MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『愛にイナズマ』

2023-11-05 00:56:28 | goo映画レビュー

原題:『愛にイナズマ』
監督:石井裕也
脚本:石井裕也
撮影:鍋島淳裕
出演:松岡茉優/窪田正孝/池松壮亮/若葉竜也/仲野大賀/趣里/高良健吾/三浦貴大/中野英雄/MEGUMI/益岡徹/佐藤浩市
2023年/日本

カメラで撮れないものについて

 主人公の折村花子は26歳の映画監督で、自身の母親の失踪を扱った長編デビュー作『消えた女』を1500万円の予算で制作しようとしているのはコロナ禍の2022年の5月頃。しかし結局、助監督の荒川やプロデューサーの原と意見が合わずに病気と称して降板させられ、代わりに荒川が撮ることになる。
 前半で印象深い点は、ビルから飛び降りようとしている男性に向かって「お腹がすいたから早く飛び降りろ!」と囃し立てる高齢者がいて、それをカメラに収めようとするものの、花子のカメラは調子が悪くて起動せず、その上カメラに撮られなかった場面はそもそも存在しないようになってしまうのである。だから荒川に「そんな奴おらんやろ」と言われると証拠がないために反論しようがないのである。
 『消えた女』を取られてしまった花子は自主製作で『消えない男』を撮ろうとするのだが、父親の折村治にカメラを向けて花子自らインタビューを試みるも、「真実味」が全くでない。それは長男の誠一と次男の雄二も含めて撮っても変わらなかった。ある時期、父親が荒れていた時があり、そのせいで母親は愛人と共に家を出て行ってしまったことを花子は追求しようと思ったのであるが、治も兄たちもカメラで撮られているせいもあってか、緊張して要領を得ないのである。
 ところが敢えて詳細は避けるが父親が荒れていた理由が意外なところから明らかになるのだが(治は胃がんで一年後には亡くなっているから、もしかしたら花子は知らないままだったかもしれない)、つまり本作で描かれていることは「カメラで撮らなかったものは存在しない」ということと、「真実はカメラで撮れない」ということで、映画監督は絶えずこの不可能なことに挑んでいるということなのである。確かに私たちが見ているものはほとんどが「フィクション」で「真実」の撮影は偶然の産物でしかないのである。
 ひとつ気になったシーンを指摘しておくならば、花子に呼ばれて誠一がBMWで実家に向かうショットがブレブレだったのだが、この演出の意図がよく分からなかった。
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/oricon/entertainment/oricon-2300213


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