今回は道具ネタ。ダイワの最新ラインナップなら大丈夫だろうと思い、以前に、このブログで紹介した13ビーストマスター3000改は手放していた。しかし、シーボーグ500MJ-ATの大事なところでの巻切れに業を煮やして、久しぶりに「電動リール漂流記」が始まった。
■15フォースマスター■
シマノ製電動リールの良さはドラグフィーリングの良さであり、完全フカセ釣りに電動リールを導入して以降、12フォースマスター3000MKまでは代々をメイン機として使用してきた。
だが、15フォースマスター3000を入手した際には評価が激変した。あまりのフリー回転の悪さに「こりゃダメだ。」とすぐに手放し、それ以降はダイワの製品を使うようになって現在に至っている。
しかし、近頃はダイワ製品のドラグ特性他がボクのスタイルに合わないせいか、トラブルが多発していたので、またもやシマノ製電動リールの導入に食指が動きだした。幸い以前にベアリング・チューンは経験済みだし、今回も「それを施せば何とかなるだろう。」との思いがあった。
そんなタイミングで15フォースマスター3000の中古品を手に入れる事ができたため、早速、分解掃除&ベアリング調整を行おうとして右サイドパネルを開けてみると、「ビックリ仰天」だったのだ。
何とこのモデルは向かって左サイドの、シマノ特有の大径ベアリングは入っているものの、右サイドに有るハズのベアリングがレベルワインドを駆動するプラスチック・ギヤ盤の内側に入っていたのだ。
つまりはモデルチェンジごとにパワーアップするモーターに対応すべく、電動巻き上げ時のスムースさを優先するあまり、フリー回転時への配慮は無くなって、クラッチを切ると、右サイドはベアリングを介さずにプラスチックのパーツ同士が直接擦れ合う構造になっているという事だ。これではスムースなフリー回転は全く期待出来ない。
メーカーホームページ上の展開図ではそんな仕様にはなっていなかったので、この件をシマノのお客様相談窓口で問い合わせると、「展開図と実際は違う場合がある。」と言いつつ、ボクの見解は肯定されたので、間違いのない事実だ。
ついでに「これ以降に発売されたフォースやビーストの3000番は同じ構造なのか?」という質問をしたのだが、「それには答えられない。」との事だった。だが、個人でリールのメンテナンスを請け負う個人業者さんのホームページで、ピンク色のフォースマスター3000(限定仕様)や、17フォースマスター3000XPの分解画像を確認したところ、従来通りのプラスチック・ギア盤の外側にベアリングが装着されていた事から、右サイドのベアリング位置の変更は15フォースマスター3000の、初期モデルのみの仕様なのかも知れない。
■16プレイズ3000■
「やはりシマノ機の導入は絶版モデル以外は無理なのか?」と思っていたのだが、ふとメーカーのホームページ内の現行16プレイズ3000に目が行った。よくよく見ると、外観や仕様が12フォースマスター3000MKとそっくりなのだ。そしてYoutube内での動画でベアリング位置が確認できたので「これだったらイケるだろう。」と思い、これまた良いタイミングで2万円台中盤という、適価の中古品を手にするに至った。
●16プレイズ3000●
16プレイズ3000は、22フォースマスター3000の下位クラス扱いだ。従ってコストダウンの影響で金属パーツが減って、代わりにエンジニア・プラスチック化されている事と、ベアリング数が減っている。
とは言うものの、完全フカセでは最重要の、スプール支持部とレバルワインド駆動系の支持部には、ちゃんと両サイドにベアリングが入っているから合格だ。
●レベルワインド駆動部のベアリング●
最新のHAGANEボディと比較すると、エンジニア・プラスチック・ボディの剛性は落ちるだろうが、昔から採用されてきた素材であるから、完全フカセ・ユースでは全く問題は起きないだろう。逆にその恩恵で重量が685gと軽量で、最新モデルよりも110gも軽いし、シーボーグ500MJ-AT~600MJとの差は300g前後となり、更に広がる。
肝心要のドラグ性能だが、これも手抜きは無くてカーボン・ドラグワッシャーが5枚と、シマノ製品はドラグケースギヤの裏にもカーボン・ドラクワッシャーが1枚入るので、5+1の組合せになっている。
●プレイズ3000のドラグ構成●
最大値は15kgで、完全フカセでのハリスの使用範囲内では十分であり、発売当時「MUTEKIドラグ」と称していた12フォースマスター3000MKや13ビーストマスター3000と構成が同じだ。カーボン・ドラグワッシャー自体も同じ単価(¥605)の物が採用されているから、特に謳ってはいないが、全く同じ物だと思われる。このドラグ組はボク自身が実釣で何度も体験済みであり、高評価をしているドラグなので安心して使用出来るだろう。
また、モーターも3000MKと同じ、旧型のMUTEKIモーターが採用され、それによる最高速も分速190mなので、まずまずの数値が出ている。
よくよく考えてみると、6~7号ライン+8~10号ハリス程度の使用前提であれば、トータルスペックは、ほぼド真ん中なのかも知れず、オーバースペックで巻き切ってしまうよりは賢明な選択なのかも知れない。
■分解方法■
分解方法はこのブログでは役不足なので、実際にやってみたい人は、Youtube内のDDM修理工房の
https://www.youtube.com/watch?v=GYoI0F8AQO8
https://www.youtube.com/watch?v=-MfkN4SNQ68
及び、メーカーの展開図&パーツリスト
https://www.shimanofishingservice.jp/parts_price.php?scode=036209
を確認して欲しい。
■ベアリング・チューン■
実際に分解を進めてゆくと、心配だった右サイドのベアリングはプラスチック・ギア盤の外に装着されていて、一安心。
●指しているのが、右サイドのベアリング●
この構造は、以前にこのブログで紹介した13ビーストマスターと同じなので、フリー回転性能を高める事が可能だ。
そして、左サイドの大径ベアリングをチェック。
ドライバーの先で回してみる
回してみると、高粘度気味のグリス?が封入されていたので、まずはこれのグリス抜きを施す。
洗浄にはパーツクリーナーを使用するが、リール修理全般に「プラスチックやゴムにも使用可」なタイプを選ばないとダメだ。
●AZのゴム・プラスチック対応パーツクリーナー●
外してパーツクリーナーに漬け込む方法ではなく、面倒なので直接吹付けたが、モーター軸にもローラークラッチが入っているので、噴射し過ぎるとそれに塗布されたグリスまで落としてしまうから、注意が必要だ。
吹付け後は乾くまで放置する。
乾いた後はオイルを注入するが、サラサラ過ぎるオイルは超回転が望めるものの耐久性が無く、耐久性があるオイルは粘度が高くて抵抗が掛かるジレンマがあるので、「どこで折り合いをつけるか」だが、「高浸透」「水置換」「高潤滑」に加えて「ある程度の耐久(持続)性」を求めてボクが選んだのが、ワコーズのメンテルーブとAZのCKM-001であり、ベアリングへの注入全般で愛用している。
●ワコーズのメンテルーブ●
●AZのCKM-001●
●今回はメンテルーブを注入●
注入は大径ベアリングの2~3箇所に短くシュッと吹き付け、ベアリングのシールド脇から染み込んでゆくのを確認し、指で回して回り具合と音でオイルの入り具合を確かめる。
逆の右サイドのベアリングは簡単に外れるので、ビニール袋に入れてパーツクリーナーを吹きかけてグリスを除去し、乾くのを待ってから組戻して大径ベアリングと同じ要領でオイルを吹き入れる。
●右サイドのベアリング●
続いてレベルワインド部に厚く塗られたグリスをパーツクリーナーで洗浄し、乾かしてからオイルを注入。
●レベルワインド部●
レベルワインド部周辺は、サラサラのオイルの方がより動きが良くなるし、使用中も外側からオイルの注入が可能なので、純正のオイルを使用している。
■ローラークラッチ■
プレイズ3000はコストカットのため、ハンドル軸周りにベアリングは導入せず、プラスチック・ブッシュが採用されている。
●プラスチック・ブッシュ●
電動リールなので、最終局面で初めてハンドルを回すだけだから、必要ないと判断した場合は、このまま純正状態で組戻すことになるが、ノーマルだとやや重い手巻時のフィーリングを改善したければ、プラスチック・ブッシュに代わって上位モデルに採用されているローラークラッチに換装する手がある。
●15フォースM用・部品No,0140●
●左=ローラー・クラッチ、右=プラスチック・ブッシュ●
●ピッタリ入る●
ローラー・クラッチはワンウェイ・クラッチとも言い、文字通り一方向にしか回らず、方向性ががあるので、正転方向に回せるよう、向きを間違えずに装着する事。そしてクラッチの内部に入るチューブも外径が違うので交換の必要がある。
●15フォースM用・部品No,0140●
このチューブとローラー・クラッチに純正グリスを塗ってからハンドル軸に通し、突起部をドラグ押さえ板の溝に入れて固定する。
●インナーチューブの突起●
しかし、元から入っていたチューブとは全長が1mm程度違うので、そのまま組み戻すとドラグが緩まなくなる。
●左が純正のチューブと1mm厚ワッシャー●
対処するには1mm削るか、サラバネ(パーツNo,0020)左のドラグ座金(パーツNo,0021)を本来の厚さ1mmから薄い物に変更するかだが、AMAZONで購入した外径15mm、内径8.5mm、厚さ0.5mmの座金(ワッシャー)に変更してみると、ウマく収まった。
最後に、以前にシーボーグで使用していた社外品のボールベアリング入りハンドルノブが余っていたので、それに換装して出来上がり。
●自分仕様のプレイズ3000改●
因みに今回の16プレイズ3000と以前に紹介した13ビーストマスター3000以外に、12フォースマスター3000MKも、ほぼ同じ内部構造なので、同じ方法でフカセ・チューンが可能だ。13プレイズ3000も同様なのだが、モーターとドラグの能力が落ちるので、無理に求める必要はないと思う。
残念な事に16プレイズ3000以外は販売終了品であるため現在は中古購入しか選択肢が無く、しかもメーカー修理までもが終了になっている。だが、ICモジュール等の専用パーツ以外であれば現行モデルから流用可能なパーツも多いので、整備法を覚えれば自分だけのフカセ仕様に改良して楽しむ事が出来るだろう。また、少し内部構造は違うが、右サイドのベアリング位置が同じであれば現行品であっても同様にチューン出来るハズだ。
但し、ベアリングのグリス?を抜いて粘度の低いオイルを入れるという事は、油膜の持続性に問題があるため、メンテのサイクルが短くなるのは当然だ。これが面倒だと思う人はベアリングの焼付き等、故障発生の原因になるので、ヤメにしておいた方が良い話だという事を理解して欲しい。
■仕上がりは上々■
組戻し後は最終チェック。指で弾いてもビュンビュン回るのでフリー回転は合格。ラインを巻いた後に、試しに600MJとライン同士を繋いで綱引きをしてみた。
●勝敗は?●
何と、新品の実売価格+追加パーツ代を含めても半額以下の16プレイズ3000改が先に回り出すという結果になった。
後は実戦投入でのドラグ・チェック等を待つのみだが、生憎フィールドが玄達瀬に変わる時期であり、イレギュラーな釣行がない限り実戦投入は見送り状態になる。改良の合否はまだ先になるが、追ってお伝えしたいと思う。
いつもながらだが、今回の電動リールの他、ロッドを含めてメーカー側の開発者やテストする立場の人に完全フカセへの深い理解がないのか、我々素人側がこんな工夫をしなくてはならない現実には、残念な思いで一杯になる…。
最後に、こんな話題のお決まり文句で申し訳ないが、道具の改造や調整をメーカー側以外の人間が行う事は、保証を受けられなくなる事にも繋がるので、今回の記事を参考に実践する場合は、あくまでも自己責任で行う事!。
結果、起こったトラブルについては当方の責任ではありませんので、その点はご理解を。