン、アラン・シルヴァは、ベースではなくシンセサイザーを弾いている。さらにノルウェーのメテ・ラスムセンとストーレ・リアヴィーク・ソルベルグ。
ソルベルグは、最近、ジョン・ブッチャーとのデュオ『So Beautiful, It Starts to Rain』(2015年)において、パルスでの分断によってブッチャーをそれに呼応した生き物へと変化せしめたのだが、ここでは、むしろシルヴァとラスムセンのプレイの間隙を埋め、ふたりのポテンシャルを高める効果を与えている。
そして、特筆すべきことは、ラスムセンのアルトの多彩極まりない音色である。これには誰もが驚かされるに違いない。はじめは、幽霊のようなシルヴァのキーボードに合わせて抑制し震わせたり、フラジオで高音を攻めたり、アルトらしく闊達に吹いたりもしている。これだけでも十分と言うことができようものだが、30分前後になって、循環呼吸で長く吹くわけではないのだが、エヴァン・パーカーを思わせるような二重らせんならぬ多重らせんのマルチフォニックな音空間を提示する。その後、収束に向かって、尺八のような音色の時間があり、さらに、尺八と金管楽器を混ぜ合わせたような音色も展開する。
シルヴァも見事である。幽霊の音、光輝くクリスタルの音、ベースの音、それらがラスムセンのたいへんな才能と絡み合っている。
なお、ラスムセンは2017年5月12-20日に来日し、パーカッションのクリス・コルサーノと行動を共にする(このふたりは、傑作『All the Ghosts at Once』をものしている)。その後の日程でもソロで吹くかもしれないということで、とても楽しみにしている。
●アラン・シルヴァ
ブッチ・モリス『Possible Universe / Conduction 192』(2010年)
ダニエル・カーター『The Dream』、ウィリアム・パーカー『Fractured Dimensions』(2003、06年)
サニー・マレイ『Perles Noires Vol. I & II』(2002、04年)
ESPの映像、『INSIDE OUT IN THE OPEN』(2001年)
ザ・ジャズ・コンポーザーズ・オーケストラ(1968年)
サニー・マレイのレコード(1966、69、77年)
●メテ・ラスムセン
ドレ・ホチェヴァー『Transcendental Within the Sphere of Indivisible Remainder』(JazzTokyo)(2016年)
メテ・ラスムセン+クリス・コルサーノ『All the Ghosts at Once』(2013年)
●ストーレ・リアヴィーク・ソルベルグ
ジョン・ブッチャー+ストーレ・リアヴィーク・ソルベルグ『So Beautiful, It Starts to Rain』