原題:『Une sirène à Paris』
監督:マチアス・マルジウ
脚本:マチアス・マルジウ/ステファン・ランドスキ
撮影:ビルジニー・サン=マルタン
出演:二コラ・デュボシェル/マリリン・リマ/ロマーヌ・ボーランジェ/ロッシ・デ・パルマ
2020年/フランス
セイレーンとマーメイドの違いについて
正確を期するならば原題は「パリのセイレーン」という意味でマーメイドではない。セイレーンとマーメイドは似て非なるもので、日本人が抱くマーメイドの良い印象はセイレーンにはなく、ホメーロスの『オデュッセイア』に描かれているようにセイレーンは美しい歌声で惹きこんだ船乗りたちを殺す海の魔物なのである。
だから主人公のガスパール・スノウに助けられたセイレーンのルラの歌声を聴いた医師のヴィクトルは翌日原因不明のまま亡くなってしまい、妻で医師のミレナはガスパールが病院の受付に残していった絵本を手掛かりに原因究明を始めるのである。
ところがルラがいくら歌ってもガスパールは平気なのだが、どうして大丈夫なのか理由は説明されないまま2人の「愛の逃避行」が最後まで続いてしまう。映像美はともかくとしてもストーリーは弱いと言わざるを得ない。