原題:『悪の仮面(アホウドリ The Albatross)』
監督:神代辰巳
脚本:田中陽造/伊藤秀治
撮影:前田米造
出演:いしだあゆみ/山本圭/酒井和歌子/浅野温子/石橋蓮司/中尾彬/絵沢萌子
1980年/日本
テレビドラマをスクリーンで観るコツについて
主人公の鳴海一彦と妻のよう子は山梨の富士屋ホテルまでドライブに行ったのだが、一人で眠っていたよう子の部屋に突然入って来た泥酔している男に襲われそうになったところを一彦が助けにきて酔っ払いを殴り倒す。
二日後の朝、その男の死亡記事を一彦は見つける。その男は元日本ウェルター級チャンピオンの黒川達彦だった。一彦が殴ったことが黒川の死亡要因の一つとされ、鳴海夫妻は新居が見つかるまで黒川の未亡人のアキと妹のユキを田園調布にある家に引き取ったことが運の尽き。よう子はそこから様々な恐怖を味わうことになるのであるが、本当のワルは「実行犯」のユキよりも、半身不随の自分の世話をしてもらっているという妹の負い目を利用して、自分の都合の良いように妹を動かすアキなのである。ルノワールの「Young Girls at the Piano (La Leçon de piano)」(1889年)のような作風に姉の「悪意」を見出すところは監督の神代辰巳よりも脚本の田中陽造なのかもしれない。
結局、アキはフライパンの火をユキに浴びせ、火だるまになったユキは車椅子ごと屋外に飛び出して坂道を滑走していく。このシーンは場内で笑いが起こった。確かに私も可笑しかったのだが、それは風呂場で首を吊るされたウサギのミミと同様に、テレビドラマをスクリーンで観ているからで、1980年当時に茶の間で観たとするならば相当なショックを受けると思う。なんにせよあの浅野温子が燃えているのだから。
それにしてもあれほど美人で演技も悪くはない酒井和歌子が女優として大成していないのが不思議である。