原題:『Illusions perdues』
監督:グザビエ・ジャノリ
撮影:グザビエ・ジャノリ/ジャック・フィエスキ
撮影:クリストフ・ボーカルヌ
出演:バンジャマン・ボワザン/セシル・ドゥ・フランス/バンサン・ラコスト/グザビエ・ドラン/ジェラール・ドパルデュー
2021年/フランス
成果の「早さ」について
1820年代。フランス南西地方のアングレームの印刷工場で働きながら、自身の詩集の出版を夢見ている20歳のリュシアン・ド・リュバンプレが主人公である。リュシアンは薬屋だった父親の「シャルドン」の姓は使わず、貴族の末裔だった母方の姓である「ド・リュバンプレ」を名乗っているのだが、恋人のルイーズを介して実際にパリへ行って自分を売り込もうとサロンで貴族たちと関わっても、教養の無さはすぐにバレてしまい、笑い者にされてしまうのである。
しかしだからと言ってリュシアンを愚かだと見なすのは早計で、例えば、本作の原作を書いたフランスの文豪であるオノレ・ド・バルザック(Honoré de Balzac)でさえ、名前の真ん中にある「ド」は、貴族を気取った自称だからである。
それならばリュシアンとバルザックはどこで道を違ったのか勘案するならば、もちろんそもそも才能の有無ということを除くとするならば、手っ取り早く稼げて、「マウント」を取ることもできるスキャンダルを扱った新聞記事の執筆、さらにはパリ社交界の陰のフィクサーとして暗躍しながら才能を浪費してしまったことに尽きるのではないだろうか。
因みにタイトルなのだが、「Illusions perdues」は「失われた夢想」といったニュアンスだと思う。
gooニュース
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