強面の魚屋に「たのむけーこうて(=買って)。安うしとくから」とせがまれた。
「アニキを俺に押し付けるのか」
「アニキじゃないけー」
「でも売れ残りには違いないだろうが」
「まあな。鍋にしたらうまいで。1◆00円でええわ」
「身欠きの状態にしてくれる?」
「自分でやらんの?できよう」
「アホか。もし当ったらシャレにならんだろ」
「あんたなら大丈夫じゃ、ハハハ」
「ええから言うた通りにしてくれ」
馬鹿な会話の末、とらふぐを買わされた。昆布だしでアラを炊き、身と野菜を放りこむ。まず火が通った身を食ってから野菜に移る。どうでもいい野菜が美味に変わるのがふぐマジックである。
残っただしに冷凍うどんを入れて啜る。何とも贅沢な料理だ。畜肉ではこの味は絶対に引き出せない。