コンパクトサイズでない単行本で、しかも厚い。タイトルに惹かれて借りてみたものの、これが年寄りの独善的な紀行文だったらとっとと突き返そうと思いながら読み始めたところ、たいへん面白かった。全く知らなかったが、超ベテランの鉄道写真家なのだった。
本書は旅行記ではあるけれど、サイズは小さいものの点数多い写真が素晴らしい。さすがプロ、見事な構図。鉄道旅行の写真なので、車両や駅と言った単体でなく、それらをバックにした現地の人々の様子が多い。とは言え、写り込んでいる車両には見覚えのある形式も多々あり懐かしく思えた。
著者が旅したコースは「王道」のシベリア鉄道ルートでなく、いわゆるシルクロードルート。さすがに全区間を鉄道でゆくことはできず、タクシー(チャーター車)で移動した区間も少々あるが、それは仕方あるまい。自分もウラジオストクからリスボン(ロカ岬近く)まで鉄道で乗り繋いでいるが、そのコースゆえ著者のコースと似通っているのは主に欧州内と言うことになる。
撮影・取材旅行で海外経験豊富とは言え、独りで計画、予約、そして現地行動をする72歳、素晴らしい。本書にも紹介されており自分もファンである下川裕司氏もハードな鉄道旅行をされているが、あちらはカメラマンと二人旅。本書の著者の旅の方が困難であることは容易に想像がつく。
プロカメラマンらしく、現地の人々にカメラを向ける遠慮のなさ、文中ときどき現れる年配者ならではの頑迷さと皮肉が気になることはあったが、本書全体から見れば大きなマイナスポイントではない。記述の内容も、きちんと記録したデータに基づく部分、著者の感性に基づく部分が適度にミックスされていると感じた。
近年、国境をまたぐ列車の運行は縮小の一方である。列車があるうちに、自分に体力気力があるうちに、まだ見ぬ国際列車での旅をしたいと、本書を読んで強く思った。
2022年7月6日 自宅にて読了
本書は旅行記ではあるけれど、サイズは小さいものの点数多い写真が素晴らしい。さすがプロ、見事な構図。鉄道旅行の写真なので、車両や駅と言った単体でなく、それらをバックにした現地の人々の様子が多い。とは言え、写り込んでいる車両には見覚えのある形式も多々あり懐かしく思えた。
著者が旅したコースは「王道」のシベリア鉄道ルートでなく、いわゆるシルクロードルート。さすがに全区間を鉄道でゆくことはできず、タクシー(チャーター車)で移動した区間も少々あるが、それは仕方あるまい。自分もウラジオストクからリスボン(ロカ岬近く)まで鉄道で乗り繋いでいるが、そのコースゆえ著者のコースと似通っているのは主に欧州内と言うことになる。
撮影・取材旅行で海外経験豊富とは言え、独りで計画、予約、そして現地行動をする72歳、素晴らしい。本書にも紹介されており自分もファンである下川裕司氏もハードな鉄道旅行をされているが、あちらはカメラマンと二人旅。本書の著者の旅の方が困難であることは容易に想像がつく。
プロカメラマンらしく、現地の人々にカメラを向ける遠慮のなさ、文中ときどき現れる年配者ならではの頑迷さと皮肉が気になることはあったが、本書全体から見れば大きなマイナスポイントではない。記述の内容も、きちんと記録したデータに基づく部分、著者の感性に基づく部分が適度にミックスされていると感じた。
近年、国境をまたぐ列車の運行は縮小の一方である。列車があるうちに、自分に体力気力があるうちに、まだ見ぬ国際列車での旅をしたいと、本書を読んで強く思った。
2022年7月6日 自宅にて読了