Sightsong

自縄自縛日記

喜多直毅+元井美智子+フローリアン・ヴァルター@松本弦楽器

2019-07-20 08:19:25 | アヴァンギャルド・ジャズ

代々木の松本弦楽器(2019/7/19)。

Naoki Kita 喜多直毅 (vln)
Michiko Motoi 元井美智子 (箏)
Florian Walter (as)

あらためて、弦というものが持つ音色の幅広さに感じ入る。

元井さんの箏は静かにも囂々とも流れる。しかしそれは音楽を流れる媒体に見立てればの話であって、ときに弦を擦るさまによって、媒体の姿ではなく速度そのものが表現されるように聴こえる。反対側の弦には紙が挟んであって、そちら側の弦を弾くと、音は、その速度の失速そのものとなる。ゆったりと表現を変えてゆく元井さん。

一方、喜多さんは弦を擦る音の変貌に聴く者の耳を閉じ込める。蛇行し、加速する。指ではじくことで破裂もする。それらの複数の流れが複雑に絡まり合い、あらゆるものを見せられるような感覚を覚える。音が外に出されたあとにまかせるのではなく、第一義にはヴァイオリンという場で閉じている。しかしその音の群れがその都度感情に変貌するために、結果として、外に晒されている。

今回驚いたのはフローリアン・ヴァルターの表現力だ。箏のサウンドの世界とヴァイオリンのサウンドの世界とに挟まれて、明らかに、それらに化け、ダイナミックに次へ次へと進む。循環呼吸によるロングトーンは見事であり、静かに力が漲っている舞踏家のように感じられた。(そのとき、なんども右手で、ふさがった左手近くのキーを操作していたのだが、あれはどういうわけだろう?)

各々が何かに、あるいは隣の者に変化(へんげ)して応答する、相互作用の即興だった。

Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●喜多直毅
徹さんとすごす会 -齋藤徹のメメント・モリ-(2019年)
喜多直毅+翠川敬基+角正之@アトリエ第Q藝術(2019年)
熊谷博子『作兵衛さんと日本を掘る』(2018年)
喜多直毅クアルテット「文豪」@公園通りクラシックス(2018年)
ロジャー・ターナー+喜多直毅+齋藤徹@横濱エアジン(2018年)
ファドも計画@in F(2018年)
齋藤徹+喜多直毅@板橋大山教会(2018年)
齋藤徹+喜多直毅+外山明@cooljojo(2018年)
齋藤徹+喜多直毅+皆藤千香子@アトリエ第Q藝術(2018年)
ロジャー・ターナー+喜多直毅+齋藤徹@横濱エアジン(JazzTokyo)(2017年)
翠川敬基+齋藤徹+喜多直毅@in F(2017年)
喜多直毅+マクイーン時田深山@松本弦楽器(2017年)
黒田京子+喜多直毅@中野Sweet Rain(2017年)
齋藤徹+喜多直毅@巣鴨レソノサウンド(2017年)
喜多直毅クアルテット@求道会館(2017年)
ハインツ・ガイザー+ゲリーノ・マッツォーラ+喜多直毅@渋谷公園通りクラシックス(2017年)
喜多直毅クアルテット@幡ヶ谷アスピアホール(JazzTokyo)(2017年)
喜多直毅・西嶋徹デュオ@代々木・松本弦楽器(2017年)
喜多直毅+田中信正『Contigo en La Distancia』(2016年)
喜多直毅 Violin Monologue @代々木・松本弦楽器(2016年)
喜多直毅+黒田京子@雑司が谷エル・チョクロ(2016年)
齋藤徹+かみむら泰一、+喜多直毅、+矢萩竜太郎(JazzTokyo)(2015-16年)
うたをさがして@ギャラリー悠玄(2015年)http://www.jazztokyo.com/best_cd_2015a/best_live_2015_local_06.html(「JazzTokyo」での2015年ベスト)
齋藤徹+喜多直毅+黒田京子@横濱エアジン(2015年)
喜多直毅+黒田京子『愛の讃歌』(2014年)
映像『ユーラシアンエコーズII』(2013年)
ユーラシアンエコーズ第2章(2013年)
寺田町の映像『風が吹いてて光があって』(2011-12年)
『うたをさがして live at Pole Pole za』(2011年)

●フローリアン・ヴァルター
『ボンの劇場の夜―ダンスカンパニー・ボー・コンプレックスとゲスト』@ボンSchauspiel(フローリアン・ヴァルター)(2019年)
Ten meeting vol.2@阿佐ヶ谷天(フローリアン・ヴァルター)(2018年)
フローリアン・ヴァルター+直江実樹+橋本孝之+川島誠@東北沢OTOOTO(2018年)
フローリアン・ヴァルター+照内央晴+方波見智子+加藤綾子+田中奈美@なってるハウス(2017年)
フローリアン・ヴァルター『Bruit / Botanik』(2016年)
アキム・ツェペツァウアー+フローリアン・ヴァルター『Hell // Bruit』(2015年)