Sightsong

自縄自縛日記

ポール・ラザフォード『Solo Trombone Improvisations』

2016-12-05 10:53:56 | アヴァンギャルド・ジャズ

ポール・ラザフォード『Solo Trombone Improvisations』(EMANEM、1974年)を聴く。

Paul Rutherford (tb)

奇怪でもあり愉快でもある、トロンボーン完全ソロ。

それにしてもサウンドの表情が豊かである。たとえば2曲目の「Elaquest」において金属の玩具音をがらがらと鳴らしたり、なにかをバホバホと叩いていたり、どうやっているのだろう。また、ヴォイスとともに吹くのはわかるとして、それが、時に、フィル・ミントンが喉の奥で鳴らす口笛のような音であったり、また船のエンジン音やガーグルのようであったり。

いちどだけ、ベルリン・コンテンポラリー・ジャズ・オーケストラのメンバーとして演奏するところを観たが(本人は2007年に亡くなっている)、それ以外はあまり注目して聴いてはこなかった。グローブ・ユニティを含め、もうちょっとこの人を耳で追いかけてみようかな。


リー・コニッツ『Spirits』

2016-12-05 09:17:19 | アヴァンギャルド・ジャズ

リー・コニッツ『Spirits』(Milestone、1971年)を聴く。

Lee Konitz (as)
Sal Mosca (p)
Ron Carter (b)
Mousie Alexander (ds) 

コニッツが、師匠筋にあたるレニー・トリスターノに捧げた作品である。ここでも同じ門下のサル・モスカのピアノとともに、特にシンコペーションを取るでもなく、またどちらかがどちらかに従属して伴奏をするでもなく、それぞれがうねうねとした即興の旋律を創出し、並走する。曲も、トリスターノ、コニッツ、ウォーン・マーシュのもの。

コニッツは、アルトの音色も即興のスピードもキレキレだった50-60年代を経て、少しマイルドになっている。このころのコニッツもとても好きで、同じ70年代の『Satori』だとか、『I Concentrate on You』というコール・ポーター集だとかも良い。また、後年、現在に至るまで、よりエアを含んでふにゃふにゃの音になっているが、それも好きである。要するにコニッツなら良いのだ。

しかし、しかしです。最初の2曲はコニッツとモスカとのデュオなのだが、そのあと、4曲においてロン・カーターを含めたカルテットになる。既にカーターのベースがゆるゆるでピッチも弛緩している。これではぶち壊しだ。ふたりだけのクールジャズだったらどんなに渋くて良かったか。そういえば、ゴンサロ・ルバルカバのピアノトリオ作品『Diz』でも同じようにひどい作品に仕立て上げることに貢献していた。

●リー・コニッツ
今井和雄トリオ@なってるハウス、徹の部屋@ポレポレ坐(リー・コニッツ『無伴奏ライヴ・イン・ヨコハマ』、1999年)
ケニー・ホイーラー+リー・コニッツ+デイヴ・ホランド+ビル・フリゼール『Angel Song』(1996年) 
リー・コニッツ+ルディ・マハール『俳句』(1995年)
アルバート・マンゲルスドルフ『A Jazz Tune I Hope』、リー・コニッツとの『Art of the Duo』 (1978、83年) 
アート・ファーマー+リー・コニッツ『Live in Genoa 1981』(1981年)
ギル・エヴァンス+リー・コニッツ『Heroes & Anti-Heroes』(1980年) 
リー・コニッツ『Jazz at Storyville』、『In Harvard Square』(1954、55年)