青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。写真はおおめ、文章はこいめ、コメントはすくなめ。

指折り数え行く日々を。

2025年03月03日 17時00分00秒 | 弘南鉄道

(シュプール描いて@鯖石~石川プール前間)

バックに大鰐温泉スキー場がばっちりと入る、石川プール前のストレート。5年前の冬に訪れた際に、ラッセル列車を撮影した思い出の場所。大鰐線沿線に限らず、冬の雪国は「除雪している道とそうでない道」ははっきり分かれていて、当たり前ながら生活に関わらない畑の細道や行き止まりの道は除雪対象から外されて春までそのままなのだ。石川プール前のストレートは、清掃工場の道に続いていて、ちょうど撮影する場所までが除雪されているのは前と同じだった。山の上に大きな宿泊施設か、ロッジが見える大鰐温泉スキー場は国内屈指の学生スキーのメッカですが、スキー需要も縮小傾向かつ施設整備に費用がかさむこともあり、一部コースは営業を休止中。高度経済成長期に日本中で行われたスキー場開発とゴルフ場開発、ともにレジャー人口の減少に伴う後始末に苦慮している部分があって、結局外資に売却されたり、太陽光パネルが置かれたり。雪国だと太陽光パネルも置けませんのでね。どうなることやら。

平川に沿って大鰐の街を目指す大鰐線の電車。月曜日の昼間に、車内の乗客の数はポツリ、ポツリ。大鰐線の利用状況は、時間に関わらず大鰐から弘前方面の流動は極めて少なく、弘前市の市街地を抜けると、乗客の姿は両手があったら余る。弘前市内へはまずマイカーだろうし、マイカーでもなけりゃ奥羽本線に乗るだろうし、そして駅まで行かなくても居住者の多い旧羽州街道沿いには千年・石川・大鰐を経由する弘南バスの碇ヶ関線(弘前バスターミナル~道の駅いかりがせき)が走っている。弘前駅へ出られない大鰐線が競争する相手は多く、そしてそれに対抗する力はほぼ残っていない。逆に言えば、大鰐から弘前にかけての流動に対して、奥羽本線と大鰐線と弘南バスという三つの手段があるのだから、他の地方に比べれば公共交通は割と手厚いのではないかと思うフシがある。

午後になってすっかり雲に覆われた津軽、お岩木山も雲に隠れて鉛色。千年の駅に来てみました。この冬の大雪で駅に向かう道路の道幅は狭まり、うず高く積もった雪の中に僅かに付けられた道を通って、人々は駅を利用しています。住宅街の中の空き地が雪捨て場になっているらしく、狭い路地から雪を積んだ大型ダンプがひっきりなしに出て行っては戻りを繰り返している。中央弘前からやって来た大鰐行きから、僅かながらの乗客が降りて来た。大鰐線が弘前駅ではなく中央弘前へ繋がっていること、ある程度中央弘前駅周辺の商業地区が賑わっていればこそ意味のあることなんだけど、弘前の旧市街・・・いわゆる土手町周辺の衰退によって、致命的に流動に合わなくなってしまったというのが大鰐線問題の根幹にある。ここ千年駅の駅前の道路を200mほど東に行けば、弘南バスの上松原バス停から、弘前BTや弘前駅前行きのバスが10~20分に1本は走っているのだから。

大鰐線の一日を眺めていると、電車を通勤客が使っている風はほとんどなく、乗客はもっぱら沿線の中高生と、弘前市の旧市街方面へ向かう主婦や高齢者の方々の短距離の利用が中心です。午後の遅い時間になれば、沿線の学校に通っている生徒たちの下校時間に合わさって、車内も少しだけ賑やかになります。でも、一時間に一本の列車の乗客が30~40人程度ですから。鉄道の一番の特性である「一度で大量の乗客を運んで行く」というストロングポイントを発揮しているとは言えないところがあります。まだまだ第一次産業が盛んな津軽地方で、朝にスーツを着て会社へ向かう人もそりゃ都会に比べれば少ないんだろうけど、以前なら大鰐線にも通勤ラッシュがあったのかなあ。現代の地方都市で会社勤めの人って、ほぼ通勤はクルマなんでしょうね。例えば飲みに行く日でも、帰りは会社にクルマを置いて帰るか代行を使ってしまうのでしょうし。

夕暮れ迫る中央弘前の駅。土淵川の畔の1面1線、キング・オブ・郊外電車の始発駅という佇まいの名駅舎なのだが、その姿が見られるのも一応はあと三年余りとなり、指折り数え行く日々を過ごしている。ただ、あくまで三年間という期限は弘南鉄道側が沿線の高校生たちの通学の便宜を図るための猶予期間として設けたものであって、個人的には廃止表明以降あえて大鰐線を使って通学する学生たちが維持されるのか・・・ということにはやや懐疑的でいる。そうでなくても、昨年長期間に亘って運休したように、保線の維持は限界に来ているし、駅舎や変電所を含めた設備維持も限界を超えた老朽化を迎えているところがほとんどだろう。赦されるのであれば、地元との同意のもと「一定の役目を果たした」という結論で廃線の前倒しはあるんじゃないかなと思っていて・・・

突然のお知らせが、再びなければよいのですが。

コメント
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