京橋駅から辿り着くまでに二度道を尋ねた。マグロを安く食わせる立ち飲み屋である。17時過ぎ、既に何人か待っていた。
テーブルの奥に陣取り、コースを頼んだ。トロか赤身を選ぶシステムらしい。壜ビールとコップは客自身が取りに行く。


私は連れにつめた指の移動ネタ(タモリが地下鉄でやって客の反応を楽しんだ話)を披露して、ビールをあおっていた。
隣で愉快に飲んでいたファミリーが親しげに話しかけてきた。大阪ではよくある風景なのだが、しまった、と思った。「その筋の人」であることがピンときたからである。別にイチャモンをつけられなかったので、美味しいフグの店の話などをして盛り上がった。

角刈りの長身の男は最後までズボンから右手を出さなかった。連れは帰り際に「あの人、えんこ飛ばしとったわ」と引き攣った表情で語った。
「お前、気づかへんかったんか。まだまだやのぅ」
老若男女、堅気と極道が一堂に会する店、東京にはない魅力だ。ちなみに後ろ側は墓地である(笑)
