Sightsong

自縄自縛日記

田上碧+徳永将豪+松本一哉@Ftarri

2019-07-15 23:33:39 | アヴァンギャルド・ジャズ

水道橋のFtarri(2019/7/15)。

Aoi Tagami 田上碧 (voice)
Masahide Tokunaga 徳永将豪 (as)
Kazuya Matsumoto 松本一哉 (perc)

田上碧ソロ。はじめは丸い破裂音を繰り返し、次第に長く幅広い音域を含めてさまざまな音波を提示する。擦音が入っていたためか、思索しては音を放つ過程のためか、ずっと静寂がつきまとっていた。濃いパフォーマンスながら実際には10分強であり体感時間よりも短かった。

徳永将豪・松本一哉デュオ。これまでと違い、徳永さんは管が鳴る周波数のうち高音のマージナルな部分を増幅している。そのためかフィードバックのようにも聴こえる。一方の松本さんは金属のパーカッションや銅鑼を主に擦り、水平に波紋が拡がるような響きを創出した。

トリオ。途中まで音を出すか出さないかの領域にいた松本さんだが、偶然のように音を鳴らし始め、それを自律的な音の連なりへと成長させていった。徳永さんはマージナル増幅、しかし、管の共鳴が音の中心に侵入もし、そのせめぎ合いのサウンドを創出した。田上さんは間に立ち、管にもパーカッションにも憑依する往還を繰り返しているようにみえた。

演奏が収束しつつあって、なお松本さんは明らかに次の音を模索している。だが急に照明が点けられ、終了が告げられた。驚いた。

Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●田上碧
山田光+坂本光太@Ftarri
(2019年)

●徳永将豪
Hubble Deep Fields@Ftarri(2019年)
高島正志+竹下勇馬+河野円+徳永将豪「Hubble Deep Fields」@Ftarri(2018年)
森重靖宗+徳永将豪@Ftarri(2018年)
Zhu Wenbo、Zhao Cong、浦裕幸、石原雄治、竹下勇馬、増渕顕史、徳永将豪@Ftarri(2018年)
高島正志+河野円+徳永将豪+竹下勇馬@Ftarri(2018年)
クレイグ・ペデルセン+エリザベス・ミラー+徳永将豪+増渕顕史+中村ゆい@Ftarri(2017年)
Shield Reflection@Ftarri(2017年)
窓 vol.2@祖師ヶ谷大蔵カフェムリウイ(2017年)
徳永将豪『Bwoouunn: Fleeting Excitement』(2016、17年)
徳永将豪+中村ゆい+浦裕幸@Ftarri
(2017年) 

●松本一哉
松本一哉+加藤裕士「消尽」@銀座奥野ビル306号室(2019年)


ポール・ブレイ+ゲイリー・ピーコック+ポール・モチアン『When Will The Blues Leave』

2019-07-15 09:28:57 | アヴァンギャルド・ジャズ

ポール・ブレイ+ゲイリー・ピーコック+ポール・モチアン『When Will The Blues Leave』(ECM、1999年)を聴く。

Paul Bley (p)
Gary Peacock (b)
Paul Bley (ds)

なんだか3人とも気力が漲り、愉しそうにプレイしているように聴こえる。前年の1998年に同メンバーで『Not Two, Not One』を録音していて、それは緊張感をはらんで互いに尖っている。それとは対照的なわけだが、馴れ合いではなく、良い形での熟成だったに違いない。

6曲目の「Dialogue Amor」においてブレイはチャーリー・パーカーの「Ornithology」を引用する。本盤が吹き込まれたのが1999年3月、その数か月後の6月にわたしは新宿ピットインでブレイのソロを観た。その際に、やはりバードの「Billy's Bounce」を短く弾いたように記憶している。尖ったオリジナルであっても、本盤でも演奏されているオーネット・コールマンの曲であっても、あるいは本盤には収録されていないが頻繁に演奏していた前妻カーラ・ブレイの曲であっても、そしてバードのバップ曲であっても、もはやブレイにとってひとしく愉悦の題材であった。

熟して愉しむほかはないという境地ということで言えば、ゲイリー・ピーコックとポール・モチアンについても同様。90年代後半に、キース・ジャレットのスタンダーズ・トリオや菊地雅章とのテザード・ムーンでのかれをそれぞれ2回ずつ観た。すべて中音域から低音域までをバランスよく使い、香り立つように歌うコントラバスであり、どう観ても愉しんでいた。モチアンだって、南青山のBody & Soulで叩きまくり、にやにやしたピーコックが指でバツ印を作ったという悪ノリがあったのだ(怖くて声をかけられなかったのだけれど)。

こんな音楽ならいくらでも聴きたい。

●ポール・ブレイ
フランソワ・キャリア+ミシェル・ランベール+ポール・ブレイ+ゲイリー・ピーコック『Travelling Lights』(2004年)
ポール・ブレイ『Solo in Mondsee』(2001年)
ポール・ブレイ『Synth Thesis』(1993年)
ポール・ブレイ『Homage to Carla』(1992年)
ポール・ブレイ『Plays Carla Bley』(1991年)
ポール・ブレイ+ゲイリー・ピーコック『Partners』(1991年)
ポール・ブレイ+チャーリー・ヘイデン+ポール・モチアン『Memoirs』(1990年)
ポール・ブレイ+ポール・モチアン『Notes』(1987年)
チェット・ベイカー+ポール・ブレイ『Diane』(1985年)
イマジン・ザ・サウンド(1981年)
アネット・ピーコック+ポール・ブレイ『Dual Unity』(1970年)
ポール・ブレイ『Festival International De Jazz Lugano 31 August 1966』(1966年)
ポール・ブレイ『Bremen '66』(1966年)
ポール・ブレイ『Barrage』(1964年)
ポール・ブレイ『Complete Savoy Sessions 1962-63』(1962-63年)

●ゲイリー・ピーコック
プール+クリスペル+ピーコック『In Motion』(2014年)
ゲイリー・ピーコック+マリリン・クリスペル『Azure』(2011年)
フランソワ・キャリア+ミシェル・ランベール+ポール・ブレイ+ゲイリー・ピーコック『Travelling Lights』(2004年)
テザード・ムーン『Triangle』(1991年)
ポール・ブレイ+ゲイリー・ピーコック『Partners』(1991年)
ミシェル・ペトルチアーニ『One Night in Karlsruhe』(1988年)
キース・ジャレット『North Sea Standards』(1985年)
キース・ジャレット『Standards Live』(1985年)
キース・ジャレット『Festival de jazz d'Antibes 1985』、『Canada '84 Japan '86』、『Live in Sendai 1986』(1984-86年)
マル・ウォルドロン+ゲイリー・ピーコック『First Encounter』(1971年)
ローウェル・デヴィッドソン(1965年) 
ミシャ・メンゲルベルク『Driekusman Total Loss』(1964、66年)

●ポール・モチアン
ベン・モンダー『Amorphae』(2010、2013年)
トニー・マラビー『Adobe』、『Somos Agua』(2003、2013年)
ポール・モチアン『The Windmills of Your Mind』(2010年)
ポール・モチアンのトリオ(1979、2009年)
ビル・マッケンリー『Ghosts of the Sun』(2006年)
マリリン・クリスペル『Storyteller』(2003年)
ポール・モチアン『Flight of the Blue Jay』(1996年)
P.M.P.『Miles Mode』(1993年)
テザード・ムーン『Triangle』(1991年)
ポール・ブレイ+チャーリー・ヘイデン+ポール・モチアン『Memoirs』(1990年)
ゴンサロ・ルバルカバ+チャーリー・ヘイデン+ポール・モチアン(1990年)
ジェリ・アレン+チャーリー・ヘイデン+ポール・モチアン『Segments』(1989年)
ポール・ブレイ+ポール・モチアン『Notes』(1987年)
キース・ジャレット『Eyes of the Heart』(1976年)
キース・ジャレットのインパルス盤(1975、1976年)
キース・ジャレット『Treasure Island』(1974年)
70年代のキース・ジャレットの映像(1972、1976年)
1972年6月のキース・ジャレット・トリオ(1972年)
キース・ジャレット+チャーリー・ヘイデン+ポール・モチアン『Hamburg '72』(1972年)
スティーヴ・レイシー『free for a minute (1965-1972)』(1965-72年)
ビル・エヴァンス『The Complete Village Vanguard Recordings, 1961』(1961年)


秘密基地@東北沢OTOOTO

2019-07-15 00:57:11 | アヴァンギャルド・ジャズ

東北沢のOTOOTO(2019/7/14)。

Yusei Takahashi 高橋佑成 (syn)
Tokutaro Hosoi 細井徳太郎 (g, effect)
Ryotaro Miyasaka 宮坂遼太郎 (perc)
ゲスト:Manami Kakudo 角銅真実 (voice, perc)

秘密基地とは始めて聴くグループ名だけれど、この日は3回目のライヴだったらしい。名が体をあらわしており、それぞれが好きなものを穴ぐらに持ち込んで自分たちの愉しみのためにセッションを行っているような感じ。この好奇心感覚がとても愉快である。

高橋さん、細井さんのふたりの電子音やノイズが重なりどっちがどっちか判らなくなるのも面白い。とは言えライヴゆえ、指先を凝視していると、それぞれの手仕事が一音一音に直結していることが感じられる。一方の宮坂さんもまた愉しさを前面に出している。秘密基地であるから、敢えてスタイルを職人ふうに定めることはしない。完成を目指して研ぎ澄ましてゆくサウンドではなく、とっ散らかった中での何かを発見しようとするサウンドであるようにみえる。

ゲストは角銅真実さん。向こうを向いて、切り絵を回転させながらスマホの光で壁に投射したり、ときおりヴォイスでとっ散らかりの中に別の温度のさざ波をもたらしたりして、やはり手仕事のプロセスがライヴとして昇華されている。後半、光で楽譜を照らしながらの歌は、驚くほど素敵なものだった。

Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●高橋佑成
謝明諺+高橋佑成+細井徳太郎+瀬尾高志@下北沢Apollo(2019年)
森順治+高橋佑成+瀬尾高志+林ライガ@下北沢APOLLO
(2016年)

●細井徳太郎
謝明諺+高橋佑成+細井徳太郎+瀬尾高志@下北沢Apollo(2019年)
WaoiL@下北沢Apollo(2019年)
ヨアヒム・バーデンホルスト+シセル・ヴェラ・ペテルセン+細井徳太郎@下北沢Apollo、+外山明+大上流一@不動前Permian(2019年)
合わせ鏡一枚 with 直江実樹@阿佐ヶ谷Yellow Vision(2019年)
SMTK@下北沢Apollo(2019年)
伊藤匠+細井徳太郎+栗田妙子@吉祥寺Lilt
(2018年)

●角銅真実
The Music of Anthony Braxton ~ アンソニー・ブラクストン勉強会&ライヴ@KAKULULU、公園通りクラシックス(JazzTokyo)(2019年)
角銅真実+横手ありさ、田中悠美子+清田裕美子、すずえり+大城真@Ftarri(2018年)
網守将平+岡田拓郎、角銅真実+滝沢朋恵、大城真+川口貴大@Ftarri(2017年)