MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『愚行録』

2017-02-24 00:06:14 | goo映画レビュー

原題:『愚行録』
監督:石川慶
脚本:向井康介
撮影:ピオトル・ニエミイスキ
出演:妻夫木聡/満島ひかり/小出恵介/松本若菜/臼田あさ美/市川由衣/濱田マリ/平田満
2017年/日本

「記録」の「愚行性」について

 演出の観点から見てみるならば、例えば、作品の冒頭で主人公の田中武志が乗るバスを平行移動のドリー撮影でゆっくりと映し出し武志が高齢者の女性に席を譲らない場面と、ラストにおいて田中が妊婦に席を譲った後にバス内で360度回転するパンで車内を映し出すコントラストや、あるいは田向一家を惨殺した後に、殺人犯が血まみれの自身の身体を風呂場のシャワーで洗い流す場面から田中が傘をさしている雨の場面の流麗な展開など洒落た演出が見られる。
 しかしストーリーとなるとどうも納得しかねる点が多々ある。例えば、有名大学に通っている夏原友季恵が同じ大学の同期で、いかにも冴えない学生であるはずの田中光子を目の敵にして騙すようなことをする動機がよく分からない。
 あるいは光子がネグレクトした千尋という名前の赤ん坊に対して、光子の兄である武志が何故代わりに世話をしなかったのか、千尋が亡くなった時に病院にまで駆けつけているが故に尚更よく分からず、橘美沙子が田中兄妹の実の母親に会いに行って「事実」を知った時、はたして武志の話がどこまで本当の話だったのかますます分からなくなり、これは「愚行」が書かれた「記録」なのか、あるいは「記録」そのものが「愚行的」なのか観客は途方に暮れてしまうのである。


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