北京で買ってきたDVD、何平『双旗鎮刀客』(1990年)を観る。13元(170円位)だった。
中国マカロニ・ウェスタンという雰囲気の作品で、新疆ウイグル自治区あたりのロケだろうか。荒野の中の悪辣な男たちに支配された街も、命惜しさに身を潜める住人たちも、調子の良い愉快な男も、お約束である。勿論お約束だから愉しいのだ。
主役の少年は、亡くなった父親が友人と約束したのだという、結婚相手を探している。その友人は片足が不自由で、娘の尻にはほくろがある。少年は気弱だが、カンフーと剣術を習得しており、両足には常に剣を差している。その少年が凄みを見せるのはわずか3回。斧でもさばくのに苦労する枝肉を剣で真っ二つにするシーン、結婚相手の娘が襲われそうになったときに悪人を倒すシーン、そして復讐に現れた悪人との対決シーン。
しかし、チャンバラはない。二番目のシーンは一瞬であるし、三番目の決闘シーンなどは砂嵐で見えない。それを補って余りある緊張感が、演出から生まれている。何と決闘を前にして、少年は手を震わせ、身体を動かすことができない。酔っ払いに頭から酒をかけられる有様なのだ。もっとも、これもお約束であって、何かが起きて少年が勝つことはわかっている。
いまどきのワイヤーアクションも好きだが、このように抑えた緊張感がある演出も捨てがたい。