昨年から、少しずつ触れてきた、高比重PEラインの話。
■太糸のジレンマ■
完全フカセでは一般的に、道糸は6号のフロロカーボン・ラインがメインで、太くて7号。我々のグループのように玄達瀬での一発狙い派であると、10号といった選択がされている。
撒きエサを使った釣りでは基本的に撒いたエサと同じスピードでサシエサを落とせれば、魚が警戒心を解き、サシエサを口にし易くなるので、水流抵抗の少ない細ハリスが有利となり、道糸も同様に細い方が風や上層の、潮の影響が減って、撒きエサが流れてゆく筋に仕掛けを送り込み易くなるので、有利になる。
勿論、自分の腕と相手の引きの強さを念頭に置いて道糸&ハリスの太さを選択しないと、痛い目に合うのが目に見えているので、無暗に細く出来ないのはこのブログでは何度も記してきた。喰わせる事と掛けて取り込む事はまさに「相反」、まさに「矛盾」なのだが、ボクの考えでは何らかの工夫で「魚の目の前」というか、「魚の浮上する位置」にサシエサを持って行ければ、少々ハリスが太くても魚は喰ってくるというのが持論だ。だが、問題は道糸だ。
例えば玄達瀬の釣りでは潮がブッ飛ぶと手に負えなくなり、どうにか撒きエサが効く浅場での釣りを余儀なくされる。特に太い道糸を使う我々のグループは体積の大きいライン故に、潮流に吹き上げられる影響を真っ先に受けるのだが、解禁中盤以降になると、玄達瀬の浅場にはチビ&小マサが多く、10号のフロロカーボン・ラインを使用するのは本来、10号以上のハリスを使いたい事と、道糸自体の根ズレを考えての事なのに、ただの幼児虐待となってはフラストレーションが溜まる一方となる。
だが、ある程度水深のある大型の居着きそうなポイントを諦めて移動する前に、「他に良いアプローチが出来ないか?」と、思い巡らせた末に至ったのが、PEラインの導入だった。
■オードラゴン■
PEラインと聞くと、
「ナイロンでも比重がフロロカーボンより軽いのに、それよりも比重の軽いPEは使い物にならないのでは?。」と、思うかも知れない。
実際に比重を調べると、「フロロカーボン=1.78」「ナイロン=1.14」「PE=0.98」(よつあみH.P.調べ)なので、なるほど水より軽いPEラインは浮いてしまって、完全フカセ釣りにおいては使い物にならない。
しかし、繊維の世界は日進月歩。他素材との組み合わせで高比重を得ているラインが存在しており、その名をオードラゴンと言う。
このラインは、YGKよつあみ社から販売されており、比重が1.40になっている。
「何や、フロロカーボンよりも軽いやないか!。」と、ツッ込むのは早計だ。と言うのも、PEの強度を忘れてのツッ込みだからだ。
ボクがテストしたのは、3号の太さだが、今のところこれが一番太いサイズになり、ポンドテスト表示としては40LB(ポンド)になる。40ポンドと言えばフロロカーボン・ラインでいうところの12号相当になるので、額面通りだと玄達瀬でも使える強度になるが、本音を言えばもう少し余裕のある4号が欲しいところだ。
とにもかくにも、計算上では強度を確保していながらの3号なので、比重自体はフロロカーボンより軽くはあっても、急潮時では低い抵抗値で相殺され、それ以上にオツリが出るため、仕掛けの沈みや馴染みは逆転するのだ。
■実験結果■
実際に、現場に持ち込んだのは、昨年の玄達瀬の解禁後半からだった。以降、現場には毎回持ち込み、通常のフロロカーボン・ラインと平行に流して比較する事もよく行ったが、その結果は概ね良好だ。
昨年5回目の玄達瀬釣行時に試したのが最初だった。当日の潮流は100mあたり2分30秒を切る状態だったが、10号道糸が馴染まず苦労する中、チビ&小マサがメインながら、一時はオードラゴンにアタリが集中した。
次いで試した鷹巣沖では100mあたり4分40秒だったため、ヒラマサに対するアドバンテージはなかったが、オードラゴンには、一時はマダイのアタリが集中したので、当日の状況下では恐らく仕掛がフロロカーボン・ラインよりも深く入っていたのだと思う。
以降、釣行を重ねた結果、このラインがハマるのには境目があって、100mあたり5分程度までなら慣れ親しんだフロロカーボン・ラインの方がタナ取りし易く優位になるが、それ以上潮が速くなるにつれてオードラゴンの3号が優位になる事に気付かされた。
■弱点と特性■
但し、利点もあれば、逆の欠点もある。その一つとして、伸びが極端に少ないPEラインはショック吸収力がほとんどなく、負担がハリスに集中してしまう点が挙げられる。
その対策として、ショック吸収を負担するリーダーの装着は必須となるが、標準より長くとった方が「ショック吸収性」、「仕掛の馴染み」、「根ズレに弱いPE対策」として有利になる。だから、ボクの場合はハリスと同号数のフロロカーボン・ライン(リーダー)を12mとり、レベルワインドを通過し易いよう、最後の編み込みを小さめにした「最強と言われるPRノット」で連結する事で対策している。
気になる価格は300mで¥3700前後なので、フロロカーボン・ラインと変わらない。PEラインは表面がケバ立つようになると換え時と言われるが、前後に方向を入れ換えれば2倍使えるので、実質のコストは下がる。
使用時の違和感は少ないが、使い込むに従って表面のコーティングが剥がれて摩擦係数が上がり、スプール内に巻かれたライン同士で食い込み易くなったり、オマツリした際にほどき辛くなる。しかし、対策としてホームセンターで普通に市販されている、シリコン・スプレーを釣行前に吹きかければ、かなり改善される。
■今後の課題■
実際のところ、オードラゴンで取り込んだヒラマサは中マサ・クラスまでだ。秋に一度だけ大型ゲットのチャンスはあったが、伸びの無いラインである事を気にし過ぎて、攻めのやり取りが出来ずに、根ズレでバラしてしまった。だから、リーダーとハリスの負担だけで、「どこまでの大型と対峙できるか?」が、今後に本格採用となるカギを握っている。
他に問題が出てくるのかも知れないが、例えば急潮時に「このライン使用時でしか喰ってこない相手が居るように思えてならない」というのが、一緒に実験をした晴海丸の船長とボクとの共通意見だ。
「答えを得た。」とは、今のところ言い難い状況なので、実験はまだまだ続く…。
■太糸のジレンマ■
完全フカセでは一般的に、道糸は6号のフロロカーボン・ラインがメインで、太くて7号。我々のグループのように玄達瀬での一発狙い派であると、10号といった選択がされている。
撒きエサを使った釣りでは基本的に撒いたエサと同じスピードでサシエサを落とせれば、魚が警戒心を解き、サシエサを口にし易くなるので、水流抵抗の少ない細ハリスが有利となり、道糸も同様に細い方が風や上層の、潮の影響が減って、撒きエサが流れてゆく筋に仕掛けを送り込み易くなるので、有利になる。
勿論、自分の腕と相手の引きの強さを念頭に置いて道糸&ハリスの太さを選択しないと、痛い目に合うのが目に見えているので、無暗に細く出来ないのはこのブログでは何度も記してきた。喰わせる事と掛けて取り込む事はまさに「相反」、まさに「矛盾」なのだが、ボクの考えでは何らかの工夫で「魚の目の前」というか、「魚の浮上する位置」にサシエサを持って行ければ、少々ハリスが太くても魚は喰ってくるというのが持論だ。だが、問題は道糸だ。
例えば玄達瀬の釣りでは潮がブッ飛ぶと手に負えなくなり、どうにか撒きエサが効く浅場での釣りを余儀なくされる。特に太い道糸を使う我々のグループは体積の大きいライン故に、潮流に吹き上げられる影響を真っ先に受けるのだが、解禁中盤以降になると、玄達瀬の浅場にはチビ&小マサが多く、10号のフロロカーボン・ラインを使用するのは本来、10号以上のハリスを使いたい事と、道糸自体の根ズレを考えての事なのに、ただの幼児虐待となってはフラストレーションが溜まる一方となる。
だが、ある程度水深のある大型の居着きそうなポイントを諦めて移動する前に、「他に良いアプローチが出来ないか?」と、思い巡らせた末に至ったのが、PEラインの導入だった。
■オードラゴン■
PEラインと聞くと、
「ナイロンでも比重がフロロカーボンより軽いのに、それよりも比重の軽いPEは使い物にならないのでは?。」と、思うかも知れない。
実際に比重を調べると、「フロロカーボン=1.78」「ナイロン=1.14」「PE=0.98」(よつあみH.P.調べ)なので、なるほど水より軽いPEラインは浮いてしまって、完全フカセ釣りにおいては使い物にならない。
しかし、繊維の世界は日進月歩。他素材との組み合わせで高比重を得ているラインが存在しており、その名をオードラゴンと言う。
●オードラゴン3号(40LB)●
このラインは、YGKよつあみ社から販売されており、比重が1.40になっている。
「何や、フロロカーボンよりも軽いやないか!。」と、ツッ込むのは早計だ。と言うのも、PEの強度を忘れてのツッ込みだからだ。
ボクがテストしたのは、3号の太さだが、今のところこれが一番太いサイズになり、ポンドテスト表示としては40LB(ポンド)になる。40ポンドと言えばフロロカーボン・ラインでいうところの12号相当になるので、額面通りだと玄達瀬でも使える強度になるが、本音を言えばもう少し余裕のある4号が欲しいところだ。
とにもかくにも、計算上では強度を確保していながらの3号なので、比重自体はフロロカーボンより軽くはあっても、急潮時では低い抵抗値で相殺され、それ以上にオツリが出るため、仕掛けの沈みや馴染みは逆転するのだ。
■実験結果■
実際に、現場に持ち込んだのは、昨年の玄達瀬の解禁後半からだった。以降、現場には毎回持ち込み、通常のフロロカーボン・ラインと平行に流して比較する事もよく行ったが、その結果は概ね良好だ。
昨年5回目の玄達瀬釣行時に試したのが最初だった。当日の潮流は100mあたり2分30秒を切る状態だったが、10号道糸が馴染まず苦労する中、チビ&小マサがメインながら、一時はオードラゴンにアタリが集中した。
次いで試した鷹巣沖では100mあたり4分40秒だったため、ヒラマサに対するアドバンテージはなかったが、オードラゴンには、一時はマダイのアタリが集中したので、当日の状況下では恐らく仕掛がフロロカーボン・ラインよりも深く入っていたのだと思う。
以降、釣行を重ねた結果、このラインがハマるのには境目があって、100mあたり5分程度までなら慣れ親しんだフロロカーボン・ラインの方がタナ取りし易く優位になるが、それ以上潮が速くなるにつれてオードラゴンの3号が優位になる事に気付かされた。
■弱点と特性■
但し、利点もあれば、逆の欠点もある。その一つとして、伸びが極端に少ないPEラインはショック吸収力がほとんどなく、負担がハリスに集中してしまう点が挙げられる。
その対策として、ショック吸収を負担するリーダーの装着は必須となるが、標準より長くとった方が「ショック吸収性」、「仕掛の馴染み」、「根ズレに弱いPE対策」として有利になる。だから、ボクの場合はハリスと同号数のフロロカーボン・ライン(リーダー)を12mとり、レベルワインドを通過し易いよう、最後の編み込みを小さめにした「最強と言われるPRノット」で連結する事で対策している。
気になる価格は300mで¥3700前後なので、フロロカーボン・ラインと変わらない。PEラインは表面がケバ立つようになると換え時と言われるが、前後に方向を入れ換えれば2倍使えるので、実質のコストは下がる。
使用時の違和感は少ないが、使い込むに従って表面のコーティングが剥がれて摩擦係数が上がり、スプール内に巻かれたライン同士で食い込み易くなったり、オマツリした際にほどき辛くなる。しかし、対策としてホームセンターで普通に市販されている、シリコン・スプレーを釣行前に吹きかければ、かなり改善される。
■今後の課題■
実際のところ、オードラゴンで取り込んだヒラマサは中マサ・クラスまでだ。秋に一度だけ大型ゲットのチャンスはあったが、伸びの無いラインである事を気にし過ぎて、攻めのやり取りが出来ずに、根ズレでバラしてしまった。だから、リーダーとハリスの負担だけで、「どこまでの大型と対峙できるか?」が、今後に本格採用となるカギを握っている。
他に問題が出てくるのかも知れないが、例えば急潮時に「このライン使用時でしか喰ってこない相手が居るように思えてならない」というのが、一緒に実験をした晴海丸の船長とボクとの共通意見だ。
「答えを得た。」とは、今のところ言い難い状況なので、実験はまだまだ続く…。