寮管理人の呟き

偏屈な管理人が感じたことをストレートに表現する場所です。

傾斜地に建つ老人宅から出火・全焼した悲惨な事故について考える

2012年02月10日 | 日記
本日午前1時過ぎ広島県東部の傾斜地に建つ木造平屋から出火(※原因はまだ不明)しているのを近所の人が発見し通報したが、消防車が入ることができない場所のため消火は約2時間半後だったという。

焼け跡(全焼)から見つかった遺体はこの家で一人暮らしをしていた100歳の女性と見られている。県内の各テレビ局は一斉に事件を報道していたが、現場の状況を視聴者に明確に伝えていたのは広島テレビのカメラワークだった。

墓地の上に位置する平屋跡からはるか下に市街地が見えていたのである。広島県全域で同様の事故が起こり得るエリアの洗い出しを行った上で早急な対策が必要であると思った。

足腰の弱った老人が先祖代々守ってきた土地を離れるということは、ある意味辛いことではある。しかし、もしも便利で安全な平地に移り住みたいと考えながら不安を抱えて暮らしているのであれば、それを手助けするサービス(役所や民間の団体)を利用するのも一つの手だろう。

助け合いの精神が薄れてきた平成という時代にまさに町内会の存在意義も問われている。老婆の死を無駄にしないために一人一人が考えなければならぬ問題だ。

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京都帝國大學の挑戦 / 潮木守一(名古屋大学出版会)

2012年02月10日 | 書籍
「キャンパスの生態史 大学とは何だろう(昭和61年)」を読んだ私は潮木守一(昭和9年生)という学者に興味を持った。明治44年7月に東京帝国大学法科大学(当時は9月入学)を卒業した人が遺したノートから帝大における筆記学問の実態を検証する件が秀逸だった。

彼の力作と言われる「京都帝國大學の挑戦(昭和59年)」にも目を通したくなったのは自然であろう。私は大学生協書籍部を通して取り寄せることにした。東広島市で生活していた頃の話で、おそらく年号が平成に変わってまもない時だったと思う。

本が入荷するまで1ヶ月以上要したが、待っただけの甲斐があったと心から思えた内容だった。だからこそこの本は今も書斎に置かれている。簡単に中身について触れておこう。

京都帝国大学の創立は明治30(1897)年、法科大学(現在の法学部に相当)の開設は明治32年9月であった。東京帝大法科が高級官吏養成校としての色合いを増し学生に「暗記学問」を強いるのに対して後発の京都帝大法科は「自治自修自制の精神」を重んじ独自の路線を進もうとした。一時期3年制を導入し(東京帝大よりも卒業が1年早くなる)旧制高校の卒業生を集めることに成功したかのように見えたが、東京帝大と比べて高等文官試験合格率が著しく低いことを批判され始める。

官僚を目指すには京都帝大法科への進学は不利と判断する高校生が増え入学者は減少。独自路線は行き詰まり明治40年に東大の軍門に下ることになる。

潮木は結果的には失敗に終わった京都帝大法科の挑戦は非常に意味があったと最後にこう書いている。

 …京大の教授は…東大を前にして、敢えて、それに対抗する教育システムをもって、東大に挑戦しようとしたのである。
 たしかに彼らは、それまで…築き上げてきた京大独自の教育体制を、一旦は断念せざるを得ない立場に追いこまれた。しかし、彼らが企てた挑戦は、それで終わった訳ではない。彼らが身をもって、後世に示したのは、大学間の競争が大学の腐敗、退廃、おごりを防ぐうえで、いかに貴重であるかの一点である。
 …その後、大学教授が政府官僚のポストを兼任することは、なくなったが、「官」そのものは、さまざまな装いのもとに、多様化して、生き続けてきている。そのことを考えれば、彼らの提起した挑戦はいまだに終わっていないことになる。大学とは何をするところなのか、大学教授とはいかなる存在なのかは、依然として問いを残した課題だからである。
 創世記の京大法科をめぐって、このような事件のあったことは、いまや次第に人々の記憶のなかから消え去ろうとしている。考えてみれば、嚇々たる成功談は後世に語り継がれるが、圧殺に終わった悲劇は、あまり語り継がれることはない。その意味で人間の記憶とは自分勝手であり、歴史とはそれだけ無情である。しかしこうした自分勝手な人間の記憶に挑戦し、無情な歴史に敢えて反抗を試みるのは、後世に残された者の課題であろう。たしかに死者は語らない。しかし、後に残された者が懸命になって語りかけた時、死者はその重い口をわずかに開くことがある。そのわずかな期待が、著者をここまでつれてきた。果して死者の重い口を、どこまで開けることに成功したか。読者の批判を待ちたい。

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