青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。写真はおおめ、文章はこいめ、コメントはすくなめ。

KBは アルピニストの ガイドウェイ。

2022年10月10日 10時00分00秒 | 富山地方鉄道

(常願寺の谷に臨んで@千垣駅)

今は立山線の山線区間の小駅に過ぎない千垣の駅ですが、大正から昭和の初期にかけてはここが終着駅でした。富山県営鉄道がこの先の常願寺川の谷に橋を架け、粟巣野へ線路を伸ばしたのはそれから15年後の昭和12年の事。先日、ひょんなことから当時の富山県営鉄道の時刻表を手に入れたのですが、南富山(堀川新)から千垣までは下りが1時間20分、上りが1時間とだいぶ所要時間が違っていました。県が行う常願寺川の電源開発事業の工事用資材輸送を主目的に建設された富山県営鉄道ですが、当時は蒸気機関車での運行だったので、勾配のあるなしが大きく所要時間に影響したものと思われます。

まだ夜も明けきらぬうちの朝の快速急行、KB301レ。早朝のアルペンルートへ、登山客を届ける立山線の名物列車です。電鉄富山を早朝5時半前後に出発し、寺田・五百石・岩峅寺・千垣・有峰口・本宮と停車して立山へ。一回乗車した事もありますが、基本的に電鉄富山から立山までほぼ車内の人数が入れ替わらないので、直行でもいい気はするんだけどね。千垣の駅で一瞬の停車時間、駅に停まったという証拠を残すだけの爆速ドア開閉を行って、雨の中をそそくさと走り去って行きました。

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秋雨に 煙る蒼朝 立山路。

2022年10月08日 12時00分00秒 | 富山地方鉄道

(始発前、雨に濡れる@岩峅寺駅)

夏の丹後半島から、話は秋の富山に移る。何となく秋の三連休は富山に行く事が半ばルーティンワーク的なモノになっていて、これで五年連続の参戦になりました。その土地の事を深く知るのであれば、季節を変えて訪問する方がいいのだと思うのだけど、そこはそれ。こちらにも出掛けやすい時期とそうでもない時期というものがあるんだよな。それにしてもこの秋の三連休は連続で台風がぶち当たって天気的にはお話になりませんでしたね。せめて日本海側は若干マシな事前の天気予報ではあったのだけど、結局台風15号流れの雨雲は抜けてはくれず、ほぼ雨の中でのロケーションとなりました。

恐怖すら感じる土砂降りの中央道から安房峠を抜け、国道41号を笹津から回って朝5時。いつものルートのアプローチで到着した岩峅寺の駅。雨の朝、始発電車を前に、人っ子一人いない駅を静かに愛でる。夜明けも徐々に遅くなる時期、肌寒いほどのしのつく雨を衝いて、回3301レのヘッドライトが蒼い朝を照らす。稲荷町から回送でやって来て、岩峅寺始発の立山線経由電鉄富山行きの初電となります。

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由良の戸や 夜に糸引く 光の矢。

2022年10月02日 17時00分00秒 | 京都丹後鉄道(丹鉄)

(八月の夜風に吹かれて@与謝野駅)

京都丹後鉄道を中心に廻った丹後半島の旅、実質は一泊二日だったけれども、比較的天候に恵まれて濃厚な旅路となりました。久美浜から徐々に帰路へと車のハンドルを回しながら、列車のダイヤを見ながら撮れるところでは撮って行こうという展開。加悦鉄道が分岐していた与謝野駅(旧:丹後山田駅)で、夕方の2連をバルブ。加悦鉄道は、地方特産の丹後ちりめんやニッケルなどの鉱石を運ぶために敷設された鉄道ですが、コッペル型のSLや旧型気動車などレトロ車両の宝庫として有名で、この木造の待合室の向こうから、国鉄から譲受したキハ20系列の気動車や、客車改造のキハ08なんていう珍車が発着していました。現在の与謝野駅の駅舎には、在りし日の丹後山田駅のジオラマや資料が保存された小さな鉄道資料館があるそうで見てみたかったのですが、当然この時間は閉まっておりましたね。

与謝野町から天橋立を抜け、宮津から奈具海岸を通って三度目の由良川橋梁。そろそろ丹後半島からお別れの時間が近付いてはおりますが、この橋の前をそのまま何もせずに素通りする訳にも行きますまい。コンビニにクルマをチョイ置きさせて貰って、田んぼの脇の細道をスマホの明かりを頼りに辿って由良川の岸辺に出ると、真っ暗な川面からポチャリポチャリと水の揺蕩う音だけしか聞こえて来ない。暗闇に目を慣らすのに相当な時間を要する撮影環境で、光源を頼りにピントを合わせる事もままならなかったのだが、設定は当てずっぽうでも思い切りシャッターを開けて高感度撮影をするしかない状況。長時間露光でさんざめく川面がまるで雲海のように映った由良川橋梁、遠く見える舞鶴湾の漁火をバックに、夜空に漆黒の影を結ぶ。

とてもじゃないが真っ暗で、モノを落としたりでもしたら絶対に分からないような撮影環境。結構岸辺の草が煩いため、そこそこ川岸に寄って三脚を立てていたのだけど、ここで三脚を真っ暗な川へ落下させたら絶対に回収は不可能であろう。そして、こんな夜の由良川で活動しているのは自分だけだと思っていたら、岸辺をヘッドランプ付けて夜釣りしてるオッサンに遭遇しお互いにビビる(笑)。釣り趣味も鉄道趣味も、時間もへったくれもなくアングル(釣り場)を際限なく探し回る趣味という意味では同じなのかもしれない。

雲間から覘く星空と、沖の漁火を眺めながら待つ事暫し。列車が丹後神崎の駅に差し掛かる手前くらいからジョイント音が聞こえて来て、由良川の対岸の漆黒の闇の中を、懸命に走る気動車の灯りが見えた。神崎の駅を発車した列車は、夜の由良川橋梁を糸を引くような光跡を残して粛々と渡り、そして消えて行きました。

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