日本経済新聞関西経済面(2021.10.1付)に、星野リゾート代表 星野佳路氏へのインタビュー記事が出ていた。インバウンドの回復には、まだ時間がかかりそうだという。「Go To トラベル」については「再開する場合、複雑だった昨年の方法よりシンプルで持続可能な仕組みにすべきだ」と述べた。全文を以下に紹介する。
※トップ写真は奈良もちいどのセンター街(2013.8.8)。こんな日は戻ってくるのだろうか
「訪日客、完全回復25年ごろ」 万博、関西起点に地方周遊
星野リゾート代表 星野佳路氏
全国各地で宿泊施設を運営する星野リゾートの星野佳路代表は日本経済新聞のインタビューに応じ、新型コロナウイルス禍で消滅したインバウンド(訪日外国人)について「回復には時間がかかる」と述べた。「来訪者は来年から少しずつ戻り、大阪・関西万博が開かれる2025年ごろ、コロナ禍前の19年の水準を超えるぐらいがいい目標ではないか」との見通しを示した。
30年にインバウンド6000万人という政府目標には「アグレッシブ(積極的)すぎる。今の体制のまま達成することが現実的か、それがいいことかも含めて考える必要がある」と指摘。数値よりも大阪や京都、東京に偏在していたインバウンドの地方分散を重視すべきだと主張した。
コロナ禍の影響で閉館したホテルの運営を引き継いで京都に都市観光ホテルブランドの「OMO」を4月に2館開業。11月には京都・祇園にもう1館オープンする。だが、緊急事態宣言などで厳しい状況が続いてきた。
大阪・新今宮に来春開業する「OMO7」は予定通り工事が進む。「400室以上あるので22年は助走しながら稼働する部屋を増やしていく」方針だ。「万博開催時には大阪や京都から出雲や九州など地方に周遊する仕組みを考えたい」という。
同社の宿泊施設の稼働状況は、東京、京都など都市部と沖縄が厳しい一方、温泉地や青森、軽井沢、富士、出雲など自然が豊かな地域は順調。山口・九州の8月の客室稼働率はばらつきはあるが約8割で、10月の予約も約7割で推移している。
「感染拡大の第1~3波は予約が急減したが、ワクチン接種が進んだ第4波以降はキャンセルはあまり出ず予約も比較的安定している」といい、自宅から1~2時間圏内の地元客を積極的に取り込むマイクロツーリズムが功を奏している。
政府の観光需要喚起策「Go To トラベル」の再開については「時期を予想してもはずれるのでマイクロツーリズムの強化を続ける」としたうえで「再開する場合、複雑だった昨年の方法よりシンプルで持続可能な仕組みにすべきだ」と述べ、ワクチン・検査パッケージの有効な活用にも期待を示した。
また、季節によって繁閑の差が大きいため非正規雇用に依存してきた観光産業の体質改善の必要性を強調。休暇を取りながら働くワーケーションの推進に観光業界全体で取り組むことなどで繁閑の差を縮小して正規雇用を増やし、「地方の定住人口を増やす産業になる使命感を持たないといけない」と語った。(編集委員 宮内禎一)
※トップ写真は奈良もちいどのセンター街(2013.8.8)。こんな日は戻ってくるのだろうか
「訪日客、完全回復25年ごろ」 万博、関西起点に地方周遊
星野リゾート代表 星野佳路氏
全国各地で宿泊施設を運営する星野リゾートの星野佳路代表は日本経済新聞のインタビューに応じ、新型コロナウイルス禍で消滅したインバウンド(訪日外国人)について「回復には時間がかかる」と述べた。「来訪者は来年から少しずつ戻り、大阪・関西万博が開かれる2025年ごろ、コロナ禍前の19年の水準を超えるぐらいがいい目標ではないか」との見通しを示した。
30年にインバウンド6000万人という政府目標には「アグレッシブ(積極的)すぎる。今の体制のまま達成することが現実的か、それがいいことかも含めて考える必要がある」と指摘。数値よりも大阪や京都、東京に偏在していたインバウンドの地方分散を重視すべきだと主張した。
コロナ禍の影響で閉館したホテルの運営を引き継いで京都に都市観光ホテルブランドの「OMO」を4月に2館開業。11月には京都・祇園にもう1館オープンする。だが、緊急事態宣言などで厳しい状況が続いてきた。
大阪・新今宮に来春開業する「OMO7」は予定通り工事が進む。「400室以上あるので22年は助走しながら稼働する部屋を増やしていく」方針だ。「万博開催時には大阪や京都から出雲や九州など地方に周遊する仕組みを考えたい」という。
同社の宿泊施設の稼働状況は、東京、京都など都市部と沖縄が厳しい一方、温泉地や青森、軽井沢、富士、出雲など自然が豊かな地域は順調。山口・九州の8月の客室稼働率はばらつきはあるが約8割で、10月の予約も約7割で推移している。
「感染拡大の第1~3波は予約が急減したが、ワクチン接種が進んだ第4波以降はキャンセルはあまり出ず予約も比較的安定している」といい、自宅から1~2時間圏内の地元客を積極的に取り込むマイクロツーリズムが功を奏している。
政府の観光需要喚起策「Go To トラベル」の再開については「時期を予想してもはずれるのでマイクロツーリズムの強化を続ける」としたうえで「再開する場合、複雑だった昨年の方法よりシンプルで持続可能な仕組みにすべきだ」と述べ、ワクチン・検査パッケージの有効な活用にも期待を示した。
また、季節によって繁閑の差が大きいため非正規雇用に依存してきた観光産業の体質改善の必要性を強調。休暇を取りながら働くワーケーションの推進に観光業界全体で取り組むことなどで繁閑の差を縮小して正規雇用を増やし、「地方の定住人口を増やす産業になる使命感を持たないといけない」と語った。(編集委員 宮内禎一)