Sightsong

自縄自縛日記

ルイ・ヘイズ『Breath of Life』

2019-06-19 23:20:55 | アヴァンギャルド・ジャズ

ルイ・ヘイズ『Breath of Life』(Muse、1974年)を聴く。

Louis Hayes (ds)
Tex Allen (tp, flh)
Gerald Hayes (as)
Charles Davis (bs, ss)
Ronnie Mathews (p)
David Williams (b)
Toot Monk (congas, perc)

このときヘイズは30代後半で、デビュー作が早かったわりには本盤はようやく2枚目である。もちろんサイドマンとして多くの録音に参加している。キャノンボール・アダレイやジョン・コルトレーンの作品も良いけれど、わたしとしては、バリー・ハリス『At the Jazz Workshop』(1960年)でのキレがあるドラミングが好みだ。

本盤のメンバーは地味である。それは知名度ということだけではなくて(トランペットのテックス・アレンやアルトのジェラルド・ヘイズなど知らない)、アンサンブルも各メンバーのソロもさほど何かが突出しているわけではない。聴きどころはやはりヘイズのドラミングだ。常にスタイリッシュでも荒々しくもある嵐がヘイズの身体から巻き起こっている。そのため、コンガとパーカッションのトゥート・モンクがいてもいなくても嵐の存在感が目立っている。(トゥート・モンクって誰だろうと思ったら、セロニアス・モンクの息子T. S. モンクのことだった。)

●ルイ・ヘイズ
ルイ・ヘイズ@Cotton Club(2017年)
ルイ・ヘイズ『Serenade for Horace』(-2017年)
ルイ・ヘイズ@COTTON CLUB(2015年)
ルイ・ヘイズ『Return of the Jazz Communicators』(2013年)
ジャズ・インコーポレイテッド『Live at Smalls』(2010年)
ルイ・ヘイズ『Dreamin' of Cannonball』(2001年)
ルイ・ヘイズ『The Real Thing』(1977年)
フレディ・ハバード『Without a Song: Live in Europe 1969』(1969年)


関川夏央『砂のように眠る』

2019-06-19 21:44:08 | 政治

関川夏央『砂のように眠る むかし「戦後」という時代があった』(新潮文庫、原著1993年)を読む。

戦後、地にへばりつくように生きてきた人たちの姿が、小説と評論とを交互に繰り返す形で描写されている。もっとも「地にへばりつく」と大袈裟に言ったところで、それはほとんどの人がそうであったということに違いない。そしてその中には著者も入っている。著者の「実感」は、体験したという重さと時代とに縛られている。それゆえ、四半世紀前に書かれたことの古さをどうしても感じてしまう。

小田実が勢いにまかせて活動したこと、しかし後で振り返っての内省が乏しかったことは、きっと的を射ているだろう。しかし、60年安保の反対運動の盛り上がりについて、あたかも若者が反対するという自己満足をしたかっただけだと言わんばかりの記述は、悪い意味で「実感」に引きずられたものだ。たとえば、「父親は南京でそんな事件を見なかったと言っていたよ」という雑さと何が違うのか。


謝明諺+秋山徹次+池田陽子+矢部優子@Ftarri

2019-06-19 07:37:07 | アヴァンギャルド・ジャズ

水道橋のFtarri(2019/6/18)。

MinYen "Terry" Hsieh 謝明諺 (ts)
Tetuzi Akiyama 秋山徹次 (g)
Yoko Ikeda 池田陽子 (viola)
Yuko Yabe 矢部優子 (p)

秋山+池田+矢部トリオ。はじめて観る矢部さんのプレイに驚いた。ピアノを蹴ったり蓋を無雑作に開け閉めしたりして、それが演奏空間にためらいなく侵入してくる。逆に言えば、演奏空間においてそのような日常の動きが如何に抑制されているのかということだ。池田さんは(演奏と日常の垣根のことではなく、)演奏自体で極めて抑制した音を出す。それが放縦のピアノと、目を覚ますような秋山さんのギターとの対比において鮮やかだった。抑制のエネルギーによってか、池田さんは激しい動きではないのにとても汗をかいていた。

テリーさんのソロ。5、6種類の演奏を行った。マイクを使わず、天井の高いFtarriの空間の中で、音になるかならないかの小さくマージナルな音、ヴォイスとともに吠える咆哮、フレージングを主にした展開、管を過剰に鳴らしての音のよれなど、巧みで、物語のように聴こえた。終わった後の拍手がとても大きかった。

4人。矢部さんはさらに放縦になり鍵盤も叩き、嬉しくなる。池田さんは一転して多彩に突出する演奏であり、含みのある良い音。秋山さんはやはりストイックと欲の両方が感じられる楔を打ち込んでくる。そして、ときにピアノとヴィオラとがテリーさんとともに融合し、サウンド全体がずおおっと盛り上がり、壁やピアノの筐体が共振しているように聴こえた。

Fuji X-E2、7artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●謝明諺
謝明諺+高橋佑成+細井徳太郎+瀬尾高志@下北沢Apollo(2019年)
陳穎達カルテットの録音@台北(2019年)
東京中央線 feat. 謝明諺@新宿ピットイン(2018年)
謝明諺+大上流一+岡川怜央@Ftarri
(2018年)
謝明諺『上善若水 As Good As Water』(JazzTokyo)(2017年)
マイケル・サイモン『Asian Connection』(2017年)

●池田陽子
アレクサンダー・ホルム、クリス・シールズ、クラウス・ハクスホルムとのセッション@Permian(2019年)
エレクトロニクスとヴィオラ、ピアノの夕べ@Ftarri(2019年)
鈴木ちほ+池田陽子(solo solo duo)@高円寺グッドマン(2019年)
池田陽子+山㟁直人+ダレン・ムーア、安藤暁彦@Ftarri(2018年)
森重靖宗+池田陽子+増渕顕史『shade』(2018年)
佐伯美波+池田若菜+池田陽子+杉本拓+ステファン・テュット+マンフレッド・ヴェルダー『Sextet』(2017年)
クリスチャン・コビ+池田若菜+杉本拓+池田陽子『ATTA!』(2017年)

●秋山徹次
エリザベス・ミラー+クレイグ・ペデルセン+秋山徹次+中村としまる@Ftarri(2018年)
「響きの今」(ジョン・ラッセル、ストーレ・リアヴィーク・ソルベルグ、ピーター・エヴァンス、秋山徹次)@両国門天ホール(2018年)
高島正志+古池寿浩+秋山徹次「Blues Frozen Xīng ブルース 凍てついた星」@Ftarri(2018年)
ファビオ・ペルレッタ+ロレンツォ・バローニ+秋山徹次+すずえり@Ftarri(2017年)
池田謙+秋山徹次@東北沢OTOOTO(2017年)
『OTOOTO』(2015、17年)


audace@渋谷Bar Subterraneans

2019-06-19 00:03:57 | アヴァンギャルド・ジャズ

渋谷のBar Subterraneans(2019/6/16)。

Manabu Kitada 北田学 (cl, bcl)
Shikou Ito 伊藤志宏 (accordion)

音域の広いボタンアコーディオンを、伊藤さんは実に愉しそうに、また苦しそうに使う。楽器の音域以上に拡がりのあるサウンドが見事であり、ピアニスト伊藤志宏とも共通する華麗さと執拗さがある。一方の北田さんはクラを短めのフレーズで刺すように吹き、一方のバスクラではうねうねと長く繰り返す。楽器ならではでもあり北田学ならではでもあり、とても魅かれる。

Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8

●伊藤志宏
伊藤志宏+瀬尾高志@稲毛Candy
(2018年)

●北田学
宅Shoomy朱美+北田学+鈴木ちほ@阿佐ヶ谷Yellow Vision(JazzTokyo)(2019年)
ヨアヒム・バーデンホルスト+シセル・ヴェラ・ペテルセン+北田学@渋谷Bar subterraneans(2019年)
晩夏のマタンゴクインテット@渋谷公園通りクラシックス(2017年)
北田学+鈴木ちほ@なってるハウス(2017年)