Sightsong

自縄自縛日記

姜泰煥+高田みどり『An Eternal Moment / 永遠の刹那』

2019-07-04 23:13:41 | アヴァンギャルド・ジャズ

姜泰煥+高田みどり『An Eternal Moment / 永遠の刹那』(NoBusiness Records、1995年)を聴く。

Kang Tae Hwan 姜泰煥 (as)
Midori Takada 高田みどり (perc)

1995年3月14日、山口県防府市のカフェアモレスでのライヴ。この約2か月後には、同じ防府のホールで、佐藤允彦を加えて、TON-KLAMI『Prophecy of Nue』が吹き込まれている。

ライナーにおいて、カフェアモレスでのライヴを主催していたちゃぷちゃぷレコードの末冨健夫さんが「トンクラミは、高田さんを軸にして成り立っている」と書き、また小森俊明さんが高田さんについて「役回りは巫女である」と評している。確かにここでも、方向性は高田さんの大きな力で決められているように思える。最初にドラムを神託のように叩き、デュオの長い旅がはじまっている。

ここからの姜さんのサックスは圧巻である。細切れの音を表も裏もすべてさらけ出した上で有機的につなぎあわせ、非常に大きな奔流を創出している。ときにその大河は暴れずに流れ、ときに泡立ち、音風景を次々に変化させている。そのように音の慣性がとても大きいはずなのに音色が急に不連続に変わったりもする。そして急に声を張り上げ、喉を鳴らし、音の流れを捩れさせ、何色にもわかれ、アジアの声があらわれる。

3曲目では高田さんはマリンバを叩く。このカラフルな音が、うねりながら飛行する龍のごときサックスと自身とを祝祭の中に放り込ませる結果となっている。それが途中で一転し、静かな部屋のなかでの対話のように変わる。そのまま収束する、この引き際がまた見事。

●姜泰煥
姜泰煥@下北沢Lady Jane(2019年)
TON KLAMI@東京都民教会(2016年)
映像『ユーラシアンエコーズII』(2013年)
ユーラシアンエコーズ第2章(2013年)
姜泰煥『素來花』(2011年)
姜泰煥・高橋悠治・田中泯(2008年)
姜泰煥・高橋悠治・田中泯(2)(2008年)
大倉正之助『破天の人 金大煥』(2005年)
姜泰煥+美妍+朴在千『Improvised Memories』(2002年)
TON-KLAMI『Prophecy of Nue』(JazzTokyo)(1995年)
『ASIAN SPIRITS』(1995年)
サインホ・ナムチラックとサックスとのデュオ(1992-96年)

●高田みどり
TON KLAMI@東京都民教会(2016年)
TON-KLAMI『Prophecy of Nue』(JazzTokyo)(1995年)


平田王子+渋谷毅『Luz Do Sol*やさしい雨』

2019-07-04 20:53:54 | アヴァンギャルド・ジャズ

平田王子+渋谷毅『Luz Do Sol*やさしい雨』(sorammame records、2018年)を聴く。

kimiko Hirata 平田王子 (vo, g)
Takeshi Shibuya 渋谷毅 (p)
Koichi Matsukaze 松風鉱一 (ts, fl)

ふだんあまりボサノヴァやヴォーカルものを聴かないこともあって、平田王子さんの存在は知っていたけれど、音楽に接するのは実ははじめてだ。ふと師匠の松風鉱一さんがゲストなら聴いてみようかなと思って入手した。いま、これまで聴かないでいたことを大後悔している。

もちろん渋谷毅さんのピアノはいつもの通り魔術的で、この世に楽理があってまるでそれを自然なことのように最高の芸術に仕立て上げている。松風さんのフルートもテナーも、やはり目立たず目立つといういつもの唯一無二の音。そして平田さんの声は含みがあるのに透き通っていて、広いところのどこか向こう側でゆっくり時間が流れているようだ。「Sem falar」なんて泣きそうになる。

いまからでも遅くない。近いうちに平田さんのライヴを観に行こう。できれば渋谷さんと松風さんと共演するときに。

(ブックレットに、わたしが撮った松風さんの写真が使われていた)

●渋谷毅
2018年ベスト(JazzTokyo)(2018年)
廣木光一+渋谷毅『Águas De Maio 五月の雨』(2018年)
今村祐司グループ@新宿ピットイン(2017年)
渋谷毅@裏窓(2017年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2017年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年その3)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年その2)
廣木光一+渋谷毅@本八幡Cooljojo(2016年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年その1)
渋谷毅@裏窓(2016年)
渋谷毅+市野元彦+外山明『Childhood』(2015年)
渋谷毅エッセンシャル・エリントン@新宿ピットイン(2015年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2014年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2011年)
渋谷毅+津上研太@ディスクユニオン(2011年)
渋谷毅のソロピアノ2枚(2007年)
原みどりとワンダー5『恋☆さざなみ慕情』(2006年)
『RAdIO』(1996, 99年) 
渋谷毅+川端民生『蝶々在中』(1998年)
『RAdIO』カセットテープ版(1994年)
『浅川マキを観る vol.3』@国分寺giee(1988年)
『山崎幹夫撮影による浅川マキ文芸座ル・ピリエ大晦日ライヴ映像セレクション』(1987-92年)
浅川マキ+渋谷毅『ちょっと長い関係のブルース』(1985年) 
カーラ・ブレイ+スティーヴ・スワロウ『DUETS』、渋谷毅オーケストラ
見上げてごらん夜の星を 

●松風鉱一
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2019年)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2018年その2)
松風鉱一カルテット@西荻窪Clop Clop(2018年)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2018年その1)
松風M.A.S.H. その3@なってるハウス(2018年)
今村祐司グループ@新宿ピットイン(2017年)
松風M.A.S.H. その2@なってるハウス(2017年)
松風M.A.S.H.@なってるハウス(2017年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2017年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年その3)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2016年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年その2)
松風鉱一@十条カフェスペース101(2016年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年その1)
渋谷毅エッセンシャル・エリントン@新宿ピットイン(2015年)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2015年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2014年)
5年ぶりの松風鉱一トリオ@Lindenbaum(2013年)
松風鉱一カルテット@新宿ピットイン(2012年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2011年)
松風鉱一トリオ@Lindenbaum(2008年)
松風鉱一カルテット、ズミクロン50mm/f2(2007年)
原みどりとワンダー5『恋☆さざなみ慕情』(2006年)
松風鉱一『Good Nature』(1981年)
松風鉱一トリオ+大徳俊幸『Earth Mother』(1978年)
『生活向上委員会ライブ・イン・益田』(1976年)
カーラ・ブレイ+スティーヴ・スワロウ『DUETS』、渋谷毅オーケストラ
森山威男『SMILE』、『Live at LOVELY』 
反対側の新宿ピットイン
くにおんジャズ、鳥飼否宇『密林』


Hubble Deep Fields@Ftarri

2019-07-04 08:12:26 | アヴァンギャルド・ジャズ

水道橋のFtarri(2019/7/3)。

Masashi Takashima 高島正志 (ds, G.I.T.M., composition)
Yuma Takeshita 竹下勇馬 (electro-b)
Masahide Tokunaga 徳永将豪 (as)
Yoko Ikeda 池田陽子 (viola)

高島正志さんの事前の書き込みによれば、曲を演奏するファーストセットの構成は以下の通り。

1.Beginning -起源-
2.HOW SLOWLY DARK -ゆったりとした暗さ-
3.FAR DOWN A BILLOWING PLAIN -渦巻く平原のはるか下で-
4.FAINT LIGHTS -ほのかな光-
5.The Blandishments Of Color -色彩の甘言-
6.The Shape Of Night -夜の形-
7.The Silence -沈黙- (5-7は組曲のような感じ)

これらの曲の演奏は緊張感を伴うものだった。というのも、各々の即興要素が分割され、そのフラグメンツを入念に配置しなおす作業がかなりのエネルギーを要するからであるようにみえた。

高島さんのドラムセットは極めてシンプルで、ときにそれを鳴らす音がエレクトロニクスで姿を変えて再生産された。またその音も、他の三者による音も、ドラムをびりびりと震わせてノイズを発生させた。手作業からエレクトロニクスを介してまたマテリアルに戻る奇妙なフィードバックがあった。

曲の中でフラグメンツと化したとはいえ、各人の音はそれぞれの楽器特有の時間の進み方を持って共存しており、それはとても面白いものに感じられた。曲のつくりによって、フラグメンツの配置の結果が、弧の交錯であったり、突起の衝突であったり、ハーモニーの形成であったりした。互いの凝視や意図的な看過が音楽的にあらわれていた。

セカンドセットは曲ではなく20分ほどの即興。ここでも高島さんは配置という作業方針を持ち込んでいたようにみえた。自律か意地悪かわからない竹下さんのノイズ、ゆったりと共振の弧を放つ池田さんのヴィオラ、サウンドに融合しながらも同時にその融合を強く拒むような徳永さんのアルトがそれぞれ別々に耳に入ってきて、やはり面白かった。だが、フラグメンツ化と再配置という作業がセカンドセットの形の即興を抑制するものと捉えたからか、終わった直後に徳永さんは不満を表明した。(では次は?)

Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●高島正志
アレクサンダー・ホルム、クリス・シールズ、クラウス・ハクスホルムとのセッション@Permian(2019年)
高島正志+竹下勇馬+河野円+徳永将豪「Hubble Deep Fields」@Ftarri(2018年)
高島正志+古池寿浩+秋山徹次「Blues Frozen Xīng ブルース 凍てついた星」@Ftarri(2018年)
高島正志+河野円+徳永将豪+竹下勇馬@Ftarri(2018年)

●池田陽子
謝明諺+秋山徹次+池田陽子+矢部優子@Ftarri(2019年)
アレクサンダー・ホルム、クリス・シールズ、クラウス・ハクスホルムとのセッション@Permian(2019年)
エレクトロニクスとヴィオラ、ピアノの夕べ@Ftarri(2019年)
鈴木ちほ+池田陽子(solo solo duo)@高円寺グッドマン(2019年)
池田陽子+山㟁直人+ダレン・ムーア、安藤暁彦@Ftarri(2018年)
森重靖宗+池田陽子+増渕顕史『shade』(2018年)
佐伯美波+池田若菜+池田陽子+杉本拓+ステファン・テュット+マンフレッド・ヴェルダー『Sextet』(2017年)
クリスチャン・コビ+池田若菜+杉本拓+池田陽子『ATTA!』(2017年)

●竹下勇馬
高島正志+竹下勇馬+河野円+徳永将豪「Hubble Deep Fields」@Ftarri(2018年)
Zhu Wenbo、Zhao Cong、浦裕幸、石原雄治、竹下勇馬、増渕顕史、徳永将豪@Ftarri(2018年)
高島正志+河野円+徳永将豪+竹下勇馬@Ftarri(2018年)
TUMO featuring 熊坂路得子@Bar Isshee(2017年)
竹下勇馬+中村としまる『Occurrence, Differentiation』(2017年)
二コラ・ハイン+ヨシュア・ヴァイツェル+アルフレート・23・ハルト+竹下勇馬@Bar Isshee(2017年)
『《《》》 / Relay』(2015年)
『《《》》』(metsu)(2014年)