先日、思いがけない先輩から、思いがけないレターパックが届いた。
40余年も前、同じ化学会社の研究所でお世話になった美濃順亮氏からだ。すっと年賀状だけのやりとりで、はるか40数年の歳月が流れた。
懐かしい手紙に、一冊の本、小冊子、講演の資料が同封されていた。
○ 先ずは手に取った本の題名にびっくり、「蓮如の女性観と蓮能尼」(自照社出版)。でもその不思議は著書の「はじめに」を見て氷解した。「私は浄土真宗「真宗大谷派」の末寺で生まれ育ったものの、宗教に背を向けて理系の道を歩みました。・・・・」と。
先輩の実家がお寺さんであることは確か在職中にお聞きした覚えがあった。
○ また、小冊子「環境情報論」は大学の講座でのテキストだろうか。難解な文章だが生物多様性や森林生態系等の環境問題が〈人も生物の一員との認識〉の理念で語られていた。宗教論、環境論等、自分が興味・関心を抱く方向性に似た思いを感じた。
○ カラーコピーの資料は、『20世紀末に生を得て、21世紀に生きる「君たち」の世界を考える』と題した成人式の講演の別刷りで、郷土の若者への環境問題の啓蒙的な内容だ。
すべての資料に美濃さんの人柄、理念が凝縮されているように思えた。
著作の著者略歴から、お別れしてからの先輩の業績を知った。会社からアメリカへ研究留学し工学博士号をとられ、花王の取締役を務められた。その後も化学関連機関の委員や理事、大学教授などを歴任、活躍されておられたのだ。人格、お考え、能力すべてに尊敬できる先輩で、我が身を振り返り足元にも及ばない立派な方だ。ささやかな人生のわずかな一時でもご一緒出来たことを感謝している。
あの頃の研究室の様子が浮かんできた。同研究室の室長Aさん、Mさん、Hさんなどはどうされているのだろうか。美濃さんとは、プログラムの開発で赤坂のユニバックへご一緒したことなどを思い出す。また、新婚のころお宅へお邪魔しごちそうになった。塩を敷いてハマグリを温めた料理、サイフォンでコーヒーを入れていただいたことが珍しく、お子さんと庭の遊具に乗って遊んだことなどを鮮明に思い出した。
何より忘れられないことは、郷里の教職への転職に迷っていたときに、親身になって相談載って下さり、自分の気持ちを理解してくれたこと。転職は周囲の皆に反対された。賛成してくれたのは妻の親とこの先輩だけだった。
この年になり、尊敬する先輩にもう少しご指導いただいていたら、より豊かな別の人生を歩めたのかな・・・などと、一抹の寂しさも感じている。
先輩には、そのうち会津へもお出かけいただき、積もり積もった話をしたいと思っている。