MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『幸せなひとりぼっち』

2017-02-21 00:22:54 | goo映画レビュー

原題:『En man som heter Ove』 英題:『A Man Called Ove(オーヴェと呼ばれる男)』
監督:ハンネス・ホルム
脚本:ハンネス・ホルム
撮影:ゴラン・ハルベルグ
出演:ロルフ・ラスゴード/バハー・パール/フィリップ・バーグ/アイダ・エングヴォル/カタリナ・ラッソン
2015年/スウェーデン

他人に理解されない覚悟を持つということ

 舞台はおそらく2015年の3月頃。前年に58歳の妻のサーシャを病気で亡くし、子供のいない主人公のオーヴェは独りで生活していたが、59歳になるオーヴェは43年勤めていた鉄道局から事実上のクビを言い渡され、その前に自分から辞めてしまい、どのようにして自殺しようかと考える毎日を過ごしている。
 オーヴェは鉄道員の父親に育てられた。無口な父親との生活で、オーヴェの性格は内向的なものになっていったが、それでも父親に車の仕組みなどを学ぶ。オーヴェのスウェーデン製の「サーブ」好きは折紙付きで、例え親友でもボルボに乗っているだけで疎遠になってしまうほどである。学校も優秀な成績で卒業したのであるが、その直後に父親は鉄道事故で亡くなってしまい、さらに父親が建てた自宅は隣家の火事のもらい火で焼失してしまう。
 列車に偶然乗り合わせたサーシャと逢ったのはそんな時だった。サーシャは教師になるために大学で勉強しておりウクライナ出身の小説家のミハイル・ブルガーコフの『巨匠とマルガリータ』を読むような秀才だった。結婚して2人にようやく子供ができた矢先にサーシャは事故に遭遇してしまうのである。
 一見するならばオーヴェは近所に住む厄介なうるさい頑固爺であるが、オーヴェは他人に冷淡な人間ではない。事故で車イス生活を余儀なくされたサーシャのために自ら学校にスロープを取り付けて教師の職をもたらし、体が不自由になった親友が強制的に施設に入れられるのを防ぐために市役所と掛け合う。線路に降りて自殺しようとしていた若者を救っても決してそれを吹聴したりはしないのである。
 生き方が不器用なオーヴェは自分を高く評価してくれる人だけで葬儀をして欲しいと願う。そういう覚悟を持った生き方は悪くはないと思った。


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