青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。写真はおおめ、文章はこいめ、コメントはすくなめ。

さらば閑蔵のがばいばあちゃん

2010年06月01日 23時25分44秒 | 日常

(画像:閑蔵の出会い)

井川線の終点の一つ手前に、閑蔵(かんぞう)と言う名前の駅があります。
井川線は、ほとんど人跡未踏と言っても差支えない南アルプスの深山幽谷を走りますので、
一部の駅を除いては、利用者がいるのか?と思わせるような場所に駅があります。

そんな静かな閑蔵駅で、下り列車の進入を撮影しよっかなあなんて思いましてね。
当然ながらこんな駅から乗る人なんて誰もいないよね。ウン。
森の鳥の声を聞きながら三脚を立てていると、不意に声を掛けられたw

「カメラ撮りに来たのかぇ?」

この角度からでは分からなかったのだが、待合室にばあちゃんが一人w
ビビらせないでくれよ(笑)。

聞けばこのばあちゃん、井川行きの列車を待っていた正真正銘の地元民。
完全にマンツーマンでロックオンされた私は、列車が来るまでばあちゃんの茶飲み話に付き合う事になったw
どうも話しぶりでは、これから静岡市内に行くらしい。
ま、信じがたい事だがここも一応静岡市内なんだけどね(静岡市葵区)。

連れの爺さんは買い物程度の用事で町までは運転するが、静岡までは無理な事。
(この場合の「町」ってのは恐らく千頭の街だろうね)
大井川鉄道で金谷まで出て静岡に行くと、静岡までは4時間程度かかる事。
(料金も片道4,000円程度かかる様子)
そのため、この辺りの人はみんな終点の井川から出ているバスを使う事。
(それでも一日一往復だそうだ)
この閑蔵の集落は、60代では若いらしい事。
娘が二人嫁いでしまった事。
昔は大雪が降ったけど、今ではそんなに積もらなくなった事。

そんなばあちゃんに、奥大井の大自然って魅力的じゃないですかねえ、
なんてありきたりな感想を述べると、
「観光の人はいいかも知らんかェ、もう山はたくさん!」
と言ってあっはっはと笑うのであった。
そんな話をつらつら聞いているうちに、駅の警報機が鳴り始めた。

(画像:閑蔵駅進入)

鬱蒼とした森の向こうから、井川行きの列車が姿を現した。
ホントは違う構図を撮りたかったんだけど、せっかくだからばあちゃんに登場してもらいます(笑)。
ばあちゃんは閑蔵駅の常連らしく、運転士とにこやかに声を交わして列車に乗り込む。
まあ、この駅から乗る人なんて嫌でも顔を覚えられちゃうんだろうねえ。
たぶん一日ひとケタ、片手にも行かないだろう乗客のうちの一人だろうしな…
車掌がスタスタと私のいた待合室に向かって駆けて行く。
何だろな、と思って見てみたら、待合室に今朝の朝刊を置きに行ったのであった。
ご丁寧に、宛先まで書いてあった(笑)。

新聞屋も来ない山奥、井川線が支える地域の暮らし。
機関車のタイフォン一発、ゴトゴトと閑蔵の駅を出て行く列車の窓からばあちゃんが手を振る。
なんかこそばゆいけど、こちらも手を振る。
さらば閑蔵のがばいばあちゃん。

コメント
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