【本】高坂 勝著 「減速して自由に生きる－ダウンシフターズ－」(ちくま文庫)

　少し前に読んだ本で、とめどない資本主義経済に翻弄され生きることに疲れ、果てしない上昇志向・消費競争から「降りる」生き方が紹介されていた。その本の参考文献にあった本で、以前から読んでみたいと思っていた本でもあった。

　大手小売業での生活に疲れかつ仕事の内容に疑問を感じ退職した著者が、自分のやりたいようスローペースな手作りバーを開業し、それでも着実に利益を出し営業を維持している実情を明かすとともに、人生を「ダウンシフト」する人々が増えている現状とさまざまな事例、今後の展望を述べている。

　著者の主張するトレンドは少しオーバーかもしれないが、それでも昔に比べたら生き方や生活様式の多様化の進行は間違いないだろう。がむしゃらに働きガッツリ稼ぐ代償に己の健康や家族との時間を犠牲にすることに抵抗感を持つ人が増えたことも間違いない。本人さえ良ければどちらの生活を取るか自由だが、身体を壊したり心を病むまで働くのは、やはり間違っているのではないか。

　本書の良い所は、具体的にどれくらいのお金が必要でバーでどれくらい売り上げたら生きて行けるかと言う具体的な試算をしている点。理想ばかりで生活できないことを解った上で、生きていける収益を上げていると言うのは立派だと思う。

　著者は本書の巻末に記した未来予想図、いや設計図か…通り、現在バーは閉店し、拠点である千葉県匝瑳市で「SOSA PROJECT」などで活躍中。挫折せず、かつ発信を続けている点もすごいと思う。ただ、本書も最後まで読むと逆の意味で意識高い系のような感じを受け、ちょっと疲れた。

　2024年2月29日　実家より戻る電車にて読了