スリランカの巨匠映画作家レスター・ジェームス・ピーリスが99歳で亡くなった(2018/4/29)。
かれの作品はなかなか観る機会がなく、また日本では限られた特集上映(福岡アジア美術館など)でいくつかの作品が上映されたのみである。わたしも2本しか観ていないのだが、あらためて探すと英語字幕版の『Madol Duwa』(1976年)を見つけることができた。
スリランカ南部の村。少年が小さいころに母親が亡くなってしまい、それを機にすっかり悪ガキ仲間とつるむようになる。俺たちはヴェッダー(スリランカの少数民族)だと名乗って、父親の再婚相手を茶化していた女の人に矢を射ったり。ナッツの農場に侵入して盗みを働いたり。両親が手を焼いて別の人に預けるのだが、そこからも逃げ戻る始末。ついにはどうしようもなくなり、「Madol Duwa」(映画字幕ではDoovaとなっているがWikipediaの表記に従う)という島に渡る。そこは未開拓の島で、かれは生き返ったように開墾に力を貸す。そして父の命が短いことを新聞で知り、故郷に戻る。
やはり巨匠ならではの、ジャン・ルノワールにも共通するようなのほほんとした余裕のある演出。故郷に逃げ帰るときに乗せてもらう小舟の周りを魚が飛び跳ねる場面など、見惚れる。また少年のどうしようもなく身動きの取れない心にも、つい感情移入してしまう。
原作はスリランカの作家マーティン・ウィクラマシンハの同名小説(1947年)である。この作家の作品は、『蓮の道』の邦訳を読んだのみだが、ストイックな主人公のよくわからなさが印象的だった。ティッサ・アベーセーカラという人により映画化されており観たいのだが、まだ機会がない(いちどネットで見つけたのだが観る前に消去されていた)。
ピーリスの映画を、追悼上映などで観ることができるだろうか。
>> Madol Duwa
●レスター・ジェームス・ピーリス
スリランカの映像(11) レスター・ジェームス・ピーリス『湖畔の邸宅』(2002年)
スリランカの映像(8) レスター・ジェームス・ピーリス『ジャングルの村』(1980年)