とある割烹のカウンター。ネタケースの上のザルには形のよい松茸がてんこ盛り。隣のよぼよぼの爺さんは茶を飲むだけで、何も食べていなかった。そこへ土瓶蒸しが運ばれてきて、老人はお猪口にだしを注いで飲み始めた。
私がサワラの造りをつまんでいると、隣に焼き松茸が出された。香りをタダで分けてもらって酒を飲んでいるという何とも妙な感じである。手持ち無沙汰な板前が「今日の松茸はほんとにいいですよ。焼きましょうか」と尋ねた。
「値段も飛び切りだろうが…俺は匂いだけでじゅうぶんだ。寄島のカキを酢の物にして」と返したので板前はニタニタ笑っていた。小振りのカキだったが、海のエキスがたっぷりで、喉をツルンと通過し胃袋に落ちていった。
私がサワラの造りをつまんでいると、隣に焼き松茸が出された。香りをタダで分けてもらって酒を飲んでいるという何とも妙な感じである。手持ち無沙汰な板前が「今日の松茸はほんとにいいですよ。焼きましょうか」と尋ねた。
「値段も飛び切りだろうが…俺は匂いだけでじゅうぶんだ。寄島のカキを酢の物にして」と返したので板前はニタニタ笑っていた。小振りのカキだったが、海のエキスがたっぷりで、喉をツルンと通過し胃袋に落ちていった。