青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。写真はおおめ、文章はこいめ、コメントはすくなめ。

思い出の中のオレンジ

2019年06月17日 22時00分00秒 | 箱根登山鉄道

(吊り掛けサウンドの終着地@箱根湯本駅)

今回引退するサンナナ編成は、鼻の詰まったような独特の重低音を響かせる「吊り掛け式」のモーターを架装する最後の編成でした。以前のモハ1・モハ2全盛の時代は、それこそ登山電車と言えば吊り掛け音が当たり前だったような気もしますが、いつしかベルニナ、そしてサンモリッツ、とどめのアレグラと新世代の車両の投入によって、ズモモモーンと下っ腹に響く感じのあの音が、箱根の山から消えて行きます。

「吊り掛け駆動方式」ってなんなの?と言われると、単純に列車の進行方向と同方向のモーターの回転を、そのまま車輪に伝えて走る方式、と言えばいいのだろうか。「吊り掛け」の対義語として使われる「カルダン駆動」は、歯車をL字型に組み合わせるベベルギアを使って、横回転を進行方向の車輪の回転に変換して走る駆動装置である。今回引退するサンナナ以外の旧車群は、既にカルダン駆動に換装されていてこの音を聞く事は出来ません。

箱根湯本の駅で発車待ちの103。折角の紫陽花シーズンですが、大涌谷の火山活動が「レベル2」となったせいでロープウェイが運休しており、箱根ゴールデンコースが周遊出来ないせいかいつもよりは人出が控えめな感じのする箱根界隈。冷房のないサンナナ編成、梅雨の晴れ間のこんな日に窓を開け放って山の嵐気を取り入れるのは気持ちがいいものだが、大混雑の梅雨時に、雨でも降られるとムシムシして地獄と化すのが旧車の泣き所。標高を上げていく箱根の山の旅路とは言え、年々暑くなる夏への対策か、2020年を前に旧車群は全廃の見通し。 

塔ノ沢から80パーミルの坂道を降りて来るサンナナ。登山の旧車は吊り掛けだけじゃなくて、ブリルの台車を履いた古参組がいて、それも良かったですよね。まだ小田原まで登山電車が来てた時代の話だ。急行を降りて、小田原の駅のホームの先っぽの方に行くと、止まっているオレンジの2両の登山電車。当時の登山線の小田原口は、6連の急行を受けるのが2連の登山電車だったりするのでたまらないものがあった(笑)。夏休みなどはそらもうすし詰め状態で、「ロマンスカーならこんな混んだ登山電車に乗らないで湯本まで行けたのに!」と、倹約した親を恨んだものだ。

箱根登山のモハ1・モハ2を追い掛けていると、口に出すのは恥ずかしいのだが子供の頃の思い出を振り返っているような気がしてならない。親子で旅した箱根の思い出は、いつも色々な乗り物が描かれた箱根フリーパスと、オレンジの登山電車によるスイッチバックの旅であった。まあ両親は絶対覚えちゃいないだろうが、小田原駅でみんなで買った東華軒のお弁当を持って登山電車に乗り、彫刻の森の芝生で食べた「こゆるぎ茶めし」がとっても美味かったのを何故かはっきりと覚えている。

大人になってから食べた「こゆるぎ茶めし」は、ご飯に鯛のおぼろが乗っかっている以外は、幕の内的な普通の弁当であった。

コメント
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