子供に読んで欲しい本は色々あって、選ぶのに迷うが、司馬遼太郎氏のファンであるボクからすれば、第一に「二十一世紀に生きる君たちへ(司馬遼太郎著)」を挙げたい。

この本には「二十一世紀に生きる君たちへ」と「洪庵のたいまつ」という、二つの話が入っている。それぞれが大阪書籍の小学6年生と5年生の国語教科書にも採用されていた(今もかな?)もので、司馬さんが小学生向けに書いたのはこの2編しかないので大変貴重な作品だ。
「二十一世紀に生きる君たちへ」は、これから未来を担う子供達に対しての、司馬さんからのメッセージで、自然と共生し、「自分に厳しく、相手には優しい」自己を確立するすることを説き、「何をしなければならないか」ということをテーマに書かれている。
「洪庵のたいまつ」は江戸時代の鎖国政策という暗闇の中、世界に向けて、たった一つだけ空いた小さな穴から差し込む光であった蘭学を、自ら「適塾」を開いて塾生達に伝え、明治維新の原動力となる人材を育成した、緒方洪庵を通じて、「学ぶとは何か」を説き、「何の為に生きるのか」ということをテーマに書かれている。
共に、司馬さんが小学生の、主に高学年に向けて優しく問いかけるように書いているが、本自体は挿絵代わりに綺麗な写真が挿入されていて、文字は大きく、漢字にはカナがうってあるので、理解力のある子供や、偉人伝なんかを読み始めた子供なら3、4年生でも大丈夫だと思う。内容は大人のボクが読んでも感動するくらいの作品であり、親子共々読めるので、かなりお薦めである。
上記作品が書かれた年から20年が経った今年、「未来をつくる君たちへ」という本が発刊された。

11月中旬に、NHKの「プロジェクトJAPAN」という番組の中で3回シリーズとして放映された内容を本にしたモノなので、それを見た人もいるかとは思う。
本には、司馬さんの作品の中から選んだモノを題材に、立花隆氏、関川夏央氏、松本健一氏の3人が小、中学生に対して行った講演の内容が収められている。
関川夏央氏は「坂の上の雲」の中に出てくる「正岡子規」をとりあげ、「人に思いを伝えるにはどうすればよいのか」ということを、松本健一氏は「菜の花の沖」の主人公である「高田嘉兵衛」をとりあげて「絶対に諦めない心」を説いている。
そして立花隆氏がとりあげたのが、上記の「二十一世紀に生きる君たちへ~洪庵のたいまつ」だ。
立花隆氏は、司馬さんがこの本を書いた1989年に感じていた未来とは少し違った様相になっていることを指摘している。はたして司馬さんが書かれていたような「輝かしいもの」になっているのかと…。
いまの時代は二十一世紀の初頭だが、二十世紀に起きた環境問題や、国の借金といった重い荷物を背負ってヨタヨタと歩いている。もしかしたら今後はもっと重苦しい世の中になるかも知れない。そんな世の中になっても生きていくことが出来るように、あらかじめ答えの決まっている学校での勉強だけでなく、「現実の社会での変化に対応した『正解が判らない問題にも、自分なりの答えを出して行動する力』をつけなくてはならない。」と説いている。
続いて立花隆氏はインターネットで世界と繋がっていながら、外の世界を見ようとしない現在は、江戸期、戦中戦前期に次ぐ第3の鎖国時代だと言っている。そこでとり上げるのが「洪庵のたいまつ」だ。そして、「情報を得ることがいかに重要か」ということについて語ってゆく…。
この「未来をつくる君たちへ」は、「二十一世紀に生きる君たちへ~洪庵のたいまつ」よりも、やや対象年齢が上で、小学校6年生~中学生にかけてくらいに読んでもらうと丁度良いと思う。多感な時期の子供達にとっては、将来に不安を持ち、迷った際に、心の小さな指標の一つになると思うので、これも時期が来た子供達には是非読んでもらいたい一冊だ。
特に立花隆さんの書いているところは、さすがにあの田中角栄を追い込むきっかけを作ったジャーナリストなだけあって、切り口は鋭い。だから、我々大人達が読んでも「ウ~ん」と唸らされてしまうし、読んで感じる部分も多い。
今後の日本を背負う人達は、当然我々世代が現在育てている子供達の世代だ。立花隆氏が指摘している彼らにとっての負担は、二十世紀後半にバブル景気に踊り、崩壊させて日本を借金まみれにさせ、使い捨て文化の中で大量消費を続け、環境破壊を振り返ることもなかった我々世代のツケだとも言える。そう思うと何とも辛いが、この本は我々世代に、「せめてもの償いに、子供達が、これからやって来る時代の変化に対応できる人間になれるように助力を惜しんではならない。」と、改めて自らの責務の重さに気付かせるキッカケとなる一冊でもあるのだ。

この本には「二十一世紀に生きる君たちへ」と「洪庵のたいまつ」という、二つの話が入っている。それぞれが大阪書籍の小学6年生と5年生の国語教科書にも採用されていた(今もかな?)もので、司馬さんが小学生向けに書いたのはこの2編しかないので大変貴重な作品だ。
「二十一世紀に生きる君たちへ」は、これから未来を担う子供達に対しての、司馬さんからのメッセージで、自然と共生し、「自分に厳しく、相手には優しい」自己を確立するすることを説き、「何をしなければならないか」ということをテーマに書かれている。
「洪庵のたいまつ」は江戸時代の鎖国政策という暗闇の中、世界に向けて、たった一つだけ空いた小さな穴から差し込む光であった蘭学を、自ら「適塾」を開いて塾生達に伝え、明治維新の原動力となる人材を育成した、緒方洪庵を通じて、「学ぶとは何か」を説き、「何の為に生きるのか」ということをテーマに書かれている。
共に、司馬さんが小学生の、主に高学年に向けて優しく問いかけるように書いているが、本自体は挿絵代わりに綺麗な写真が挿入されていて、文字は大きく、漢字にはカナがうってあるので、理解力のある子供や、偉人伝なんかを読み始めた子供なら3、4年生でも大丈夫だと思う。内容は大人のボクが読んでも感動するくらいの作品であり、親子共々読めるので、かなりお薦めである。
上記作品が書かれた年から20年が経った今年、「未来をつくる君たちへ」という本が発刊された。

11月中旬に、NHKの「プロジェクトJAPAN」という番組の中で3回シリーズとして放映された内容を本にしたモノなので、それを見た人もいるかとは思う。
本には、司馬さんの作品の中から選んだモノを題材に、立花隆氏、関川夏央氏、松本健一氏の3人が小、中学生に対して行った講演の内容が収められている。
関川夏央氏は「坂の上の雲」の中に出てくる「正岡子規」をとりあげ、「人に思いを伝えるにはどうすればよいのか」ということを、松本健一氏は「菜の花の沖」の主人公である「高田嘉兵衛」をとりあげて「絶対に諦めない心」を説いている。
そして立花隆氏がとりあげたのが、上記の「二十一世紀に生きる君たちへ~洪庵のたいまつ」だ。
立花隆氏は、司馬さんがこの本を書いた1989年に感じていた未来とは少し違った様相になっていることを指摘している。はたして司馬さんが書かれていたような「輝かしいもの」になっているのかと…。
いまの時代は二十一世紀の初頭だが、二十世紀に起きた環境問題や、国の借金といった重い荷物を背負ってヨタヨタと歩いている。もしかしたら今後はもっと重苦しい世の中になるかも知れない。そんな世の中になっても生きていくことが出来るように、あらかじめ答えの決まっている学校での勉強だけでなく、「現実の社会での変化に対応した『正解が判らない問題にも、自分なりの答えを出して行動する力』をつけなくてはならない。」と説いている。
続いて立花隆氏はインターネットで世界と繋がっていながら、外の世界を見ようとしない現在は、江戸期、戦中戦前期に次ぐ第3の鎖国時代だと言っている。そこでとり上げるのが「洪庵のたいまつ」だ。そして、「情報を得ることがいかに重要か」ということについて語ってゆく…。
この「未来をつくる君たちへ」は、「二十一世紀に生きる君たちへ~洪庵のたいまつ」よりも、やや対象年齢が上で、小学校6年生~中学生にかけてくらいに読んでもらうと丁度良いと思う。多感な時期の子供達にとっては、将来に不安を持ち、迷った際に、心の小さな指標の一つになると思うので、これも時期が来た子供達には是非読んでもらいたい一冊だ。
特に立花隆さんの書いているところは、さすがにあの田中角栄を追い込むきっかけを作ったジャーナリストなだけあって、切り口は鋭い。だから、我々大人達が読んでも「ウ~ん」と唸らされてしまうし、読んで感じる部分も多い。
今後の日本を背負う人達は、当然我々世代が現在育てている子供達の世代だ。立花隆氏が指摘している彼らにとっての負担は、二十世紀後半にバブル景気に踊り、崩壊させて日本を借金まみれにさせ、使い捨て文化の中で大量消費を続け、環境破壊を振り返ることもなかった我々世代のツケだとも言える。そう思うと何とも辛いが、この本は我々世代に、「せめてもの償いに、子供達が、これからやって来る時代の変化に対応できる人間になれるように助力を惜しんではならない。」と、改めて自らの責務の重さに気付かせるキッカケとなる一冊でもあるのだ。