国立新美術館で『ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち(Venetian Renaissance Paintings)』が
催されたのは確か去年だったはずだが、東京都美術館では『ティツィアーノとヴェネツィア派展
(Titian and the Renaissance in Venice)』が早くも開催されている。
しかし目立つのはやはりタイトルにもなっているティツィアーノ・ヴェチェッリオ(Tiziano Vecellio)
の作品で上の『フローラ(Flora)』(1515年頃)などは同時代の他の画家と次元が違うという
くらいに美しい。
(『ダナエ(Danae)』 ティツィアーノ・ヴェチェッリオ 1544-46)
上の作品を観たミケランジェロは「色彩も様式も気に入ったが、素描の修練が足りない」と
感想を述べたようだ。確かに女性の胴と脚のバランスが悪いようにも見えるのだが、もちろん
ミケランジェロ・ブオナローティ(Michelangelo Buonarroti)は素描を重んじるフィレンツェ派で、
ティツィアーノのヴェネツィア派とは作風が対立することは記憶にとどめておかなければ
ならない。
(『聖家族と聖バルバラ、幼い洗礼者聖ヨハネ(The Holy Family with Saint Barbara and the Child Baptist)』 パオロ・ヴェロネーゼ 1565)
ティツィアーノ以外の作品ならばパオロ・ヴェロネーゼ(Paolo Veronese)の上の作品が
素晴らしく、ようするにヴェネツィア派はあとヤコポ・ティントレット(Jacopo Tintoretto)の
作品を加えればほぼ全てを網羅できるといっても過言ではないだろう。