島洋子さん(琉球新報)と宮城栄作さん(沖縄タイムス)によるアジア記者クラブ主催の講演「沖縄県紙への権力の圧力と本土メディア」を聴いた(2014/5/24、明治大学)。
普段の講義室ではなく会議室での開催。なぜか、学生とおぼしき若い人たちが目立っていた。
尖閣問題に象徴される日中間の緊張が、意図的にクローズアップされ、政治問題化されている。それに伴い、政府のみならず、大手新聞の記者や、一般市民の間に、偏狭なナショナリズムが明らかに高まっているという。沖縄において独自の報道姿勢を貫いている「琉球新報」と「沖縄タイムス」に対しても、風当たりが強くなっているようだ。
実際に、石垣市長選の前に、陸上自衛隊の石垣配備計画について報じた「琉球新報」および新聞協会に対し、防衛省が直接のクレームをつけている。個別の記事レベルで、協会にこのような手段がとられたことは極めて異例だという。
それを含め、島・宮城両氏によるお話には重要な示唆があった。
○沖縄の保守・経済界は、反基地にシフトしている。すなわち、基地があることによる経済成長の阻害が明らかになってきている。この地殻変動は、既に4年前の名護市長選(反基地を掲げた現職の稲嶺市長が当選)において始まっており、今年の再選でさらにその傾向が出てきた。
○「本土」と沖縄との沖縄報道のギャップ。「本土」においては、「また怒っている」という食傷感。沖縄においては、「怒り続けざるを得ない」状況。
○沖縄における反基地は、「運動」ではなく、一般市民のものである。
○尖閣問題や石垣自衛隊問題については、「受苦」と「受益」とのずれがある。「受益」は中央の政治、さらに記事にできる大手メディア。「受苦」は、現場の人、漁業者。
○中国脅威論などによりナショナリズムを煽る言説には、決定的にリアリズムが欠けている。
詳しくはここには書けないので、『アジア記者クラブ通信』に掲載される予定の講演録を一読されたい。(>> リンク)
●参照
琉球新報『ひずみの構造―基地と沖縄経済』(島氏も執筆)
沖縄タイムス中部支社編集部『基地で働く』
前泊博盛『沖縄と米軍基地』
屋良朝博『砂上の同盟 米軍再編が明かすウソ』
押しつけられた常識を覆す
渡辺豪『国策のまちおこし 嘉手納からの報告』
渡辺豪『「アメとムチ」の構図』
学生さんたちは早稲田、慶応、明治学院などの大学院生で、大学を越えて社会思想史を研究しているそうです。
それにしても、タイムスの宮城さんは琉新の島さんに完全に圧倒されていましたね。
学生の中に面白いやつがいたので、機会があればいっしょに飲みましょう。
そうそう、U教授に「クロスロード・オキナワ」という本を紹介されました。まだ買っていませんが。
宮城さんのお話にも聴きごたえがありました。『ひずみの構造』にも携わった島さんのお話も聴けてよかった。さすがの企画でした。
『クロスロード・オキナワ』は、NHKの番組を本にしたものですね。気になってはいますが、まだです。