この夏、数年ぶりに我が家のウマノスズクサへ産卵してくれたジャコウアゲハ、かなりの数が無事に蛹まで成長した。
木々の枝などで蛹化した個体は見つけ難いが、家の外壁にはいくつも見つかった。
現在確認の個体は計10個、そのうち外壁に6体、ガス管に1個,スノーダンプの柄に2個 が見つかった。また、偶然トウカエデのずいぶん高い枝に1個を見つけた。
トウカエデに
スノーダンプの柄に
外壁に ガス管に
昨日、蛹の体に穴が空いているのを見つけた。
来春の羽化をこころ待ちにしていたが、その他のサナギを確認すると、3つに同じような穴が空いていた。
破られたサナギ 頭部も囓られている
ヤドリ蜂だ。それは、よく見かけていたアゲハやキアゲハの小さい丸い穴と違って、広範囲に破れている感じだった。
交尾を済ませたヤドリ蜂のメスは、宿主のジャコウアゲハの幼虫に卵を産み付けた。卵から孵ると、宿主の幼虫が死なない程度に宿主の体を食べて育つ。
終令に育った宿主が蛹になると、蛹の中身をすべて食べた後、蛹になりやがて羽化した後、空になった蛹の殻に穴を開けて出てくる。
春なら分かる気もするが、この寒い冬の時期に生まれたハチはどう冬を越すのだろうか。いや、気づかずにいただけで、蛹化と同時くらいに蜂は飛び立っていったのだろうか。
とすれば、今変化のないさサナギたちは来春大空を舞うのだろう。
前にも書いたが、今年我が家に長く滞在したメスの産卵数は、5~60は越えたと思われる。でも、羽化できるのは約2割と言われている。
日高敏隆の名著「昆虫という世界」には、独特の名文で変態の神秘が書かれている。
蛹というしろもろについて、
《未完成なまま生きていくための装備を施した幼虫たちは、いよいよ真の完成に達する前に、例の「サナギ」という奇妙なる姿をとる。
生きているのだがほとんど動かず、食物も食べず、一見したのでは生きものだか精巧な彫り物なのか分からないこのサナギというしろもの》
《一見卵のようなサナギという時期がはさまるために、昆虫の変態は難解至極なものになってしまった。》・・・ などと書いている。
穴の空いた無惨なサナギの殻を机に置いてルーペでのぞいた。
無惨だ
正に、奇妙な彫り物だし、あらためて虫の世界の全てが神秘に満ちたものと認識させられた。
〈参考〉 ジャコウアゲハの蛹化 2019.9.3
https://blog.goo.ne.jp/tosimatu_1946/e/4cc86b7932438351a4db870d1395968f