日々のつれづれ(5代目)

旅行レポート以外の、細々としたこと。
割とまめに書くようにしています。
お気軽にコメント下さい。

【本】大木 茂著 「ぶらりユーラシア-列車を乗り継ぎ大陸横断、72歳ひとり旅-」(現代書館)

2022-07-21 20:00:00 | 本・映画・展覧会
 コンパクトサイズでない単行本で、しかも厚い。タイトルに惹かれて借りてみたものの、これが年寄りの独善的な紀行文だったらとっとと突き返そうと思いながら読み始めたところ、たいへん面白かった。全く知らなかったが、超ベテランの鉄道写真家なのだった。

 本書は旅行記ではあるけれど、サイズは小さいものの点数多い写真が素晴らしい。さすがプロ、見事な構図。鉄道旅行の写真なので、車両や駅と言った単体でなく、それらをバックにした現地の人々の様子が多い。とは言え、写り込んでいる車両には見覚えのある形式も多々あり懐かしく思えた。

 著者が旅したコースは「王道」のシベリア鉄道ルートでなく、いわゆるシルクロードルート。さすがに全区間を鉄道でゆくことはできず、タクシー(チャーター車)で移動した区間も少々あるが、それは仕方あるまい。自分もウラジオストクからリスボン(ロカ岬近く)まで鉄道で乗り繋いでいるが、そのコースゆえ著者のコースと似通っているのは主に欧州内と言うことになる。

 撮影・取材旅行で海外経験豊富とは言え、独りで計画、予約、そして現地行動をする72歳、素晴らしい。本書にも紹介されており自分もファンである下川裕司氏もハードな鉄道旅行をされているが、あちらはカメラマンと二人旅。本書の著者の旅の方が困難であることは容易に想像がつく。

 プロカメラマンらしく、現地の人々にカメラを向ける遠慮のなさ、文中ときどき現れる年配者ならではの頑迷さと皮肉が気になることはあったが、本書全体から見れば大きなマイナスポイントではない。記述の内容も、きちんと記録したデータに基づく部分、著者の感性に基づく部分が適度にミックスされていると感じた。

 近年、国境をまたぐ列車の運行は縮小の一方である。列車があるうちに、自分に体力気力があるうちに、まだ見ぬ国際列車での旅をしたいと、本書を読んで強く思った。

 2022年7月6日 自宅にて読了
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2022年7月5日 母、無言の帰宅する

2022-07-21 06:00:00 | ノンジャンル
 市の火葬場は、9時から1時間おきの時間で予約ができる。さすがに朝一では慌ただしいので、10時からの予約をし、その1時間ほど前に葬儀社に行った。葬式を上げるわけでも坊さんを呼んでるわけでもないため、カジュアルな服装である。父は黒のTシャツにジーパン、自分は黒のポロシャツに黒の綿パン、靴も黒と色だけは黒で揃えた。

 棺には副葬品と言うか思い出の品を少し入れられると言うので準備したのは、
①当日朝に摘んだ庭の花(約10種類)
②趣味の本(料理、ケーキ、ガーデニング、キルト)
③趣味の道具(料理用の木へら)
④趣味の成果(キルト大小2点)
⑤お供のぬいぐるみ(限定物のテディベア)

 冷蔵庫で夜を過ごしメチャクチャ冷たくなってしまった母。穏やかな寝顔で良かった。まず顔の回りに花を散らし、身体にキルトを掛け、その上に諸々の品を置いた。蓋の釘打ちはやりたくないし、音すら聞きたくないと思ったが、葬儀社の人がやってくれたようだった。火葬場から直帰のため、霊柩車(アルファード)の後を軽トラで追う。父は霊柩車に同乗、最後の「夫婦旅行」だ。火葬場まではものの数分。棺を降ろせば葬儀社の仕事は終わり。わずか24時間足らずですが、お世話になりました。

 ガタゴトと搬送機で送られ、ドアが閉まる。さようならと呟いたが、ありがとうと言い忘れたことに後で気付いた。これから何度でも言おう。1時間半ほど待機、父は横になり、自分は本を読んでいた。他に利用者はおらず、静かに過ごせた。

 お骨上げ。最初に大腿骨、最後に頭蓋骨。白く、軽い。骨壺に余裕で収まった。木箱に入れ、さらに目立たぬよう不織布のバッグまで付いているサービスぶり。おかげで、昼食のファミレスに母も連れて入れた。

 実家に戻り、出窓のところにしつらえたスペースに木箱を安置。キルトや本、写真スタンド、庭の花などを飾るとそれらしくなった(写真)。葬式はやらないと言っても親しかったご近所さんが弔問に来られる可能性があり、形を整えた次第。亡くなってから骨になるまで僅か1日余り、あっけないが、ずるずる引き摺るのは故人も喜ばないだろうと。

 夜、いったん帰宅。週末にまた訪れることにする。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする