原題:『The Accountant』
監督:ギャヴィン・オコナー
脚本:ビル・ドゥビューク
撮影:シーマス・マクガーヴィ
出演:ベン・アフレック/アナ・ケンドリック/J・K・シモンズ/ジョン・バーンサル/ジョン・リスゴー
2016年/アメリカ
所有している絵画で暗示される主人公の心象風景について
主人公の法会計士のクリスチャン・ウルフは高機能の自閉症を患っており、それは1964年2月25日の試合において対戦相手のソニー・リストンを倒した直後のモハメド・アリが写っているジグゾーパズルを裏面で完成させてしまう驚異の能力で証明される。
元軍人だった父親に鍛えられたことで2016年現在ウルフは分刻みの規則正しい生活を送りながら発症を抑えているのであるが、それは例えば居住場所として使っているウルフのキャンピングトレーラーにはウルフの母親を想わせるオーギュスト・ルノアールの作品と自分の心の内をイメージさせるようなジャクソン・ポロックの作品が掲げられており、印象派と抽象絵画という対照的な作品の併存でウルフの心象を表しているのである。
ラストでウルフがデイナ・カミングスに贈った作品は『ポーカーをする犬(Dogs in The Poker)』だった。それは2人が最初に会った頃に話題に出た作品で、デイナは嫌いだと言ったのだが、ウルフは嫌いではないと語っていた。デイナがその作品に下に本物のポロックの作品を見いだした時、私たち観客はウルフの社会的な立場とその下に隠された心の闇を察するのである。
会社のCEОのラマー・ブラックバーンが、自分は医療用障害者支援ロボットを開発してきたと力説している最中に、ウルフが呆気なく銃殺してしまうところが興味深い。デイナを助けに行ったのも彼女が妹に似ていたからであって、ウルフには家族という身近な者以外には冷淡なのである。