午後からも私はツキに見放された。「播州赤穂」行きの新快速が「人身事故」のため5分遅れで到着。『大したことはない』と笑っていたが、乗り換え駅である「相生(あいおい)」の6km手前で電車は減速を続けてとうとう停車した。
『架線にビニールが引っ掛かっているのが発見されましたので安全のため停車しました。運転再開までしばらくお待ち下さい』とのアナウンスが流れて車内は嫌な雰囲気になった。
鈍行で晩までに帰ればいいと思ったのが裏目に出てしまった。結局30分以上足止めをくらった。「相生」から飛び乗った電車は「上郡(かみごおり)」止まりだった。

気が滅入るような田舎町である。北関東の空っ風のような吹き曝しの中で20分待つことになった。あまりに暇なので途中下車して駅の周りをぶらついたが、何も無かった。

スーパーいなばの写真を撮ったりして時間を潰した。「三原」行きの山陽本線下りに乗って、品のない街に帰り着いたのは夕暮れ時だった。釣人像付近で山姥のような女子高生と擦れ違った。
私は彼女の漏らした言葉を聞き逃さなかった。『ぼれーさみぃ(=とても寒い)』という感想は的確だった。
