埼玉県越生市の山猫軒(2019/7/20)。
Sabu Toyozumi 豊住芳三郎 (ds, 二胡)
Masaharu Showji 庄子勝治 (as, soprillo)
Hisaharu Teruuchi 照内央晴 (p)
午後2時前に越生駅に待ち合わせ、豊住さん、庄子さん、照内さん、それから映像の宮部さん、写真のTomさんと一緒に山猫軒にタクシーで向かう(運転者さんに山猫軒というだけで良いようだ)。森の中をうねうね走って着いた。小雨ではあるけれど、二度目の山猫軒はとても気持ちが良い。中も外も最高に良い。猫ちゃんずは人をまったく恐れずに膝に乗っかってきたりする。
早めに来たのは、豊住さんにインタビューを行うことが目的である。照内さんのはからいであり、確かに聴いておきたいこと満載(午前中にぎりぎりまで予習や準備をしていて遅れそうになった)。いや、ちょっと前に棚上げになった音源のライナーを書いていて、もともと知りたいことがたくさんあったのだ。ジャズの歴史を体現したような人ゆえ数時間で終わるわけもないのだが、それでもいろいろな興味深いお話を聴くことができた。近いうちにまとめるつもりである。
この日シンバルが無いということで、それでもいいかなという感じだったのだが(豊住さんならでは?)、結局、玉響海月さんが持ってきた。ノイズ方面であるから最初から割れている。特製のグラスシャンデリアの蝋燭に火が点けられ、18時すぎから演奏がはじまった。
ファーストセットはデュオを3組。
豊住+庄子。豊住さんはマレットで丸く音を創りはじめ、庄子さんもまた丸く攻める。力強く入り弱めて抜けるようなアルトであり、ふたりのシームレスな感覚にいきなり興奮させられる。
庄子+照内。幽玄に揺れ動くアルトに対しピアノはゆっくり一音ずつ選び、そして和音を重ねるようになるとアルトのヴィブラートが大きくなり音領域がマージナルなほうへと動いてゆく。ピアノが複合的に厚みを出すとアルトが速度を与え、そうするとピアノの速度が増す。静寂が訪れ、ピアノがふたたび音を選んで収束に向かった。
照内+豊住。最初から二胡を弾く豊住さんの音が京劇を思わせる。照内さんはその音を時間のなかに位置付けるように弾いてゆくのだが、やがて、豊住さんが二胡の弦でシンバルも叩き、それも含めた軋みと、ピアノの旋律とが対照的となってきた。金属を削ぎきるようなサウンドに移ったドラムス、さらに複層的になってきたピアノ。ふたりが収束に向かうと、外で虫が鳴いていることに気付かされた。
セカンドセットはトリオ。庄子さんはソプリロというソプラニーノよりも小さいサックスを吹き、その小ささゆえの尖りにより、サウンドに幹を刺し込んでいくような按配に聴こえる。照内さんは擾乱を創り、その中から鍵盤の結晶を見出している。豊住さんはバスドラも連打し、大きな波を絶えず創り出しては放ち続ける。これらによる三者の大きなうねり。
やがて豊住さんはシンバルでの音空間創りにシフトした。豊住さんは決して同じことを続けることはない(このことを抜きにして豊住さんの個性を評価できないだろうと思う)。そして今度はブラシで解体を説く。ピアノとアルトはフラグメンツを提供していたのだが、庄子さんは次第に音自体に力を込めてゆき、照内さんもまた拳や体全体を使っての激情へと移り変わってゆく。豊住さんがスティック2本で一気に叩く音は、フリーフォールのような迫力に満ちている(ふとMegさんを思い出した)。
終わりそうな即興を照内さんは静かに拒否し、抑制した音を連ねてゆく。庄子さんと豊住さんは擦れる音空間を創ってみせる(缶でアルトを擦っている!)。ここから各々の浮上劇。ピアノは響きの中から特定の音で浮かびあがり、ドラムスはシンバルの金属音やくしゃくしゃにした紙の音で浮かび上がり、またアルトは歪んだ音で浮かび上がる。そしてふたたび短いサウンドがあって、このセットが終わった。
10時前まで、南さんのうまいピザをいただきながらおしゃべり。山猫軒の愉しい8時間が終わったがまだ居座りたかった(帰りの電車でも照内さんやパフォーマンスアートの広瀬さんと話し続けた)。また行かなければならない。
Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4
●豊住芳三郎
豊住芳三郎+老丹+照内央晴@アケタの店(2019年)
豊住芳三郎+謝明諺@Candy(2019年)
ジョン・ラッセル+豊住芳三郎@稲毛Candy(2018年)
謝明諺『上善若水 As Good As Water』(JazzTokyo)(2017年)
ブロッツ&サブ@新宿ピットイン(2015年)
豊住芳三郎+ジョン・ラッセル『無為自然』(2013年)
豊住芳三郎『Sublimation』(2004年)
ポール・ラザフォード+豊住芳三郎『The Conscience』(1999年)
アーサー・ドイル+水谷孝+豊住芳三郎『Live in Japan 1997』(1997年)
加古隆+高木元輝+豊住芳三郎『滄海』(1976年)
加古隆+高木元輝+豊住芳三郎『新海』、高木元輝+加古隆『パリ日本館コンサート』(1976年、74年)
豊住芳三郎+高木元輝 『もし海が壊れたら』、『藻』(1971年、75年)
富樫雅彦『風の遺した物語』(1975年)
●照内央晴
豊住芳三郎+老丹+照内央晴@アケタの店(2019年)
豊住芳三郎+謝明諺@Candy(2019年)
沼田順+照内央晴+吉田隆一@なってるハウス(2019年)
吉久昌樹+照内央晴@阿佐ヶ谷ヴィオロン(2019年)
照内央晴、荻野やすよし、吉久昌樹、小沢あき@なってるハウス(2019年)
照内央晴+方波見智子@なってるハウス(2019年)
クレイグ・ペデルセン+エリザベス・ミラー+吉本裕美子+照内央晴@高円寺グッドマン(2018年)
照内央晴+川島誠@山猫軒(2018年)
沼田順+照内央晴+吉田隆一@なってるハウス(2018年)
『終わりなき歌 石内矢巳 花詩集III』@阿佐ヶ谷ヴィオロン(2018年)
Cool Meeting vol.1@cooljojo(2018年)
Wavebender、照内央晴+松本ちはや@なってるハウス(2018年)
フローリアン・ヴァルター+照内央晴+方波見智子+加藤綾子+田中奈美@なってるハウス(2017年)
ネッド・マックガウエン即興セッション@神保町試聴室(2017年)
照内央晴・松本ちはや《哀しみさえも星となりて》 CD発売記念コンサートツアー Final(JazzTokyo)(2017年)
照内央晴+松本ちはや、VOBトリオ@なってるハウス(2017年)
照内央晴・松本ちはや『哀しみさえも星となりて』@船橋きららホール(2017年)
照内央晴・松本ちはや『哀しみさえも星となりて』(JazzTokyo)(2016年)
照内央晴「九月に~即興演奏とダンスの夜 茶会記篇」@喫茶茶会記(JazzTokyo)(2016年)
田村夏樹+3人のピアニスト@なってるハウス(2016年)