Sightsong

自縄自縛日記

エルメート・パスコアール@ビルボード東京

2019-05-14 07:58:16 | 中南米

ミッドタウンのビルボード東京(2019/5/13)。

Hermeto Pascoal (key, b-fl, vo, perc, misc.)
Itiberê Zwarg (b, tuba)
André Marques (p, fl, perc)
Fábio Pascoal (perc)
Jota P. (sax, fl)
Ajurinã Zwarg (ds, perc, ss)

2年ぶりのエルメート・パスコアールとかれのグループである。メンバーも前回と同じで、アンドレ・マルケス、ジョタペ、イチベレ・ズヴァルギと豪華だ。1日だけの東京公演、セカンドセット。

御大エルメート以外はみんな楽器を演奏しながらステージに入ってくる。イチベレはチューバを、アンドレはフルートを吹く。ここから21時半から23時まで濃密極まりない1時間半だった。

ジョタペは超複雑そうなエルメートの曲を難なく吹き続けているし、アンドレはそれどころか不協和音も厭わず自分の世界を精力的に展開している。イチベレのぐいぐい引っ張るグルーヴも良い。文字通り目くるめく展開、「ピタゴラスイッチ」の装置がひとつでなくいくつも並んでいるようなものだ。

そしてエルメートはキーボードを思いのままに弾いて叫び歌い、その天然音楽ぶりにやはり驚き笑いそうになる。客席とのコール・アンド・レスポンスも良かったし、終盤のピアノ演奏もまたエルメートらしく美味しいミネラル水のようなもので素晴らしかった。妙な瓶も吹いたし、ドラムも叩いたし、左右のぬいぐるみに叫ばせたりもした。

楽器をいくつもこなすのはエルメートだけではない。アンドレやイチベレだって、またドラムスのアユリナ・ズヴァルギはいきなり飛び出てきてジョタペが吹いていたばかりのソプラノサックスを奪い取っている。全員でよってたかって賑々しくエルメートの音楽を成立させた。

大満足。

●参照
エルメート・パスコアール@渋谷WWW X(2017年)
エルメート・パスコアールの映像『Hermeto Brincando de Corpo e Alma』(最近)
ジョヴィーノ・サントス・ネト+アンドレ・メマーリ『GURIS - Celebration of Brazilian master Hermeto Pascoal』(2016年)
板橋文夫@東京琉球館(2016年)
トリオ・クルピラ『Vinte』(2016年)
アンドレ・マルケス『Viva Hermeto』(2014年)
アンドレ・マルケス/ヴィンテナ・ブラジレイラ『Bituca』(2013年)
アンドレ・マルケス『Solo』(2005年)
2004年、エルメート・パスコアール(2004年)
エルメート・パスコアールのピアノ・ソロ(1988年) 


吉田隆一ソロ@なってるハウス

2019-05-13 07:43:57 | アヴァンギャルド・ジャズ

入谷のなってるハウス(2019/5/12)。ここでのバリトンサックスソロは年に1回、これで5回目だそうである。

Ryuichi Yoshida 吉田隆一 (bs, b-fl, glsp, 笛)

ライヴ直前に氏のバリトンサックスが壊れて、代替楽器を持って登場するという事故があった。しかしその代替のバリサクは良いものだったようで、鳴りにうっとりさせられるときがあった(もちろん、もとの楽器でどうだったのかはわからない)。

昨年の9月のソロ(吉田隆一ソロ@T-BONE、2018/9/23)はとても面白いものだった。その後、録音した大阪のSさんからは録音場所を変えた3パターンを頂戴して、聴き比べると管楽器が点ではないことが実感できてさらに面白かった。今回はその延長になるのかと思っていたら、氏の方針はさらに先にあって驚いた。

ファーストセットは、仏具(どこかの屋台で購入したらしい)の鐘が最初と最後の合図となった。はじめは低音を含めてなめらかなフレーズで鳴らしていった。やがてさまざまな展開があった。バリサクのフレーズとハモらせて小さいグロッケンシュピールを鳴らし、それによりバリサクの膨らみが強調された。重音、和音はスピードやなめらかさを変え、フラジオの高音を中心にして低音や声が重なり、また低音を中心にして高音が重なったりもした。息が多めになり、そのシャーという音とともに高音や低音が幅広く変化し、ときにヨーデルのように聴こえた。なにも高音か低音を中心に据えるだけではなく、中音域からその両側やノイズが聴こえてゆく時間もあった。

セカンドセットは、バスフルートのソロのあと、口笛、グロッケン、小さな笛とさまざまに持ち替え、そのことがバリサクの音の特異性を際立たせることになった。最初はバリサクが実にバランスよく鳴り気持ちが良い(楽器が変わったことによる「耽溺」もあったのだろうか)。立って低音を過剰にびりびりと震わせると、他の箇所も共振した。

ここからはバランスのよい鳴りから逸脱する展開となった。もとより長い管ゆえさまざまなノイズや音が参入してくる。これに、息による撥音やキーを叩く音により機関車のごとき音となる(ウラジーミル・タラソフのサウンドを思い出したりして)。管全体の響かせ方を変えて、息量が多いことによりトンネルの中のように響く。息、共鳴、個々の音成分が重なって聴こえる。このような変化のあとに朗々となるバリサクは、それがバリサクであることの存在証明であるようだ。

そして鳴り自体が柔軟に変えられてきた。撥音的なノイズは、唇、舌によるリードのタッチ、喉の鳴らしなど。大きめのヴィブラートだと物語性が増す不思議があるが、これにベンドにより周波数が連続的に変えられるとさらに物語を諄々と話すような按配となってくる。周波数の変化はベンドだけでなく、口の中の形やマウスピースの位置によっても起こされる(あとで吉田さんに訊くと、息の量やキーの押さえ方などさまざまな組み合わせがあるのだとのこと)。さらにまた、グロッケンという外部成分によるバリサクの音喚起。

すなわち、音響的なファーストセット、音そのものの多様性が提示されたセカンドセットということになった。

ところが、吉田さんは今後のソロ演奏の方針を次のように話した。ジャズのアドリブのようにフレーズ的なものでも、インプロでの音響的なものでもなく、単音で成り立つようなアプローチを追求する、と。削ぐものを削いでいって、単音を吹いているだけなのにポリトーナルなサウンドとなるようなものを目指す、と(「ほら、ギターのアルペジオだってそうでしょう」)。イメージは「ひとりアート・アンサンブル・オブ・シカゴ」だということで、これは賑々しい祝祭的AEOCではなく、妙な単音をただ複数名で吹いていて妙に聴こえるAEOCのことを指しているのだろう(すなわちMoGoToYoYoとは関連づけられない)。あるいは作りこみ過ぎない即興的作曲。

たぶんこれもわたしはちゃんと理解していない。どうやら、実際にこれからの音を聴いてみないと腑に落ちないようである。要注目。

Fuji X-E2、XF35mmF1.4、XF60mmF2.4

●吉田隆一
吉田隆一ソロ@T-BONE(2018年)
沼田順+照内央晴+吉田隆一@なってるハウス(2018年)
藤井郷子オーケストラ東京@新宿ピットイン(2018年)
MoGoToYoYo@新宿ピットイン(2017年)
秘宝感とblacksheep@新宿ピットイン(2012年)
『blacksheep 2』(2011年)
吉田隆一+石田幹雄『霞』(2009年)


『けーし風』読者の集い(37) ハラスメントに社会はどう取り組むか

2019-05-12 00:10:19 | 沖縄

『けーし風』第102号(2019.4、新沖縄フォーラム刊行会議)の読者会に参加した(2019/5/11、高田馬場の貸部屋)。参加者は5人。

話題は以下のようなもの。

●奄美での土砂シンポジウム(辺野古土砂全協、2019/5/25、26)。もちろん辺野古埋立に使われる土砂の採石について。
新崎盛暉さんの業績を振り返り引き継ぐ会2019/3/16)。「本土」では新崎氏の思想が十分に引き継がれていないのではないか。会でも思い出話が多かった。それを中心にされては困る。
●辺野古の軟弱地盤の問題。北上田毅氏(土木技師)による検証がすばらしい。このような活動がなければもっと埋立が強行されていただろう。それにしても、仮に技術的問題がクリアできたとして、二兆円以上をかけて建設するのか。また、関空や羽田のように地盤沈下し続ける基地のメンテ費をどうするのか。
●ジュゴン。生育したあとはさほど広くは回遊しないだろう。一方、防衛省は、基地建設があっても別の場所に行けばいいのだろうと決めつけている。
●運動にハラスメントは付いてまわる。大きな運動においては小さな運動の細かなことをひとつひとつ取り上げてはいられない。一方、このような運動は小さな運動こそが重視されるものであり、上意下達の組織とは異なる。従って常にフリクションがある。
●基地からの解放と、人間性や身体性との関係。
●反戦・反基地という共通項で「本土」側が沖縄との連帯を求めることが多い。しかしこの際には、沖縄の歴史的・社会的な位置づけを十分に理解せず、ただ普遍的な問題としてとらえるのみでは、深い連帯など不可能。

参照
『けーし風』 


mn+小埜涼子@七針

2019-05-11 22:29:40 | アヴァンギャルド・ジャズ

新川の七針で、1週間前に続きmnゲストシリーズ(2019/5/11)。

mn:
T. Mikawa T. 美川 (electronics, noise)
Jun Numata 沼田順 (g, noise)
Ryoko Ono 小埜涼子 (as)

最初から最後までこのトリオによる演奏であり、シンプルなだけに面白さがみえてくる。

美川さんは相変わらずわけがわからない操作で、サウンドが入る領域をばんばん動かす。こちらに届く轟音とともに観察していると、その剛腕ぶりに笑いそうになる。そこまでせんでいいだろうという、エメリヤーエンコ・ヒョードルのパウンドのようなものだ。

その方舟の中で、沼田社長が怪鳥の叫びのようにノイズをばらまき、小埜さんが両脚を踏ん張ってアルトにひたすら息を吹き込みまくっている。アルトからの衝撃波がふたりのノイズとぶつかり、別の衝撃波を生み出している。

Fuji X-E2、XF60mmF2.4、7Artisans 12mmF2.8

●沼田順
mn+武田理沙@七針(2019年)
沼田順+照内央晴+吉田隆一@なってるハウス(2018年)
中村としまる+沼田順『The First Album』(2017年)
RUINS、MELT-BANANA、MN @小岩bushbash(2017年)
内田静男+橋本孝之、中村としまる+沼田順@神保町試聴室(2017年) 

●T. 美川
mn+武田理沙@七針(2019年)
#167 【日米先鋭音楽家対談】クリス・ピッツィオコス×美川俊治×橋本孝之×川島誠(2017年)
RUINS、MELT-BANANA、MN @小岩bushbash(2017年)
T. 美川&.es『September 2012』(2012年)

●小埜涼子
林栄一+小埜涼子『Beyond the Dual 2』(2014-15年)


ラーゲ・ルンド『Terrible Animals』

2019-05-11 11:04:25 | アヴァンギャルド・ジャズ

ラーゲ・ルンド『Terrible Animals』(Criss Cross Jazz、2018年)を聴く。

Lage Lund (g, effects)
Sullivan Fortner (p)
Larry Grenadier (b)
Tyshawn Sorey (ds)

この人をオーソドックスなコンテンポラリージャズのギタリストだと思うと損をする。いちどNYの55 barで気が向いて観たのだが、執拗にインプロを追い詰める姿には狂気すら感じられた。

ここでもオリジナルばかりでひたすらギターの何かを追求している(もっとウケ狙いだったらいいのに)。とりあえずわけがわからないのでじっと耳を傾けるだけである。そしてタイショーン・ソーリーのドラムスは大きくて、あれとこれとがあちこちから聴こえてくる。

●ラーゲ・ルンド
ラーゲ・ルンド@55 Bar(2017年)


シンディ・ブラックマン・サンタナ@ブルーノート東京

2019-05-10 22:54:16 | アヴァンギャルド・ジャズ

ブルーノート東京(2019/5/9)。

Cindy Blackman Santana (ds)
Zaccai Curtis (key)
Aurélien Budynek (g)
Felix Pastorius (b)

前にこのドラマーを観たのは2008年のメルボルンだった。その後にステージ上でサンタナに求婚され、いまでは彼女の名前にもサンタナが付けられている。20年以上が経ってどうなったかなと思ったら、スタイルも強さもまったく変わっていない。すべての叩きとキックがダイレクトに身体につながっており、手数の多さと速さとパワーとによってまるで凡庸とは正反対である。叩いたあとに腕や躯体が弾性運動の一部として跳ね返されている。この時代でもスタイルを貫いているからか、潔いほどシンプルで痛快だ。

今回同行したザッカイ・カーティスは、テナー奏者レイモンド・マクモーリンが好きなピアニストだと前から話していて(もうひとりはデイヴィッド・ブライアント)、ぜひナマで観たかった。CDでは理知的な良さを感じていて、実際に、透き通った樹脂の中で青く光るかのように、熱いサウンドの中でかなり目立っていた。

気が付くと、トニー・ウィリアムス・ライフタイムの「Emergency」らしき曲になっており、また、ギターをフィーチャーした「Blue in Green」も演った。アンコールはやはりライフタイムのファースト・アルバムでも演奏している「Vashkar」(カーラ・ブレイの曲)。

ベース(ジャコの息子)とギターのふたりがいまひとつ傑出していなかったこともあって退屈な時間もあったが、かなり長く演奏してくれて、シンディ色的にもザッカイ色的にも満足度の高いセットだった。

●シンディ・ブラックマン・サンタナ
メルボルンでシンディ・ブラックマンを聴いた(2008年)
シンディ・ブラックマン『A Lil' Somethin', Somethin'』(1980年代後半~90年代前半)

●ザッカイ・カーティス
ラルフ・ピーターソン『Triangular III』
(2015年)


ストラーダ@吉祥寺MANDA-LA2

2019-05-10 07:53:51 | アヴァンギャルド・ジャズ

吉祥寺のMANDA-LA2(2019/5/8)。

Yoshiki Sakurai 桜井芳樹 (g)
Kanji Nakao 中尾勘二 (sax)
Takero Sekijima 関島岳郎 (tuba)
Yoshio Kuge 久下恵生 (ds)

ストラーダは『山道』(1995年)、『Texas Underground』(1998年)の2枚のアルバムを当時から愛聴しているが、ライヴを観るのははじめてだ。なかなか機会がなかった。(いやよく考えてみると、1998年12月、同じMANDA-LA2での篠田昌巳7回忌コンサートで観ていた。もりばやしみほ、林栄一・中尾勘二・関島岳郎プレイズコンポステラ、つれれこ社中が出ていた。それ以来だ)

いきなりエリントンの「Blue Pepper」、エリントンながらどしゃどしゃという音とともにストラーダ色。久下さんの音は驚くほどシンプルで強い。中尾さんはアルトで笛のようによれる音を出し、右手の拳でキーを叩く。「Sisters」でもアルトが入ってくるときの逸脱加減がとても良い。桜井さんが自分の曲らしく勝手知った自由なソロを弾いた。「幼年期の始まり」の面白い曲想、中尾さんはソプラノを吹く。この楽器によってさらに氏の高い技術があきらかになる。また、チューバによって独特の世界に連れていかれる。「Lagu Daerah Tapanuli」はインドネシア民謡だというがチンドン風でもあり、気持ちに馴染む。「幻の港」では四者が別々の時間を展開しているような感覚で、あらためてこのバンドの不思議さを思う。「Primo」、桜井さんはアコギ、中尾さんはクラ。「二十世紀旗手」では音域の広い中尾さんのアルトが良い。

セカンドセット。変な「Sexy Twist」のあとに1曲続いて、「身それた花」がまた印象的だった。久下さんは割れたシンバルをドラムに置いて叩き、やがて放り投げる。関島さんのチューバが中心に入ってくると、ああこれがバンドを支えていたのだとわかる。ドラムスは急にギアチェンジしたり。1曲置いて「伝説列車」では、中尾さんは循環呼吸でのアルト。「山道」では、桜井さんはアコギで力強いイントロを弾き、エレキに持ち替えた。ソプラノとアルトのよれ具合、チャルメラ風の感覚が良い。「つばめ」では懐かしい感じのギターから、朗々としたアルト、どうあろうと中尾勘二は素晴らしい。アンコールは「沼」。

合計15曲くらいの演奏、ストラーダの世界を堪能した。流浪、放浪、さびしさ、なつかしさ、人のにおい。

●中尾勘二
グンジョーガクレヨン、INCAPACITANTS、.es@スーパーデラックス(2016年)
中尾勘二@裏窓(2015年)
向島ゆり子+関島岳郎+中尾勘二『星空音楽會 Musica En Compostela』(2010年)
ふいご(2008年)
星の栖家『plays COMPOSTELA』(2005年)

川下直広『漂浪者の肖像』(2005年)
船戸博史『Low Fish』(2004年)
嘉手苅林次『My Sweet Home Koza』(1997年)
大島保克+オルケスタ・ボレ『今どぅ別り』 移民、棄民、基地(1997年)
渡辺勝『とどかずの町で』(1995、97年)

●久下恵生
向島ゆり子『Right Here!!』(1995-96年)
A-Musik『e ku iroju』(1983年)
パンゴ『Pungo Waltz』(1980-81年)

アドルファス・メカス『ハレルヤ・ザ・ヒルズ』

2019-05-07 01:32:36 | アート・映画

アドルファス・メカス『ハレルヤ・ザ・ヒルズ』(1963年)を観る。

言うまでもなくジョナス・メカスの弟であり、『リトアニアへの旅の追憶』にも、ジョナスの書いたものにもしばしば登場する。ただこの映画はなかなか観ることができなかった。いまではDVD(英語字幕付)が入手できる。

話に聞いた通り、作風はジョナスとはまったく異なる。一応は男女の色恋が出てくるものの、そのストーリーは敢えて支離滅裂になっている。雪のなかではしゃいだり、銃を撃ったり、ヘンな顔をしてみたり。D・W・グリフィス『東への道』へのオマージュだと言ってもいるが(しかも最後ではなく途中で突然告白する)、それもひとつの要素に過ぎない。したり顔でヌーヴェルヴァーグの影響が云々と言うのはやめておこう。とにかく自由なのだ。人間の精神は自由だ!

サウンドトラックのLP盤だけはずいぶん前に入手していた。映画を観たあとにあらためて聴いてみると、バスクラも効いていて、やはり解放されたような自由感があって、なんだかとても良い。

●参照
ジョナス・メカス(1) 『歩みつつ垣間見た美しい時の数々』
ジョナス・メカス(2) 『ウォールデン』と『サーカス・ノート』、書肆吉成の『アフンルパル通信』
ジョナス・メカス(3) 『I Had Nowhere to Go』その1
ジョナス・メカス(4) 『樹々の大砲』
ジョナス・メカス(5) 『営倉』
ジョナス・メカス(6) 『スリープレス・ナイツ・ストーリーズ 眠れぬ夜の物語』、写真展@ときの忘れもの
ジョナス・メカス(7) 『「いまだ失われざる楽園」、あるいは「ウーナ3歳の年」』
ジョナス・メカス(8) 『ファクトリーの時代』
ジョナス・メカス(9) 『富士山への道すがら、わたしが見たものは……』、小口詩子『メカス1991年夏』
ジョナス・メカス(10) 『ウォールデン』
アンディ・ウォーホルのファクトリー跡
チャールズ・ヘンリー・フォード『Johnny Minotaur』をアンソロジー・フィルム・アーカイヴズで観る
ジョルジュ・メリエスの短編集とアンソロジー・フィルム・アーカイヴズの知的スノッブ
鈴木志郎康『結局、極私的ラディカリズムなんだ』


スティーヴン・ガウチ+サンディ・イーウェン+アダム・レーン+ケヴィン・シェイ『Live at the Bushwick Series』

2019-05-06 11:02:57 | アヴァンギャルド・ジャズ

スティーヴン・ガウチ+サンディ・イーウェン+アダム・レーン+ケヴィン・シェイ『Live at the Bushwick Series』(gaucimusic、-2019年)を聴く。

Stephen Gauci (ts)
Sandy Ewen (g/electronics)
Adam Lane (b)
Kevin Shea (ds)

ブルックリンのブッシュウィックにある「Bushwick Public House」における、毎週月曜日夜の「Bushwick Improvised Music Series」。これを取り仕切っているのがテナーのスティーヴン・ガウチで、ここに登場するアダム・レーンも、ケヴィン・シェイも毎週のように演奏している。いちどだけ観に行ったが、その後も毎週の案内メールを読んでは再訪したいと思わされる。

本盤はその演奏を3曲集めたものである(長さから言っても複数回のギグだろう)。つまりこれがかれらの日常のインプロなのだと思えば納得できる。

ガウチは高音域を精力的に攻めまくり、ときにノイズを含めていてユニークだ(ガウチ自身は、高音が耳に入るとテンションが上がるだろう?と言っていた)。レーンは細かく強いピチカート音をカンフーのように繰り出し続ける。シェイは目の前にある存在を音に変え、なんであろうと公平に扱う。サンディ・イーウェンははじめて聴いたが、ギターを横置きにしてエレクトロニクスとともにさまざまな音を出すスタイルのようで、この人がいたからサウンドにグラデーションが付加されている。

なってるハウスの小林さんがNYに行くというのでこのシリーズをプッシュしたところ、一昨日、ガウチ会ったよガウチ、と話していた。どんなふうに聴いたのか興味津々。

●スティーヴン・ガウチ
Bushwick improvised Music series @ Bushwick Public House(2017年)
スティーヴン・ガウチ+クリス・デイヴィス+マイケル・ビシオ『Three』(2008年)
スティーヴン・ガウチ(Basso Continuo)『Nidihiyasana』(2007年)

●アダム・レーン
Bushwick improvised Music series @ Bushwick Public House(2017年)
アダム・レーン『Full Throttle Orchestra』(2012年)
アダム・レーン『Absolute Horizon』(2010年)
アダム・レーン『Oh Freedom』
(2009年)
4 Corners『Alive in Lisbon』(2007年)

●ケヴィン・シェイ
タリバム!+今西紅雪@本八幡cooljojo(JazzTokyo)(2019年)
タリバム!&パーティーキラーズ!@幡ヶ谷forestlimit(2019年)
MOPDtK@Cornelia Street Cafe(2017年)
Pulverize the Sound、ケヴィン・シェイ+ルーカス・ブロード@Trans-Pecos(2017年)
Bushwick improvised Music series @ Bushwick Public House(2017年)
Talibam!『Endgame of the Anthropocene』『Hard Vibe』(JazzTokyo)(2017年)
ヨニ・クレッツマー『Five』、+アジェミアン+シェイ『Until Your Throat Is Dry』(JazzTokyo)(2015-16年)
クリス・ピッツィオコス『Gordian Twine』(2015年)
PEOPLEの3枚(-2005年、-2007年、-2014年)
MOPDtK『Blue』(2014年)
MOPDtK『(live)』(2012年)
MOPDtK『The Coimbra Concert』(2010年)
ピーター・エヴァンス『Live in Lisbon』(2009年)
MOPDtK『Forty Fort』(2008-09年) 
 


エディ・ゴメス『Down Stretch』

2019-05-05 12:33:17 | アヴァンギャルド・ジャズ

エディ・ゴメス『Down Stretch』(Trio Records、1976年)を聴く。

Eddie Gomez (b)
Elliot Zigmund (perc)
Takehiro Honda 本田竹広 (p, key)

ビル・エヴァンスとの共演でも、チック・コリアとの共演でも、リーダー作でも、さほど注目されないベーシストに違いない。わたしも同様なのだが、後半の多重録音を含めてちゃんと聴いてみると悪くない。

いやそれより本田竹広である。ネイティブ・サン結成のちょっと前。本盤にはA面で弾いており、このキーボードの滋味というか、ブルースというか、たゆたっていて哀しくも明るい感覚というか、もうたまらないのだった。泣きそう。なんでこんなに良いんだろう。

●エディ・ゴメス
『Tribute to John Coltrane』(1987年)
アルバート・マンゲルスドルフ『A Jazz Tune I Hope』、リー・コニッツとの『Art of the Duo』(1978、83年)
ポール・ブレイ『Barrage』(1964年)

●本田竹広
本田竹広『BOOGIE-BOGA-BOO』(1995年)
本田竹広『EASE / Earthian All Star Ensemble』(1992年)
『Voyage』誌のネイティブ・サン特集、『Savanna Hot-Line』、『Coast to Coast』、『Gumbo』(1979-84年)
『ネイティブ・サン』(1978年)
本田竹広『This Is Honda』(1972年)
本田竹広『I Love You』(1971年)
本田竹広『The Trio』(1970年)


齋藤徹+沢井一恵@いずるば(JazzTokyo)

2019-05-05 12:00:03 | アヴァンギャルド・ジャズ

大田区のいずるば(2019/4/4)。JazzTokyo誌に寄稿した。

>> #1075 齋藤徹×沢井一恵

Tetsu Saitoh 齋藤徹 (b)
Kazue Sawai 沢井一恵 (箏)
Ryotaro Yahagi 矢萩竜太郎 (dance)

●齋藤徹
松本泰子+庄﨑隆志+齋藤徹@横濱エアジン(『Sluggish Waltz - スロッギーのワルツ』DVD発売記念ライヴ)(2019年)
齋藤徹+久田舜一郎@いずるば(2019年)
近藤真左典『ぼくのからだはこういうこと』、矢荻竜太郎+齋藤徹@いずるば(2019年)
2018年ベスト(JazzTokyo)
長沢哲+齋藤徹@ながさき雪の浦手造りハム(2018年)
藤山裕子+レジー・ニコルソン+齋藤徹@横濱エアジン(JazzTokyo)(2018年)
齋藤徹+長沢哲+木村由@アトリエ第Q藝術(2018年)
ロジャー・ターナー+喜多直毅+齋藤徹@横濱エアジン(2018年)
かみむら泰一+齋藤徹@喫茶茶会記(2018年)
永武幹子+齋藤徹@本八幡cooljojo(JazzTokyo)(2018年)
かみむら泰一+齋藤徹@本八幡cooljojo(2018年)
DDKトリオ+齋藤徹@下北沢Apollo(2018年)
川島誠+齋藤徹@バーバー富士(JazzTokyo)(2018年)
齋藤徹+喜多直毅@板橋大山教会(2018年)
齋藤徹+喜多直毅+外山明@cooljojo(2018年)
かみむら泰一+齋藤徹@本八幡cooljojo(2018年)
齋藤徹+喜多直毅+皆藤千香子@アトリエ第Q藝術(2018年)
2017年ベスト(JazzTokyo)
即興パフォーマンス in いずるば 『今 ここ わたし 2017 ドイツ×日本』(2017年)
『小林裕児と森』ライヴペインティング@日本橋三越(2017年)
ロジャー・ターナー+喜多直毅+齋藤徹@横濱エアジン(JazzTokyo)(2017年)
長沢哲+齋藤徹@東北沢OTOOTO(2017年)
翠川敬基+齋藤徹+喜多直毅@in F(2017年)
齋藤徹ワークショップ特別ゲスト編 vol.1 ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+佐草夏美@いずるば(2017年)
齋藤徹+喜多直毅@巣鴨レソノサウンド(2017年)
齋藤徹@バーバー富士(2017年)
齋藤徹+今井和雄@稲毛Candy(2017年)
齋藤徹 plays JAZZ@横濱エアジン(JazzTokyo)(2017年)
齋藤徹ワークショップ「寄港」第ゼロ回@いずるば(2017年)
りら@七針(2017年)
広瀬淳二+今井和雄+齋藤徹+ジャック・ディミエール@Ftarri(2016年)
齋藤徹『TRAVESSIA』(2016年)
齋藤徹の世界・還暦記念コントラバスリサイタル@永福町ソノリウム(2016年)
かみむら泰一+齋藤徹@キッド・アイラック・アート・ホール(2016年)
齋藤徹+かみむら泰一、+喜多直毅、+矢萩竜太郎(JazzTokyo)(2015-16年)
齋藤徹・バッハ無伴奏チェロ組曲@横濱エアジン(2016年)
うたをさがして@ギャラリー悠玄(2015年) 
齋藤徹+類家心平@sound cafe dzumi(2015年)
齋藤徹+喜多直毅+黒田京子@横濱エアジン(2015年)
映像『ユーラシアンエコーズII』(2013年)
ユーラシアンエコーズ第2章(2013年)
バール・フィリップス+Bass Ensemble GEN311『Live at Space Who』(2012年)
ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+齋藤徹@ポレポレ坐(2011年)
齋藤徹による「bass ensemble "弦" gamma/ut」(2011年)
『うたをさがして live at Pole Pole za』(2011年)
齋藤徹『Contrabass Solo at ORT』(2010年)
齋藤徹+今井和雄『ORBIT ZERO』(2009年)
齋藤徹、2009年5月、東中野(2009年)
ミシェル・ドネダと齋藤徹、ペンタックス43mm(2007年)
齋藤徹+今井和雄+ミシェル・ドネダ『Orbit 1』(2006年)
ローレン・ニュートン+齋藤徹+沢井一恵『Full Moon Over Tokyo』(2005年)
明田川荘之+齋藤徹『LIFE TIME』(2005年)
ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+齋藤徹+今井和雄+沢井一恵『Une Chance Pour L'Ombre』(2003年)
往来トリオの2作品、『往来』と『雲は行く』(1999、2000年)
齋藤徹+ミシェル・ドネダ+チョン・チュルギ+坪井紀子+ザイ・クーニン『ペイガン・ヒム』(1999年)
齋藤徹+ミシェル・ドネダ『交感』(1999年)
齋藤徹+沢井一恵『八重山游行』(1996年)
久高島で記録された嘉手苅林昌『沖縄の魂の行方』、池澤夏樹『眠る女』、齋藤徹『パナリ』(1996年)
ミシェル・ドネダ+アラン・ジュール+齋藤徹『M'UOAZ』(1995年)
ユーラシアン・エコーズ、金石出(1993、1994年)
ジョゼフ・ジャーマン 

●沢井一恵
映像『ユーラシアンエコーズII』(2013年)
ユーラシアンエコーズ第2章(2013年)
ローレン・ニュートン+齋藤徹+沢井一恵『Full Moon Over Tokyo』(2005年)
ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+齋藤徹+今井和雄+沢井一恵『Une Chance Pour L'Ombre』(2003年)
齋藤徹+沢井一恵『八重山游行』(1996年)


タリバム!+今西紅雪@本八幡cooljojo(JazzTokyo)

2019-05-05 11:58:14 | アヴァンギャルド・ジャズ

本八幡のcooljojo(2019/4/12)。

Talibam!:
Matt Mottel (keytar)
Kevin Shea (ds)

Kohsetsu Imanishi 今西紅雪 (箏)

※素晴らしい写真はm.yoshihisaさん

タリバム!から千葉で日本の伝統楽器と共演したいとの相談があり、思いついたのは箏の今西紅雪さん。

今西さんの演奏が強烈な印象として残っていたのは、昨年のピーター・エヴァンスのステージなのであり、それはピーターが極めて音を抑制した上で成り立っていたサウンドだった。しかし今回は大暴れ美学のタリバム!である。よく考えるとまったく違う。音量のバランス的にどうだろうか、サウンドの方向性が違いすぎるのではないだろうか、などと勝手に心配をしたり、幡ヶ谷forestlimitでの来日初公演を今西さんと観たあとに勝ち負けは如何になどと勝手に煽ったりもした。

しかしそれはすべて杞憂に終わった。

和楽器との初共演となるタリバム!も、今西さんも、見事なパフォーマンスをみせた。ファーストセットでは探り合いのような雰囲気があり(それもスリリングなものだ)、セカンドセットでは動悸動悸するほどの化学変化が起きた。さすがである。

JazzTokyo誌に寄稿した。

>> #1076 Talibam! with 今西紅雪

●タリバム!
タリバム!&パーティーキラーズ!@幡ヶ谷forestlimit(2019年)
Talibam!『Endgame of the Anthropocene』『Hard Vibe』(JazzTokyo)(2017年)

●今西紅雪
ピーター・エヴァンス@Jazz Art せんがわ2018(JazzTokyo)(2018年)

●ケヴィン・シェイ
タリバム!&パーティーキラーズ!@幡ヶ谷forestlimit(2019年)
MOPDtK@Cornelia Street Cafe(2017年)
Pulverize the Sound、ケヴィン・シェイ+ルーカス・ブロード@Trans-Pecos(2017年)
Bushwick improvised Music series @ Bushwick Public House(2017年)
Talibam!『Endgame of the Anthropocene』『Hard Vibe』(JazzTokyo)(2017年)
ヨニ・クレッツマー『Five』、+アジェミアン+シェイ『Until Your Throat Is Dry』(JazzTokyo)(2015-16年)
クリス・ピッツィオコス『Gordian Twine』(2015年)
PEOPLEの3枚(-2005年、-2007年、-2014年)
MOPDtK『Blue』(2014年)
MOPDtK『(live)』(2012年)
MOPDtK『The Coimbra Concert』(2010年)
ピーター・エヴァンス『Live in Lisbon』(2009年)
MOPDtK『Forty Fort』(2008-09年) 


藤井郷子『Stone』(JazzTokyo)

2019-05-05 11:51:57 | アヴァンギャルド・ジャズ

藤井郷子『Stone』(Libra Records、2018年)のレビューをJazzTokyo誌に寄稿した。

>> #1608 『藤井郷子 ピアノ・ソロ / Stone』

Satoko Fujii 藤井郷子 (p)

●藤井郷子
邂逅、AMU、藤吉@吉祥寺MANDA-LA2(2019年)
This is It! 『1538』(2018年)
魔法瓶@渋谷公園通りクラシックス(2018年)
MMM@稲毛Candy(2018年)
藤井郷子オーケストラ東京@新宿ピットイン(2018年)
藤井郷子オーケストラベルリン『Ninety-Nine Years』(JazzTokyo)(2017年)
晩夏のマタンゴクインテット@渋谷公園通りクラシックス(2017年)
This Is It! @なってるハウス(2017年)
田村夏樹+3人のピアニスト@なってるハウス(2016年)
藤井郷子『Kitsune-Bi』、『Bell The Cat!』(1998、2001年)


渋さチビズ@なってるハウス

2019-05-05 10:52:53 | アヴァンギャルド・ジャズ

入谷のなってるハウス(2019/5/4)。予定になかった登敬三さんも入っていてラッキーである。

Hideki Tachibana 立花秀輝 (as)
Keizo Nobori 登敬三 (ts)
Yoichiro Kita 北陽一郎 (tp)
Koichi Yamaguchi 山口コーイチ (p)
Daisuke Fuwa 不破大輔 (b)
Jun Isobe 磯部潤 (ds)

この面々のエネルギーミュージックであり最高に決まっている。

立花さんは凄まじい音圧。途中でネックを外してマウスピースと直結、またそのネックとの2本吹き(!)という驚異の離れ業をみせた。登さんをナマで観るのははじめてだ。テナーならではの良い音であり、おれ知らないよと始めた「Goodbye Pork Pie Hat」ではコードで探りを入れながら見事な世界を構築した。山口さんのシームレスに循環し戻ってくるピアノも嬉しい。もちろん北さん、不破さん、磯部さんのエネルギーとグルーヴと破裂も素晴らしい。

「Naadam」で耳鳴り。

Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●不破大輔
青山健一展「ペタペタ」とThe Space Baa@EARTH+GALLERY(2017年)
川下直広カルテット@なってるハウス(2017年)
川下直広カルテット@なってるハウス(2016年)
立花秀輝+不破大輔@Bar Isshee(2015年)
不破大輔@東京琉球館(2015年)
山口コーイチ『愛しあうことだけはやめられない』(2009-10年)
高木元輝の最後の歌(2000年)
2000年4月21日、高木元輝+不破大輔+小山彰太(2000年)
『RAdIO』(1996, 99年)
『RAdIO』カセットテープ版(1994年)
のなか悟空&元祖・人間国宝オールスターズ『伝説の「アフリカ探検前夜」/ピットインライブ生録画』(1988年)

●立花秀輝
立花秀輝トリオ@東中野セロニアス(2017年)
AAS@なってるハウス(2016年)
立花秀輝+不破大輔@Bar Isshee(2015年)
立花秀輝『Unlimited Standard』(2011年) 

●山口コーイチ
ヴァネッサ・ブレイ+山口コーイチ@サラヴァ東京(2018年)
川下直広カルテット@なってるハウス(2017年)
川下直広カルテット@なってるハウス(2016年)
AAS@なってるハウス(2016年)
山口コーイチ『愛しあうことだけはやめられない』(2009-10年)

●磯部潤
AAS@なってるハウス(2016年)


ステフ・リチャーズ『Take The Neon Lights』

2019-05-04 14:49:13 | アヴァンギャルド・ジャズ

ステフ・リチャーズ『Take The Neon Lights』(Birdwatcher Records、-2019年)を聴く。(以前のステファニーからステフに変えたようである。)

Steph Richards (tp, flh)
James Carney (p)
Sam Minaie (b)
Andrew Munsey (ds)

前作『Fullmoon』は、音が発せられる位置のことも考慮に入れて、サンプラーと美しく共振するアルバムだった(JazzTokyo誌「ステファニー・リチャーズとの『Fullmoon』を巡る対話(フェミニストのジャズ・レビュー)」)。

本盤はよりオーソドックスなピアノトリオとのカルテットである。だが、ピアノトリオを従えてトランペットを吹くようなものではない。サウンド作りの意識は前作と通じるものがあるようで、ステフのトランペットが、トリオの面々の間でかくれんぼをしながら、上や下や向こう側で音を放っているように聴こえる。もっとも賑やかでトランペットらしさを発揮できそうな「Skull of Theatres」においてもそうである。

●ステフ・リチャーズ
「JazzTokyo」のNY特集(2018/8/5)