『芸術新潮』の特集号を見つけたことで火が点いて、『ベルサイユのばら』アニメ版全40話を一気に観てしまった。
宮廷内のじつにくだらない嫉妬の嵐や虚栄心の張り合いがいちいち笑える。ショックを受けるとドジャーンと鏡が割れるし、眼からはビームが出るし、貴族なのに何かあると走って逃げるし、巨大な眼球の下からはポンプがあるように涙が流れ出るし、陰謀を企てる者はいかにも悪そうにニヤニヤするし、何かあると劇画調の絵になるし、もはや様式美。これが後半になるとフランス革命へとなだれ込み、前半のしょうもなさはどこへやら。いや大傑作だ。
ところでヴェルナー・ゾンバルトが20世紀初頭に書いた『恋愛と贅沢と資本主義』という本はおもしろくて、貴族のすさまじい贅沢があったからこそ産業もサービスも貿易も発達し、美的感覚も繊細かつ多様なものとなったことが示されている。つまりここに資本主義という奇妙なシステムのはじまりがあった。
それはそれとしてアンドレやオスカルのつらさのことを思えば何でも耐えられるな。