原題:『サバイバルファミリー』
監督:矢口史靖
脚本:矢口史靖
撮影:葛西誉仁
出演:小日向文世/深津絵里/泉澤祐希/葵わかな/大地康雄/時任三郎/藤原紀香/柄本明
2017年/日本
余計な制作費をかけて撮る「B級作品」について
矢口史靖監督作品の「B級感」はこの新作においても感じられるもので、そもそも鈴木一家を見舞う謎の大停電はラストで太陽の大規模なフレアではないかと推察されるものの、電池さえ機能しなくなるような停電の原因ははっきりしないままで、設定が曖昧な本作はSF作品でさえないのである。
あるいは細かい演出に目を向けるならば、渡辺えりが演じた質屋の女将の古田富子に、ある男が腕にしていたロレックスを女将の前に置いて食料を求めるものの、もはや何の役にも立たない高級腕時計に女将は見向きもせず、さらに男は高級自動車のキーを渡すのであるが、女将は怒鳴り散らして男を追い返す。その際に男はロレックスを質屋に残したまま去っていくのであるが、いくら価値がなくなったとはいえ本人には思い入れのあるロレックスを置いて行ってしまうことは考えにくく、ここに矢口監督の演出の「B級感」を感じるのである。
とは言え、本作が失敗作だと言うのではない。矢口監督作品の特異さは必要以上の制作費をかけて「B級」作品を撮る贅沢さにあり、『アドレナリンドライブ』(1999年)が失敗しているとするならば、制作費の低さにあったのではないかと思うのである。