原題:『NO CALL NO LIFE』
監督:井樫彩
脚本:井樫彩
撮影:早坂伸
出演:優希美青/井上祐貴/犬飼貴丈/小西桜子/山田愛奈/駒木根葵汰/諏訪太朗/桜井ユキ
2021年/日本
興行面で惨敗を強いられる傑作について
最初に主人公の佐倉有海が見知らぬ番号の電話で対応したのは同級生で子供の時の春日真洋である。子供の真洋は有海に自分が実の母親の連れてきた男に暴力を受けていることを告げ、有海は同居しているいとこの航佑と電話の発信元に向かいアパートの一室にたどり着くものの、そこは空き部屋になっていた。
話は一気に飛ぶが、後半になって有海は幼い頃の自分と電話で話すことができるのだが、その時、自分が父親に性的虐待を受けていたことを思い出し、自分と真洋が同じ境遇だったことに気が付くのである。
そもそも2人の仲を取り持ったのは航佑で、先輩である航佑は後輩の真洋と距離を取るようになり、有海の友人である日野由希奈が航佑の恋人になったために必然的に2人の距離は縮まるのであるが、既に前半で花火を巡り有海の不手際で真洋が右手を火傷し、後半で、真洋が持っていたナイフで有海は左頬に軽い傷を負い、右手を負傷している。つまりここで「同類」により傷つけあう対照性が示されるのである。
ここで注目されるのが井樫彩監督の演出方法で、映し出す対象物を小津安二郎ばりに必ず画面の中央に置いており、このこだわりこそ映画の醍醐味のはずで、もはやストーリーなど関係なく映像だけを目で追うだけで「映画」を十分に堪能できるのだが、一見すると同じように見える『花束みたいな恋をした』(土井裕泰監督 2021年)や『ライアー×ライアー』(耶雲哉治監督 2021年)のような「反映画」に対して興行面では足元にも及ばないのである。
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