熊本博之『辺野古入門』(ちくま新書、2022年)。
環境アセスメントのプロセスにどれだけ問題があったかについてもっと触れてほしかったけれど、さすがの良書。選挙運動においてスピーカーにおカネをかけられるのが保守陣営の強さだとする指摘なんて、フィールドワークを行ってきた人ならではである。
本書で実感できることは、基地建設に対する政府の補助金が歪んだ「報奨金」であり続けてきたこと。
それから、基地経済について語るべきは数字だけではないこと。経済的な基地依存度は50年代の3割近くから5%程度にまで下がっているとはよく言われてきたことだ。一方本書で指摘されるのは、住民が寂れた「辺野古社交街」に過去の繁栄を幻視していること。つまり実現しないことがわかっている生活者の夢を利用する政治。
●参照
辺野古