最近読んだ本の中に福岡伸一著「生物と無生物のあいだ」「世界は分けてもわからない」の2冊がある。

「生物と無生物のあいだ」の方は’07年にベストセラーになった過去があるので、もう読んだ人も多いとは思うけど、「生命とは動的平衡状態にある流れである。」というのがテーマだ。
しかし、何も難しく考える必要はなく、「野口英世って日本では偉人伝の中で紹介され、お札にもなっているけど、アメリカでは引田(プリンセス)天功やパフィ以下程度の有名人なの?」って感じのツカミから始まって、科学者達の「ひらめきや発想」の素晴らしさと、それに伴う「苦悩や闘い」について興味深く読み進んでゆく内に、テーマについても理解が出来るような展開になっている。
「世界は分けてもわからない」の方は科学界や芸術界での出来事を例に挙げ、「世界は分けなければ理解できない。」しかし「分けても本当に理解したことにはならない。」という、一種のジレンマがテーマになっている。
だが、コチラも難しく構える必要はない。終局に結びつけるための”伏線”が各所に散りばめられているうえ、特に8章以降のマーク・スペクター事件に関する記述は上質なサスペンス小説並の出来なので、ワクワクしながら読み進んでいけるから安心して欲しい。
この2冊、共に文学的な描写の中で展開しているので、科学関連の本にありがちな「味気なさ」という感じが無く、ボクのような知識のない人間でもすんなりと入れ、一気に読むことができた。
これから読む人に「さてどちらを先に読むべきか?」と聞かれた場合、共に読んで「コレはオモシロい!」と言っていたウチの嫁さんにも共通する意見として、より読みやすい「世界は分けてもわからない」の方をお薦めしたい。
ところで、ボクが福岡伸一さんという存在を知ったのは、かなり遅くて、「博士の異常な鼎談」という東京MX(東京ローカル?)の番組に出演しているのを見たのがキッカケだから、つい最近のことだ。(実際に見たのはYou Tubeだけど…。)
http://www.youtube.com/watch?v=rNKOLisKVLc&feature=PlayList&p=8D31FD1BE1D4EB05&playnext=1&playnext_from=PL&index=8(←見たい人はこのアドレスを)
その番組内で、興味を持ったのは「コラーゲンを積極的に摂取しても、皮下に届く確率は、ほぼゼロ」という点だった。
ここでピンときた。そう言えば、この福岡伸一さんは少し前の関西ローカルの「ビーバップ ハイヒール」というTV番組に出演していたアノ先生だったのだ。
http://www.youtube.com/watch?v=I7ZwXZ69two(←見たい人はこのアドレスを)
そして、その番組内でも「コラーゲンが細胞と細胞の間でクッションになっているのは確かだが、コラーゲン入り食品を沢山食べても直接ルートはなく、肌のコラーゲンは増加しない。」と言っていた。
以前から「コラーゲンなんて、食べたところで直接吸収されないんだろうな…。」と薄々思っていたので、心のモヤモヤを晴らしてもらうために、更には、元々この手の「身も蓋もない話」に、ついつい引き込まれてしまう性格も手伝って、食い入るように話を聞いていた。その内容は、理系の人で特に生物学なんかの勉強をしていた人にとっては当たり前の知識らしいけど、そんな素養のカケラもない、バカなボクにとっては、この二つの番組内での話は自分を納得させるのに余りあるほどだった。
で、肌に入らない理由は簡単だった。口に入ったコラーゲンは胃に到達すると、消化酵素が働いてバラバラになってアミノ酸に分解されるが、当然、消化された時点でコラーゲンの原型はなくなっている。そしてそのアミノ酸が血管を通って皮下の必要箇所に行き着いたときに、コラーゲンは初めて細胞内で必要量が作り出される仕組みになっているからだ。
したがって、食べたものがコラーゲンであっても、肉や大豆から採ったフツーのタンパク質であっても、胃の中では単なるタンパク質の一種として判断されるので、結果は同じということになる。そして、現代においては、よほどの偏食家でもない限り、普段の食事でタンパク質は充分に摂取できているということである。
では、コラーゲンを含むタンパク質全般を多く摂取したらどうなるのか?。残念ながら、コラーゲンの必要量は我々の体が判断するものであるから、自分の思いを込めて大量摂取したところで皮下では増えてはくれないし、増やすための触媒みたいな物質も存在しないということだ。だから、要するにコラーゲンの積極摂取は生物学的に見て無意味ということだった。
このように食べた物から直接摂取されないシステムは、病気や障害から身を守るために、情報として我々の遺伝子に組み込まれている。
もし、仮にこのシステムがなければ、植物由来であっても動物由来であっても、他の生物から摂取した物(この場合はコラーゲン)がダイレクトに皮下組織に行ってしまうので、拒絶反応が起こって「お肌のケア」どころでない、免疫上の大きなトラブルが起こってしまうということだ。
ただし、コラーゲンのように消化されて分解される物質ではなく、例えば、実効性が臨床データで確認されている「飲み薬」のように、分解されずに薬効成分が吸収される物質も、ちゃんと存在するし、福岡伸一さんも「全てにおいてダメだ」とは言い切っていないので御安心を。
「ビーバップ ハイヒール」の番組内では、ハイヒールのリンゴさんが、それでも「効果がある。」と食い下がっていたが、「それは気のせいです。」みたいな感じで一蹴されていた。この「気のせい」というのを福岡伸一さんの話で確認すると、それはいわゆる「プラセボ効果(プラシーボ効果とも言う)」というヤツのことらしい。
このプラセボ効果の話もオモシロい。
ある病気の患者さんに対して、小麦粉なんかを練っただけの薬効のない「疑似薬」を与えても、一定の効果があることが認められるのが、そのプラセボ効果というヤツだが、実際に実験すると、被験者全体の3~4割の人が「何らかの効果があった」と報告するらしい。更に「新薬だ。」と言った場合の方が「一年前に発売された薬だ。」と言った場合よりも効果が上がるというのだ。何もコレはオカルトな話では無く、人間の傷病からの回復には心理的な要素がかなりあるという裏付けなのだ。
結局、体内のバランスが保たれているから我々人間は「生きている」ワケだから、普段から偏食をせず、バランスの取れた食事を心掛け、ストレスの少ない生活を送ることで、心身共にバランスのとれた状態にしておくのが一番の美容&健康法だということだろう。とすれば、ある種のサプリやコラーゲンのおかげで、ストレスが減って”心が健康”になる人が世の中に居るのなら、「それもアリなのかな…」とも思えてくる。と、考えていく内に、コレまたジレンマに陥ってしまう…。ボクレベルでもそうなんだから、きっと科学や医療にはそれが付き物なんだろう。
……オマケ映像……

(動き始めた秋 …六甲山にて)

「生物と無生物のあいだ」の方は’07年にベストセラーになった過去があるので、もう読んだ人も多いとは思うけど、「生命とは動的平衡状態にある流れである。」というのがテーマだ。
しかし、何も難しく考える必要はなく、「野口英世って日本では偉人伝の中で紹介され、お札にもなっているけど、アメリカでは引田(プリンセス)天功やパフィ以下程度の有名人なの?」って感じのツカミから始まって、科学者達の「ひらめきや発想」の素晴らしさと、それに伴う「苦悩や闘い」について興味深く読み進んでゆく内に、テーマについても理解が出来るような展開になっている。
「世界は分けてもわからない」の方は科学界や芸術界での出来事を例に挙げ、「世界は分けなければ理解できない。」しかし「分けても本当に理解したことにはならない。」という、一種のジレンマがテーマになっている。
だが、コチラも難しく構える必要はない。終局に結びつけるための”伏線”が各所に散りばめられているうえ、特に8章以降のマーク・スペクター事件に関する記述は上質なサスペンス小説並の出来なので、ワクワクしながら読み進んでいけるから安心して欲しい。
この2冊、共に文学的な描写の中で展開しているので、科学関連の本にありがちな「味気なさ」という感じが無く、ボクのような知識のない人間でもすんなりと入れ、一気に読むことができた。
これから読む人に「さてどちらを先に読むべきか?」と聞かれた場合、共に読んで「コレはオモシロい!」と言っていたウチの嫁さんにも共通する意見として、より読みやすい「世界は分けてもわからない」の方をお薦めしたい。
ところで、ボクが福岡伸一さんという存在を知ったのは、かなり遅くて、「博士の異常な鼎談」という東京MX(東京ローカル?)の番組に出演しているのを見たのがキッカケだから、つい最近のことだ。(実際に見たのはYou Tubeだけど…。)
http://www.youtube.com/watch?v=rNKOLisKVLc&feature=PlayList&p=8D31FD1BE1D4EB05&playnext=1&playnext_from=PL&index=8(←見たい人はこのアドレスを)
その番組内で、興味を持ったのは「コラーゲンを積極的に摂取しても、皮下に届く確率は、ほぼゼロ」という点だった。
ここでピンときた。そう言えば、この福岡伸一さんは少し前の関西ローカルの「ビーバップ ハイヒール」というTV番組に出演していたアノ先生だったのだ。
http://www.youtube.com/watch?v=I7ZwXZ69two(←見たい人はこのアドレスを)
そして、その番組内でも「コラーゲンが細胞と細胞の間でクッションになっているのは確かだが、コラーゲン入り食品を沢山食べても直接ルートはなく、肌のコラーゲンは増加しない。」と言っていた。
以前から「コラーゲンなんて、食べたところで直接吸収されないんだろうな…。」と薄々思っていたので、心のモヤモヤを晴らしてもらうために、更には、元々この手の「身も蓋もない話」に、ついつい引き込まれてしまう性格も手伝って、食い入るように話を聞いていた。その内容は、理系の人で特に生物学なんかの勉強をしていた人にとっては当たり前の知識らしいけど、そんな素養のカケラもない、バカなボクにとっては、この二つの番組内での話は自分を納得させるのに余りあるほどだった。
で、肌に入らない理由は簡単だった。口に入ったコラーゲンは胃に到達すると、消化酵素が働いてバラバラになってアミノ酸に分解されるが、当然、消化された時点でコラーゲンの原型はなくなっている。そしてそのアミノ酸が血管を通って皮下の必要箇所に行き着いたときに、コラーゲンは初めて細胞内で必要量が作り出される仕組みになっているからだ。
したがって、食べたものがコラーゲンであっても、肉や大豆から採ったフツーのタンパク質であっても、胃の中では単なるタンパク質の一種として判断されるので、結果は同じということになる。そして、現代においては、よほどの偏食家でもない限り、普段の食事でタンパク質は充分に摂取できているということである。
では、コラーゲンを含むタンパク質全般を多く摂取したらどうなるのか?。残念ながら、コラーゲンの必要量は我々の体が判断するものであるから、自分の思いを込めて大量摂取したところで皮下では増えてはくれないし、増やすための触媒みたいな物質も存在しないということだ。だから、要するにコラーゲンの積極摂取は生物学的に見て無意味ということだった。
このように食べた物から直接摂取されないシステムは、病気や障害から身を守るために、情報として我々の遺伝子に組み込まれている。
もし、仮にこのシステムがなければ、植物由来であっても動物由来であっても、他の生物から摂取した物(この場合はコラーゲン)がダイレクトに皮下組織に行ってしまうので、拒絶反応が起こって「お肌のケア」どころでない、免疫上の大きなトラブルが起こってしまうということだ。
ただし、コラーゲンのように消化されて分解される物質ではなく、例えば、実効性が臨床データで確認されている「飲み薬」のように、分解されずに薬効成分が吸収される物質も、ちゃんと存在するし、福岡伸一さんも「全てにおいてダメだ」とは言い切っていないので御安心を。
「ビーバップ ハイヒール」の番組内では、ハイヒールのリンゴさんが、それでも「効果がある。」と食い下がっていたが、「それは気のせいです。」みたいな感じで一蹴されていた。この「気のせい」というのを福岡伸一さんの話で確認すると、それはいわゆる「プラセボ効果(プラシーボ効果とも言う)」というヤツのことらしい。
このプラセボ効果の話もオモシロい。
ある病気の患者さんに対して、小麦粉なんかを練っただけの薬効のない「疑似薬」を与えても、一定の効果があることが認められるのが、そのプラセボ効果というヤツだが、実際に実験すると、被験者全体の3~4割の人が「何らかの効果があった」と報告するらしい。更に「新薬だ。」と言った場合の方が「一年前に発売された薬だ。」と言った場合よりも効果が上がるというのだ。何もコレはオカルトな話では無く、人間の傷病からの回復には心理的な要素がかなりあるという裏付けなのだ。
結局、体内のバランスが保たれているから我々人間は「生きている」ワケだから、普段から偏食をせず、バランスの取れた食事を心掛け、ストレスの少ない生活を送ることで、心身共にバランスのとれた状態にしておくのが一番の美容&健康法だということだろう。とすれば、ある種のサプリやコラーゲンのおかげで、ストレスが減って”心が健康”になる人が世の中に居るのなら、「それもアリなのかな…」とも思えてくる。と、考えていく内に、コレまたジレンマに陥ってしまう…。ボクレベルでもそうなんだから、きっと科学や医療にはそれが付き物なんだろう。
……オマケ映像……

(動き始めた秋 …六甲山にて)