日本サッカーの決勝トーナメント進出を喜び産経新聞を開いたところ、刺激的な文字が目に入った。「選挙はだまされる方が悪い」というテーマで乾正人政治部長が参院選の候補者選びで参考になることを述べていた。
世の中にうまい話などない。
たとえば、「徳川幕府が明治維新のどさくさで隠した埋蔵金のありかがわかった。発掘費用の一部を投資してもらえば年利30%つけて償還する」という電話がかかってきたとしよう。みなさんは、すぐ電話を切るか警察に通報するはずだ。民主党が昨夏の衆院選で掲げたマニフェスト(政権公約)も「徳川埋蔵金」のたぐいだった。
(中略)
昨年の衆院選で民主党のマニフェストを信じて投票した方は、裏切られた思いがしていることだろう。しかし、その気になれば政党や候補者に関する情報が容易に得られるようになった現代の選挙においては、酷な言い方であるが、だました政党や政治家よりだまされた有権者の方が悪い。むろん、昨夏に一政党のスローガンに過ぎなかった「政権交代」をあたかも錦の御旗のように垂れ流したメディアの責任が極めて大きいのを承知の上である。
(中略)
今回は、ぜひともだまされたと後悔しないよう各党のマニフェストや候補者の資質に目を光らせて投票していただきたいが、その際に見分けるポイントが2つある。1つは、政策を厳しく比較することだ。(中略)非現実的な夢物語を吹聴する政党や政治家はまゆにつばをつけた方がいい。
もう1つは、各党の候補者がどんな国家観を持っているかを見極めることだ。そうした観点で、各党のマニフェストを点検することをお勧めする。(中略)菅直人首相が力こぶを入れている消費税問題も「税制協議を超党派で開始する」と書いているだけ。さきの国会に提出しようとした外国人参政権法案や夫婦別姓法案について一言も触れていないのもおかしな話だ。
一方、自民党のマニフェストは44㌻と民主党の倍もある。(中略)野党なのに、あんな事もこんな事もやります、と書き連ねるのはいかがなものか。(中略)
かつてヒトラーの演説に感動して涙を流した少女が某ドキュメンタリー番組のインタビューを受けていたシーンを私は思い起こし新聞を閉じた。70歳を過ぎた婦人は再び独裁者の熱弁を冷静に聞いて「彼の演説のどこが良かったのか今ではわからない」と真顔で語ったのだ。私達も彼女と同じ苦い経験をする可能性は大いにある。「耳に心地よいフレーズほど気をつけなければならない」と思う(笑)
