原題:『La La Land』
監督:デミアン・チャゼル
脚本:デミアン・チャゼル
撮影:リヌス・サンドグレン
出演:ライアン・ゴズリング/エマ・ストーン/ジョン・レジェンド/ローズマリー・デウィット
2016年/アメリカ
21世紀の「理由なき反抗」について
主人公のセバスチャン・ワイルダーもミア・ドーランもそれぞれの夢を追いかけている。ミアは女優になるためにネヴァダ州の田舎からロサンゼルスにやって来たが、何度オーディションを受けても落ちてばかりだったし、セブは本格的なジャズを演奏したかったが、彼が求められる音楽は例えば、シドニー・ベシェ(Sidney Bechet)のようなジャズではなくケニー・G(Kenny G)のようなポップなフュージョンなのである。
しかし2人の夢とは何だったのかラストで分からなくなる。まるで走馬灯のように描かれる2人の五年後の「理想」は、まるで本当の夢であるように張りぼてで描かれ、だから逆に厳しい現実は、例えば冒頭のシーンが象徴するようにCGではなく実写で描かれるのである。
楽曲はどれも印象的なのだが、個人的にもっとも感動したエマ・ストーンが歌った「オーディション/夢見る愚か者たち(Audition/The Fools Who Dream)」を和訳しておきたい。
「Audition/The Fools Who Dream」 Emma Stone 日本語訳
私のおばは以前パリに住んでいた
思い出すわ
彼女が家に来ると私たちに外国にいた時のことを話してくれたの
彼女は一度裸足で河に飛び込んだと私たちに言っていたのを思い出す
彼女は笑っていた
向こう見ずに跳んだのよ
セーヌ河に飛び込んだ
水は凍るような冷たさで
彼女は一ヵ月間くしゃみをしていたが
彼女はまたやると言った
夢を見る者たちを祝福しよう
彼らは愚か者に見えるかもしれない
心を痛めている者たちを祝福しよう
私たちが犯す失敗を祝福しよう
彼女は感覚を掴んだ
天井の無い空の
フレームの中の日暮れの
彼女は飲んだくれの人生を送り
あっという間に亡くなった
私はいつだってその情熱を思い出すはず
夢を見る者たちを祝福しよう
彼らは愚か者に見えるかもしれない
心を痛めている者たちを祝福しよう
私たちが犯す失敗を祝福しよう
彼女は私に言った
ちょっとした狂気がカギとなる
それが私たちに見たこともない色を示してくれるから
それが私たちをどこへ導いてくれるのか誰が知っているというの?
だから彼らは私たちを必要としているのよ
だから反逆者たち(rebels)を連れてこよう
小石からできる波紋は
やがて画家となり詩人となり劇となるのだ
だから夢見る愚か者を祝福しよう
彼らは異常に見えるかもしれない
心が折れた者たちを祝福しよう
私たちが犯す失敗を祝福しよう
私は全ての物事の足跡をその時点までたどっていく
彼女と雪とセーヌ河の
全てに笑顔を絶やさずに
またするよと彼女は言った
セブとミアが映画館で観ていた『理由なき反抗(Rebel Without a Cause)』(ニコラス・レイ監督 1955年)は上映途中でフィルムが燃えてしまう。本作は新世紀の「理由なき反抗」なのである。