Sightsong

自縄自縛日記

The Necks『Hanging Gardens』

2018-03-27 08:05:37 | アヴァンギャルド・ジャズ

The Necks『Hanging Gardens』(Fish of Milk、1996、1999年)を聴く。

Chris Abrahams (p, Hammond, Rhodes, key)
Tony Buck (ds, perc, samples)
Lloyd Swanton (b)

1時間の音楽ドラマ(というと安っぽく聞こえるか)。

トニー・バックが一連の複雑なパルスを発してトリオを主導し、クリス・エイブラムズのピアノがステージの中央で舞う。ロイド・スワントンの推進力も華麗。

間に静寂の時間があって、エイブラムズが暗闇で息を殺してキーボードを鳴らす。そしてまたバックが戻ってきてサウンドが走り始める。

●The Necks
The Necks@渋谷WWW X(2016年)
The Necks『Chemist』、『The Townsville』(2006、2007年)


東京ザヴィヌルバッハ・スペシャル@渋谷The Room

2018-03-27 01:55:50 | アヴァンギャルド・ジャズ

渋谷のThe Roomにて、東京ザヴィヌルバッハ・スペシャル(2018/3/26)。

Masayasu Tsuboguchi 坪口昌恭 (key, vocorder)
Shinpei Ruike 類家心平 (tp)
David Negrete (as, fl)
Yosuke Miyajima 宮嶋洋輔 (g)
Ryoji Orihara 織原良次 (fretless b)
Masato Mori 守真人 (ds)
Yoco (dance)
Yu (dance)
OIBON (DJ)

最初からカッコいいのはわかっているし実際カッコいい。

守真人の強烈なビートがハコのなかの空気を刻み、ベースとギターと、そして坪口昌恭の艶やかでトリッキーなキーボードが、興奮するなと言われても無理なグルーヴを創り出している。

面白いことに、デイヴィッド・ネグレテのアルトはサウンドの中に「ジャズ」をごりっと力技で持ち込むように聴こえた。また類家心平のトランペットはここでも実にエモーショナルでナマ感覚があり、露が滴るようである。

それにしてもThe Roomにはじめて来てみたが、良いハコである。またいいプログラムを見つけて突入しよう。

●坪口昌恭
ホセ・ジェイムズ@新宿タワーレコード

●類家心平
TAMAXILLE『Live at Shinjuku Pit Inn』(2017年)
ナチュラル・ボーン・キラー・バンド『Catastrophe of Love Psychedelic』(2015-16年)
RS5pb@新宿ピットイン(2016年)
白石雪妃×類家心平DUO(JazzTokyo)(2016年)
白石雪妃+類家心平@KAKULULU(2016年)
齋藤徹+類家心平@sound cafe dzumi(2015年)
板橋文夫『みるくゆ』(2015年)
森山・板橋クインテット『STRAIGHTEDGE』(2014年)


西島芳 triogy@下北沢Apollo

2018-03-27 01:29:11 | アヴァンギャルド・ジャズ

下北沢のBar Apollo(2018/3/25)。前日が素晴らしかったものだから、西島芳2デイズの両日を観ることに。

triogy:
Kaori Nishijima 西島芳 (p, vo)
Hiroshi Yoshino 吉野弘志 (b)
Yoshinori Shiraishi 白石美徳 (ds)

この日はオーソドックスなピアノトリオ。しかし各人が個性的なので、実はぜんぜんオーソドックスではない。

西島さんのピアノはとても柔らかく鳴る。優しくもノスタルジックでもあり、また日常とつながっているような曲と演奏。吉野さんは低く響く美声を持っているが、コントラバスの音もまさにそのようだ。ずいぶん前に、松風鉱一さんのグループでのレコーディングライヴだったとき(studio weeが録音)、直前に弦を張り変えて、その結果、録音は日の目を見なかった。音が楽器や周囲の空気と馴染むまでには時間がかかるものであり、また逆に、吉野さんの音はそのようなものだということである。そして白石さんのプレイも独創的で、シンバルを横からスティックで鳴らしたりと繊細であり、ドラムの迫力に頼らない面白さがある。そんなわけで2セットをじっくりと堪能し大満足。

次の東京での演奏予定は、5/18と19だそうである(新宿ピットインとアポロ)。

●西島芳
西島芳 trio SONONI@下北沢Apollo(2018年)
西島芳アンサンブル・シッポリィ『Very Shippolly』(2017年)

●吉野弘志
吉野弘志+中牟礼貞則+廣木光一@本八幡Cooljojo(2016年)
松風鉱一トリオ@Lindenbaum(2008年)
向島ゆり子『Right Here!!』(1995-96年)
ジョセフ・ジャーマン

●白石美徳
かみむら泰一session@喫茶茶会記(2017年)
照内央晴「九月に~即興演奏とダンスの夜 茶会記篇」@喫茶茶会記(JazzTokyo)(2016年)


セシル・マクロリン・サルヴァント@ブルーノート東京

2018-03-27 00:28:51 | アヴァンギャルド・ジャズ

ブルーノート東京でセシル・マクロリン・サルヴァントを観る(2018/3/25、1st)。

Cécile McLorin Salvant (vo)
Aaron Diehl (p)
Paul Sikivie (b)
Kyle Poole (ds)

最初に「I Didn't Know What Time It Was」、次に「I've Got Just About Everything」。言葉の発音がとてもクリアなことにあらためて驚く。続く「What's The Matter Now」はベッシー・スミスも歌った曲だそうであり、セシルの歌声にも少なからずベッシーの透明で高い声が重なるように聴こえる。「All Or Nothing At All」では「at all」の歌唱に圧倒されてしまう。

「My Man's Gone Now」はアーロン・ディールの弾くイントロから可憐に歌い始め、彼女にスポットライトが当たる。もうやられっぱなし。「... together to the promised land」に至り大変な説得力をもって迫る。ちょっとアビー・リンカーンを思わせる瞬間もある。

「Lover, Come Back To Me」はポール・シキヴィーのウォーキングベースとのふくよかなデュオから入り、やがてピアノとドラムスとが介入する。最初からずっと、ディールのピアノがカラフルで工夫を凝らしていることが印象的だったのだが、ここで、セシルはピアニストに対し、あなたほど歌うようなピアニストは知らない、なんて呟きながら、「I Hate A Man Like You」でピアノとのデュオ、にくい。

客席に向かって、ビートルズは知ってる?と呼びかけ、「And I Love Her」。最後の曲だと言いながら、『West Side Story』から「Something's Coming」。ピアノトリオがリズムを頻繁に変え、セシルはロングトーンで執拗に歌う。裏声も使い、「Maybe tonight!」と言うありさまには狂気も漂っていた。アンコールは、ジュディ・ガーランドが歌った「The Trolley Song」で、アップテンポでがんがん攻め、最後は両手を開いて「... to the end of the line」と絶唱した。

わたしはエラもサラも観たことがないが、歌唱力も迫力も説得力もレジェンドに匹敵するものではないかと思えるほどだった。ときにこちらに視線が来ると、雷に打たれたように、蛇に丸呑みされたようになってしまった。もう完璧。新譜も聴こう。

そういえばカイル・プールって、NYのSmallsで深夜セッションをよくやっている人ではなかったか。


小熊秀雄『焼かれた魚』

2018-03-27 00:11:21 | 思想・文学

小熊秀雄『焼かれた魚』(パロル舎、原著1925年)を読む。

水揚げされた秋刀魚は海が恋しくてたまらない。猫に頼み、溝鼠(どぶねずみ)に頼み、野良犬に頼み、烏に頼み、蟻に頼み、だんだんと故郷の海に近づいてゆく。そのたびに対価として自分の肉を差し出し、海に入ったときには骨だけなものだから泳ぎもできず塩が沁みて痛い。そして生物の食物連鎖からさらに大きな地球上の循環へと入ってゆく。

1925年にしてこの広がりと想像力。またおかしな幻想を共有しない童話。素晴らしいな。

市川曜子の挿絵もいいし、アーサー・ビナードによる英訳もいい。ああこんなふうに訳すのか、と。

●小熊秀雄
東京⇄沖縄 池袋モンパルナスとニシムイ美術村@板橋区立美術館
植民地文化学会・フォーラム「内なる植民地(再び)」