寮管理人の呟き

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犬食について(朝鮮半島)

2010年06月22日 | 食文化

犬食文化について考える際に朝鮮半島の事例を外すわけにはいかない。『日本焼肉物語(太田出版 1999年)』の著者・宮塚利雄さんは韓国の大学院に留学した経験(昭和48~55年)があり、dancyu1999年7月号のインタビューで当時を懐かしく振り返っている。その一部を抜粋しよう。

 韓国では、ソウルの賄い付きの下宿にいたことが多いんですが、主に食べていたのはキムチや海苔や魚なんかで、肉はせいぜい週に一度ぐらい。それも主に犬の肉でしたね。当時、韓国では犬の肉はポピュラーで、夏場のスタミナ食として日常的に食べていました。その頃の韓国はまだ貧しくて、牛肉は特に値が張った。牛の骨付きカルビの専門店もありましたが、私などはほとんど口にできないものでした。七輪で焼いて食べるのは、犬の肉か、豚の三枚肉、あるいはホルモンでしたね。

そして『日本焼肉物語』では留学中の食生活について更に詳しく記している。

 …留学中に暑気払いに知人とポシンタン(補身湯。犬肉)を食べに行った時のことである。武橋洞のナクチコルモク(いいだこ通り)から、路地裏に入ったところにある古びた韓式家屋のこの食堂は、ポシンタン料理が有名で、この日も客でいっぱいであった。昼の1時ごろだというのに部屋は暗く、扇風機はあるものの動いていなく、七輪の中では炭火が赤々と燃えており、むっとする二酸化炭素の臭いだけが異常に鼻をついた。当然のことながら客は男ばかりで、ほとんどが上半身裸である。扇風機の風は「肉を焼くのにじゃまだ」とか、「肉の味が落ちる」とか、「七輪の炭火が消えやすい」とか、各自それぞれが理由をあげて、ポシンタンは汗を流しながら食べるのが“通”とのこと。
 汗をダラダラ流しながら、焼酎をグイッと一気に飲み干し、“クァッ”という声を発しながら食べたポシンタンの味はまさに「別味」であり、暑気払いとしては最高のものであった。

 留学時代に下宿していた家で、いつも見慣れている犬がいなくなったので、アジュモニ(おばさん)に聞いたら、「神様に召されたの」と意にも介さないように、いとも簡単に答えた。それにしても、自転車の荷台に籠をのせたアジョシ(おじさん)の、「ケーパラヨー(犬を売って)」という声が、路地裏に余韻を残して消えて行った時代が懐かしく思い出される。

 これも留学時代の思い出であるが、知人とソウル郊外の渓谷地に遊びにいった時のことである。われわれは渓谷の流れに足をつっこみながら、焼酎と持ってきたキムチやナムルなどで涼をとっていたが、犬を連れて鍋と薪を持って登ってくる連中に出会った。避暑に犬を連れてくるとはなかなか粋な人たちだなと思っていたら、しばらくして「キャン」という犬の悲鳴が上の方から聞こえてきた。私は留学したばかりであり、まだポシンタンを食べていなかったので、何が起きたのかと心配顔になったが、知人は別に気にしていない。しばらくして、この連中が下りてきたが薪がないことと犬がいないのに気づいた。
 知人に聞くと夏は犬に限るとのこと。みんなで金を出し合って1匹買ってきて、料理して食べるとのこと。今でもソウルに行くと知人が農協中央会の付近にある、ポシンタンチプ(犬肉料理屋)が連なっている路地裏に案内してくれる。

「汗をダラダラ流しながら」という件を読んで唾を飲み込んだ私も似たような経験を浅草でしている。韓国語の飛び交う「KR」でサイコロステーキよりも大きなミノ(牛の第1胃)を七輪で焼いて食べた日のことを思い出した。ミノはジューシーでやわらかかった。舞い上がる煙に包まれ汗だくで食らいつく楽しさを教えてくれたこの店には今でも感謝している。

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