コニャックの男
1971年/フランス
「コニャック」の謎
総合 50点
ストーリー 0点
キャスト 0点
演出 0点
ビジュアル 0点
音楽 0点
本作の監督であるジャン=ポール・ラプノーはルイ・マルと共同で執筆した『地下鉄のザジ』(1960年)の脚本家としてデビューした人であり、本作はラプノーにとって監督として2作目である。1971年に公開されていることからも推測できるように本作は、1786年2月14日にシャルロットと結婚した主人公のニコラ・フィリベールがやがて巻き込まれる、1789年から始まるフランス革命と1960年代後半の学生運動をダブらせている。
王党派と革命派を自由に行き来できるニコラは、とりわけ『幕末太陽傳』(川島雄三監督 1957年)の主人公の居残り佐平次のように見えるし、女の尻を追いかけながら最終的にフランスの元帥になってしまうところは、いかにもかつて革命を成功させた国ならではであろうが、『地下鉄のザジ』でも感じたのであるが、ニコラ役のジャン=ポール・ベルモンドの熱演に反して、かなりの制作費が費やされているにも関わらず、コメディとして見ると今一つ面白みが感じられない。特に、シャルロットを目覚めさせるためにニコラが彼女の顔に何度もくらわせるびんたからラストシーンのニコラのシャルロットに顔に見舞うびんたまでの女性に対する暴力は、当時の男尊女卑の世相を反映させたものなのか、笑いを取る監督の常套手段の一つなのかがはっきりしなかった。
しかし本作の最大の問題は邦題であろう。原題の意味はフランスの1793年9月22日から1794年9月21日までの「共和暦2年の夫婦」である。確かに原題をそのまま訳しても意味が分からないが、邦題の「コニャック」がどこから取られたものなのか本作を観ても全く分からなかった。
アンリ・ル・シダネル(Henri Le Sidaner)というフランスの画家の位置付けは難しい。
時代的には印象派に属しており、実際に、そのような作品も存在するのであるが、象徴主義
のような側面もあり、基本的に描写は上手い。上の作品は「朝日のあたる道沿いの川」と
いう1923年の作品で、1962年8月7日生まれのル・シダネルが60歳から61歳の時の
作品である。この作品は良かったのであるが、1923年から後の作品は明らかに筆致が
変化しているように感じる。ル・シダネルは常に作風を変えているので、あまり気がつかれ
ないのかもしれないが、現在、東京の損保ジャパン東郷青児美術館において開催されて
いる「アンリ・ル・シダネル展」で時系列を気にしながら見ていくと、第6章のブルターニュ
地方から筆致が“劣化”していることが確認できる。ル・シダネルの妹は画家のジョルジュ・
ルオーと結婚していながら、画家同士はほとんど交流がなかったらしいが、それが作風の
問題なのか、それともルオーの孤独癖のせいなのかは詳らかではない。