tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

初代神武天皇祀(まつ)る橿原神宮/毎日新聞「かるたで知るなら」第38回

2022年01月30日 | かるたで知るなら(毎日新聞)
NPO法人「奈良まほろばソムリエの会」は同会が制作した「奈良まほろばかるた」の各札を題材に毎週木曜日、毎日新聞奈良版に「かるたで知るなら」を連載している。先週(2022.1.27)掲載されたのは〈「神武さん」と親しまれ/橿原神宮(橿原市)〉、執筆されたのは吉野町のご出身で橿原市在住の亀田幸英さんだった(同会元理事)。地元愛にあふれた記事を、以下に紹介する。

〈初代神武天皇祀る橿原神宮〉
『日本書紀』によると、神武天皇は九州の日向国(ひゅうがのくに)高千穂から大和を目指して出発され、6年をかけて東征し、大和三山の一つ、畝傍山の東南麓の橿原の地で初代天皇として即位されました。皇后は事代主(ことしろぬし)の御娘の媛蹈韛五十鈴媛(ひめたたらいすずひめ)。お二人を祭神としてお祀(まつ)りしているのが橿原神宮です。

東南麓の橿原の宮跡は畑地でしたが、明治になると、民間から建立の請願が相次ぎ、1890(明治23)年4月2日、官幣大社として創建されました。明治天皇から京都御所の賢所(かしこどころ)と神嘉殿(しんかでん)を下賜(かし)され、移築して本殿(重文)、神楽殿(かぐらでん)として受け継がれています。

境内は約53万平方㍍と非常に広く、甲子園球場の約13個分の大きさです。神武天皇即位から2600年とされる1940(昭和15)年には国を挙げて奉祝記念事業が実施されました。その一環で宮域の拡張整備が行われ、全国から集まった延べ約120万人の奉仕員の人々が建設に参加しました。その際、約7万6000本の樹木が植栽され、現在の緑豊かな神宮の森になっています。

2月11日の「建国記念の日」に同神宮で最も重要な祭典(例祭)である「紀元祭」が勅使参向(さんこう)の下、厳粛に行われます。神武天皇が崩御したとされる4月3日には神武天皇祭(春季大祭)が執り行われます。地元や近郊の人々から「神武さん」と親しみを込めて呼ばれ、各種の行事で終日、にぎわいます。橿原神宮を参拝後は、北へ徒歩約15分で、畝傍山の東北にある神武天皇陵を参拝されては、いかがでしょうか。(奈良まほろばソムリエの会会員 亀田幸英)

【橿原神宮】
(住 所)橿原市久米町934
(交 通)近鉄橿原神宮前駅から徒歩約10分
(拝 観)境内自由
(宝物館)土・日曜、祝日のみ開館(平日は要予約)。入館料は大人300円
(駐車場)普通車500円
(電 話)0744・22・3271


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めらめらと炎が走る若草山焼き/毎日新聞「かるたで知るなら」第37回

2022年01月24日 | かるたで知るなら(毎日新聞)
NPO法人「奈良まほろばソムリエの会」は同会が制作した「奈良まほろばかるた」の各札を題材に毎週木曜日、毎日新聞奈良版に「かるたで知るなら」を連載している。先週(2022.1.20)掲載されたのは〈山頂の悪霊を供養/若草山焼き(奈良市)〉、執筆されたのは奈良市出身・木津川市在住の松田雅善さんだった。松田さんは私のもと同僚だ。


まずが花火上がる。山焼きと花火が1枚に写っている写真が
あるが、決してあのようには見えない。写真はすべて1/22撮影

今年の山焼きの日(1/22)は天候に恵まれ、また暖かい日だったのでラッキーだった。私は県庁の屋上は抽選に外れたが、奈良公園での観覧の席は取ることができた。YouTubeでライブ配信されるとはいえ、小さな子どもたちが意外な反応をしたり、遠くから来た人たちから驚きの声が漏れたり、やはり現場でたくさんの人たちと一緒に見るのは楽しい。「パブリック・ビューイング」の楽しさと言っても良いだろう。私が撮った写真も貼っておく。手持ち撮影のわりには、ブレずに撮ることができた。では記事全文を以下に紹介する。

〈めらめらと炎が走る若草山焼き〉
奈良公園(奈良市)東側にある若草山は標高342㍍。山が菅笠の形をして、三つの頂が重なって見えるため「三笠山」とも呼ばれます。手前から三つ目の頂「三重目(さんじゅうめ)」からは古都奈良の雄大な景色を一望でき、2003年には、写真家らでつくる団体
「新日本三大夜景・夜景100選事務局」主催の「新日本三大夜景」に選ばれました。



この山焼きは奈良の冬の代表的行事です。「若草山焼き実行委」や県によると、由来は山頂の鶯塚(うぐいすづか)古墳(前方後円墳)に葬られた悪霊を鎮める供養とされています。しかし、人々が勝手に火をつけるため、幕末に東大寺、興福寺、奈良奉行所の立ち会いの下、焼くようになったようです。



近年は毎年1月第4土曜に実施。当日の御神火(ごしんか)は、飛火野である「春日の大とんど」からもらい受け、春日大社と両寺の神職や僧侶と奈良奉行所の役人にふんした人など約40人が聖火行列で末社の水谷(みずや)神社まで火を運びます。火は松明(たいまつ)で若草山麓の野上神社に移され、祭壇前のかがり火に点火。祭礼後に大かがり火にも火をともします。



続いて、山焼き前に花火を打ち上げた後、市消防団員約300人が大かがり火から松明に移した火を一斉に山に放つと、炎がまたたく間に広がります。2022年も新型コロナ対策をしながら、1月22日に実施されますが、奈良公園での観覧は事前登録制で、既に受け付けは終了済み。しかし、インターネットの動画投稿サイト「ユーチューブ」でライブ配信され、夜空を赤々と染め上げる様子を自宅で楽しめます。(奈良まほろばソムリエの会会員 松田雅善)

【若草山】
(住 所)奈良市雑司町469
(交 通)JR・近鉄奈良駅から市内循環バス「大仏殿春日大社前」下車、徒歩約15分
(開 山)3月第3土曜~12月第2日曜の9~17時(※現在は閉山中)
(入山料)一般150円など


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裳階(もこし)あり六重に見える薬師寺東塔/薬師寺(奈良市)第36回

2022年01月18日 | かるたで知るなら(毎日新聞)
NPO法人「奈良まほろばソムリエの会」は同会が制作した「奈良まほろばかるた」の各札を題材に毎週木曜日、毎日新聞奈良版に「かるたで知るなら」を連載している。先週(2022.1.13)掲載されたのは「12年の解体修理終え/薬師寺(奈良市)」、執筆されたのは奈良市在住の山﨑愛子さんだった。解体修理を終えた薬師寺東塔は、先週(1/16)まで初層の特別開扉されていたが、それも終了したので、お間違いなきように。では記事全文を紹介する。

〈裳階あり六重に見える薬師寺東塔〉
世界遺産・薬師寺の国宝・東塔(とうとう)は、平城京の現存する最古の建物です。2020年12月に約12年間にわたる解体修理を終え、塗り替えられた白い壁が青空にひと際鮮やかです。高さは約34㍍。大小六つの屋根があるように見え、六重塔に間違えられますが、三重塔です。

大きな屋根のそれぞれ下にある小さな飾り屋根は「裳階(もこし)」と呼ばれ、風雨から建物を守っています。大きい屋根と小さな裳階が交互に連なるバランスが美しく、リズム感があります。このため、東塔は、建物を音楽に例えた「凍(こお)れる音楽」との愛称で親しまれています。

薬師寺は、天武天皇が皇后(後の持統天皇)の病気平癒を願い、藤原京に建立を発願(ほつがん)されました。皇后は回復しますが、今度は天武天皇が病に倒れ、薬師寺の完成を待たずに亡くなります。持統天皇は天武天皇の遺志を継ぎ、薬師寺を完成させました。その後、平城遷都に伴い、現在の西ノ京に移転しましたが、長い歴史の中で多くの堂塔が火災や地震で失われ、東塔が約1300年前の創
建当初から残る唯一の建物になりました。

1968年、お写経勧進(かんじん)による白鳳伽藍(はくほうがらん)の復興を始めた高田好胤(こういん)和上は「大きな屋根は天武天皇、小さな裳階は持統天皇。東塔は天武天皇が持統天皇を優しく守っておられるお姿です」と話されたそうです。21年3月から22年
1月16日まで東塔初層が特別開扉され、普段は見られない心柱を拝観できます。また、大修理完了記念の「東塔おみくじ」を東僧坊の授与所で引けます。(奈良まほろばソムリエの会会員 山﨑愛子)

【薬師寺】
(住 所)奈良市西ノ京町457
(交 通)近鉄西ノ京駅から徒歩すぐ
(拝 観)8時半〜17時、1100円(西僧坊・食堂を含む特別共通割引券1600円=16日まで)
(駐車場)普通車500円など
(電 話)0742・33・6001


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蘭奢待(らんじゃたい)天下一の名香収める正倉院/毎日新聞「かるたで知るなら」第35回

2021年12月24日 | かるたで知るなら(毎日新聞)
NPO法人「奈良まほろばソムリエの会」は同会が制作した「奈良まほろばかるた」を題材に毎週木曜日、毎日新聞奈良版に「かるたで知るなら」を連載している。昨日(2021.12.23)掲載されたのは〈「東大寺」の隠し文字/正倉院(奈良市)〉、執筆されたのは京都府木津川市在住の竹内和子さんだった。竹内さんは、同会では観光ボランティアガイドとして活躍中である。では以下に全文を紹介する。

〈蘭奢待天下一の名香収める正倉院〉
正倉院は、元は役所や寺院の主要な倉庫「正倉」が立ち並ぶ一郭(いっかく)を指す言葉でした。現在は東大寺の正倉だけが残り、固有名詞になりました。正倉院は3室あり、北倉と南倉は三角材を井桁に組んだ校倉(あぜくら)造り。中倉は北倉と南倉の壁を南北で利用し、東西は板をはめた板倉造り。

光明(こうみょう)皇后は756(天平勝宝8)年、聖武天皇の遺品六百数十点を廬舎那仏(るしゃなぶつ)に献納され、それは北倉に、東大寺関係の宝物は中倉と南倉に納められました。1200年以上前の品が伝わるのは、建物が高床式であったこと、宝物が脚付きの唐櫃(からびつ)(辛櫃とも。杉製)で管理されて湿度変化に対応できたこと、天皇の許しがないと宝庫を開けられない「勅封」で厳しく管理したためです。国宝で、世界遺産に登録されています。

名前に東大寺の3文字が隠れている有名な香木「蘭奢待(らんじゃたい)」は、正式には「黄熟香(おうじゅくこう)」と呼ばれ、樹種は伽羅(きゃら)で、長さ156㌢、重さ11・6㌔。中倉に薬物として鎌倉時代以前に納められたと考えられています。産地はインドシナとされますが、入手経路は不明です。蘭奢待には足利義政、織田信長や明治天皇らが切り取らせた箇所があり、付箋が付いています。

信長は1574(天正2)年、勅許を得て、唐櫃ごと正倉院北方の多聞城(たもんじょう)に運ばせ、「一寸四分(約4㌢)」の2片を切り取り、1片は正親町(おおぎまち)天皇に献上し、1片は自分が所持しました。蘭奢待は過去の正倉院展で大きな関心を集め、最近では2011年が14年ぶり4回目の出陳でした。次回が楽しみです。(奈良まほろばソムリエの会会員 竹内和子)

【正倉院】
(住 所)奈良市雑司町129
(交 通)JR奈良駅・近鉄奈良駅からバス「今小路町」下車、徒歩約5分
(参 観)無料(事前手続き不要)平日の10〜15時(土・日曜、祝日、年末年始などは休業)
(事務所)0742・26・2811


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役行者 奈良御所生まれの修験僧/毎日新聞「かるたで知るなら」第34回

2021年12月17日 | かるたで知るなら(毎日新聞)
NPO法人「奈良まほろばソムリエの会」は同会が制作した「奈良まほろばかるた」を題材に毎週木曜日、毎日新聞奈良版に「かるたで知るなら」を連載している。昨日(2021.12.16)掲載されたのは〈超人伝説 修験道の開祖/役行者〉、執筆されたのは大和高田市在住の福岡康浩さんだった。さすがに手堅くまとめておられる。以下に全文を紹介しておく。

〈役行者(えんのぎょうじゃ)奈良御所生まれの修験僧〉
役行者(役小角=えんのおづぬ)は飛鳥時代に実在した人物で、修験道の開祖です。その伝説はまるでアニメ主人公のような活躍ぶり。

前鬼(ぜんき)、後鬼(ごき)を弟子に従えて山岳地で修行したり、鬼神を使って金剛山と吉野の大峯山に橋を架けようとしたり、空を飛び回ったりする超人伝説が残されています。江戸時代、光格天皇から神変大菩薩(じんべんだいぼさつ)の諡号(しごう)(贈り名)が贈られました。

役行者の修行した金剛山、葛城山を望む御所市茅原(ちはら)が役行者の出生地とされます。現在その地には役行者開基と伝わる吉祥草寺(きっしょうそうじ)があります。平安時代には理源大師聖宝(りげんだいししょうぼう)がこの寺を再建し、広大な境内に49の子院を擁する大寺院として隆盛を極めました。

南北朝時代に兵火で全て焼失しましたが、本堂は室町時代前期の再建と伝えられます。開山堂には等身を超える木造の役行者三十二歳像・前後鬼坐像(ざぞう)が祀(まつ)られています。

役行者に縁の深い行事が県指定無形民俗文化財「金峯山寺の蓮華会(れんげえ)(蔵王堂の蛙(かえる)とびと奥田の蓮(はす)取り)」です。吉野町の同寺も役行者の開基で、世界遺産。毎年7月7日、役行者の母白専女(しらとうめ)が住んだとされる大和高田市奥田にある蓮池で蓮を刈り取り、これを同寺の蔵王堂に運び、本尊の木造金剛蔵王大権現(だいごんげん)などに供えます。

吉祥草寺で毎年1月14日に行われる雌雄一対の豪壮な左義長(さぎちょう)が「茅原のトンド」です。1300年を超える歴史を伝える県指定無形民俗文化財。修験道寺院の修正会(しゅしょうえ)と農村行事が結びついたトンドをぜひご覧いただきたいと思います。(奈良まほろばソムリエの会会員 福岡康浩)

【吉祥草寺】
(住所)御所市茅原279
(交通)JR玉手駅から徒歩約10分、近鉄御所駅からバス「茅原」下車すぐ
(本尊)不動明王を中心とする五大明王
(拝観)境内は自由
(駐車場)無料
(寺務所)0745・62・3472


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