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関係人口(つながり住民)の増加めざす吉野町の取り組み/奈良新聞「明風清音」第27回

2019年10月28日 | 明風清音(奈良新聞)
奈良新聞・毎週木曜日掲載の随想欄「明風清音」に寄稿している。本年(2019年)10月17日(木)付で掲載されたのは「吉野町のつながり力」。「つながり住民吉野」登録制度などで「関係人口」を増やしつつある吉野町の取り組みを、『驚きの地方創生「木のまち・吉野の再生力」』(扶桑社新書)を引用しながら紹介する、という趣向である。ある程度は知っていたが、こんなに多彩な取り組みが行われていたことには舌を巻いた。では、全文を紹介する。

蒲田正樹著『「木のまち・吉野の再生力 山で祈り、森を生かし、人とつながる」』(扶桑社新書)を読んだ。帯には「今も昔も、復活・打開のヒントがいっぱい!」。なお、ここでいう吉野とは吉野町のことだ。

著者の蒲田氏に吉野町を紹介したのは、金峯山寺長臈(ちょうろう)の田中利典(りてん)師である。師のブログ「山人のあるがままに」には「少々、私もお手伝いをさせていただいた吉野町を紹介する新刊が発売となりました」「吉野をテーマにした文学・歴史書、観光ガイドを踏まえながら、今の吉野の取り組みを様々な視点から取り上げる新しいスタイルの地方創生本」「扶桑社の地方創生本の第4弾です。第1弾と第3弾が私の住む綾部市(京都府北部)を紹介した本で、この本との出会いが、吉野本の制作につながりました」。

目次を紹介すると▽プロローグ(人を再生させる「吉野」のふしぎ)▽第1章吉野の歴史▽第2章世界遺産登録でつながりを見直す▽第3章木のまち吉野▽第4章吉野「伝える力」▽第5章吉野の現場力▽長いあとがき(吉野は再生の地/人知を超えた力の働き)。

この本で私が初めて知ったのが「つながり住民吉野」登録制度だ。吉野町の理解者やファンを増やそうという制度で、いわゆる「関係人口」を増やすための施策である。

総務省のサイトによると「『関係人口』とは、移住した『定住人口』でもなく、観光に来た『交流人口』でもない、地域や地域の人々と多様に関わる人々のことを指します。地方圏は、人口減少・高齢化により、地域づくりの担い手不足という課題に直面していますが、地域によっては若者を中心に、変化を生み出す人材が地域に入り始めており、『関係人口』と呼ばれる地域外の人材が地域づくりの担い手となることが期待されています」。さしずめ本書は、吉野町における「つながり」の事例を紹介した本といえる。

主な事例を拾うと、鬼フェスin吉野/木のまち吉野未来宣言/木育(もくいく)/森のようちえん/愛 学習机プロジェクト/木の駅プロジェクト/木桶(きおけ)仕込みプロジェクト/ライトセラピー/よしの木(ウッド)フェス/吉野杉・桧の木工展/ちょぼくブック/吉野杉の家/スマイルバスで行くディープな吉野の旅/花火特別列車/おはなしらんどカンブリア/ゲストハウス三奇楼(さんきろう)/上市スタンド(チャレンジショップ)/おかあさん食堂/ねじまき堂/木の子文庫/りゅうもんぶんこ えほんのへや/国栖地区まちづくり協議会/吉野スポーツクラブ…。

「愛 学習机プロジェクト」とは、中学3年間で使う学校の机(マイ机)を自分の手で組み立てるというもの。「三奇楼」は、観光客向けの宿泊施設であると同時に、地域住民のコミュニケーションの場である。6月には三奇楼の離れに宿泊できるコワーキングスペース(共同で仕事をする場所)「TENJIKU吉野」が併設された。お客は地元から頼まれたライトな「シゴト」をこなせば、無料で宿泊できるそうだ。

本書は役場が120冊購入し、9月の新学期に町内の全中学生に配付されたとか。地元の活動を地元の生徒が知ることは、愛郷心や誇りを持ついい機会になることだろう。皆さんにも、ご一読をお薦めしたい。(てつだ・のりお=奈良まほろばソムリエの会専務理事)
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