中島ブラザーズ ”弟”の「外で遊ぼう!」

近頃は日本海で、ヒラマサを追ってばかり。よって磯釣りや渓流釣りは休止状態ですが…。

"20年版 完全フカセ・タックル 〜高比重PEライン編

2020-02-29 12:30:00 | 船釣りタックル&仕掛、戦略他
 昨年から、少しずつ触れてきた、高比重PEラインの話。

■太糸のジレンマ■

 完全フカセでは一般的に、道糸は6号のフロロカーボン・ラインがメインで、太くて7号。我々のグループのように玄達瀬での一発狙い派であると、10号といった選択がされている。
 撒きエサを使った釣りでは基本的に撒いたエサと同じスピードでサシエサを落とせれば、魚が警戒心を解き、サシエサを口にし易くなるので、水流抵抗の少ない細ハリスが有利となり、道糸も同様に細い方が風や上層の、潮の影響が減って、撒きエサが流れてゆく筋に仕掛けを送り込み易くなるので、有利になる。
 勿論、自分の腕と相手の引きの強さを念頭に置いて道糸&ハリスの太さを選択しないと、痛い目に合うのが目に見えているので、無暗に細く出来ないのはこのブログでは何度も記してきた。喰わせる事と掛けて取り込む事はまさに「相反」、まさに「矛盾」なのだが、ボクの考えでは何らかの工夫で「魚の目の前」というか、「魚の浮上する位置」にサシエサを持って行ければ、少々ハリスが太くても魚は喰ってくるというのが持論だ。だが、問題は道糸だ。

 例えば玄達瀬の釣りでは潮がブッ飛ぶと手に負えなくなり、どうにか撒きエサが効く浅場での釣りを余儀なくされる。特に太い道糸を使う我々のグループは体積の大きいライン故に、潮流に吹き上げられる影響を真っ先に受けるのだが、解禁中盤以降になると、玄達瀬の浅場にはチビ&小マサが多く、10号のフロロカーボン・ラインを使用するのは本来、10号以上のハリスを使いたい事と、道糸自体の根ズレを考えての事なのに、ただの幼児虐待となってはフラストレーションが溜まる一方となる。
 だが、ある程度水深のある大型の居着きそうなポイントを諦めて移動する前に、「他に良いアプローチが出来ないか?」と、思い巡らせた末に至ったのが、PEラインの導入だった。

■オードラゴン■

 PEラインと聞くと、
 「ナイロンでも比重がフロロカーボンより軽いのに、それよりも比重の軽いPEは使い物にならないのでは?。」と、思うかも知れない。
 実際に比重を調べると、「フロロカーボン=1.78」「ナイロン=1.14」「PE=0.98」(よつあみH.P.調べ)なので、なるほど水より軽いPEラインは浮いてしまって、完全フカセ釣りにおいては使い物にならない。
 しかし、繊維の世界は日進月歩。他素材との組み合わせで高比重を得ているラインが存在しており、その名をオードラゴンと言う。

●オードラゴン3号(40LB)●


 このラインは、YGKよつあみ社から販売されており、比重が1.40になっている。
 「何や、フロロカーボンよりも軽いやないか!。」と、ツッ込むのは早計だ。と言うのも、PEの強度を忘れてのツッ込みだからだ。
 ボクがテストしたのは、3号の太さだが、今のところこれが一番太いサイズになり、ポンドテスト表示としては40LB(ポンド)になる。40ポンドと言えばフロロカーボン・ラインでいうところの12号相当になるので、額面通りだと玄達瀬でも使える強度になるが、本音を言えばもう少し余裕のある4号が欲しいところだ。
 とにもかくにも、計算上では強度を確保していながらの3号なので、比重自体はフロロカーボンより軽くはあっても、急潮時では低い抵抗値で相殺され、それ以上にオツリが出るため、仕掛けの沈みや馴染みは逆転するのだ。

■実験結果■

 実際に、現場に持ち込んだのは、昨年の玄達瀬の解禁後半からだった。以降、現場には毎回持ち込み、通常のフロロカーボン・ラインと平行に流して比較する事もよく行ったが、その結果は概ね良好だ。
 昨年5回目の玄達瀬釣行時に試したのが最初だった。当日の潮流は100mあたり2分30秒を切る状態だったが、10号道糸が馴染まず苦労する中、チビ&小マサがメインながら、一時はオードラゴンにアタリが集中した。
 次いで試した鷹巣沖では100mあたり4分40秒だったため、ヒラマサに対するアドバンテージはなかったが、オードラゴンには、一時はマダイのアタリが集中したので、当日の状況下では恐らく仕掛がフロロカーボン・ラインよりも深く入っていたのだと思う。
 以降、釣行を重ねた結果、このラインがハマるのには境目があって、100mあたり5分程度までなら慣れ親しんだフロロカーボン・ラインの方がタナ取りし易く優位になるが、それ以上潮が速くなるにつれてオードラゴンの3号が優位になる事に気付かされた。


■弱点と特性■

 但し、利点もあれば、逆の欠点もある。その一つとして、伸びが極端に少ないPEラインはショック吸収力がほとんどなく、負担がハリスに集中してしまう点が挙げられる。
 その対策として、ショック吸収を負担するリーダーの装着は必須となるが、標準より長くとった方が「ショック吸収性」、「仕掛の馴染み」、「根ズレに弱いPE対策」として有利になる。だから、ボクの場合はハリスと同号数のフロロカーボン・ライン(リーダー)を12mとり、レベルワインドを通過し易いよう、最後の編み込みを小さめにした「最強と言われるPRノット」で連結する事で対策している。
 気になる価格は300mで¥3700前後なので、フロロカーボン・ラインと変わらない。PEラインは表面がケバ立つようになると換え時と言われるが、前後に方向を入れ換えれば2倍使えるので、実質のコストは下がる。
 使用時の違和感は少ないが、使い込むに従って表面のコーティングが剥がれて摩擦係数が上がり、スプール内に巻かれたライン同士で食い込み易くなったり、オマツリした際にほどき辛くなる。しかし、対策としてホームセンターで普通に市販されている、シリコン・スプレーを釣行前に吹きかければ、かなり改善される。


■今後の課題■

 実際のところ、オードラゴンで取り込んだヒラマサは中マサ・クラスまでだ。秋に一度だけ大型ゲットのチャンスはあったが、伸びの無いラインである事を気にし過ぎて、攻めのやり取りが出来ずに、根ズレでバラしてしまった。だから、リーダーとハリスの負担だけで、「どこまでの大型と対峙できるか?」が、今後に本格採用となるカギを握っている。
 他に問題が出てくるのかも知れないが、例えば急潮時に「このライン使用時でしか喰ってこない相手が居るように思えてならない」というのが、一緒に実験をした晴海丸の船長とボクとの共通意見だ。
 「答えを得た。」とは、今のところ言い難い状況なので、実験はまだまだ続く…。
 
 

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休刊

2020-02-22 12:30:00 | その他
 先週は釣行しておらず、よってネタなし。今週は休刊です。
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メダイを求めて東奔西走 ~その2

2020-02-15 12:30:00 | 船釣り・釣行記
今回も時間なし。

 7人分の鍋具材調達のため、メダイを求めて東奔西走の2回目。前回はホームグラウンドの舞鶴から西にある柴山だったが、今回は東の若狭大島から出港している庄栄丸さんに乗り込んだ。

●出港準備中の庄栄丸●


 晩秋から初春の期間に、この船は主にメダイ狙いで出港している。専門に狙うだけあって、安定した釣果が出ているようであり、その分期待を持っての乗船だった。
 釣法は天秤ズボ釣り、8人乗船という事も相まって、あまり好きではないスタイルだが、「近隣でメダイが数釣れているのはこの船だけ」だから贅沢は言えない。


●天秤ズボ・タックル●


 3m近いウネリが出る中、時間をかけて第一ポイントに入ったが、2投目でボクがイサギをゲットしてからは、ポツリポツリと周囲でもアタリが出始めた。
 ボクの釣り座の左右でも50cm級の小メダイがゲットされだしたが、ボクは、ハリ外れが一回のみで、焦りが出る中、少し仕掛けを手直しする事にした。
 ここまで全長4.5m、中間に編み込みでエダスを出した仕掛けを使用していたが、天秤に三又サルカンをダイレクトにつなぎ、そこに4mと1.5mのハリスを結んでみる事にした。そして、長い方にはサンマの切り身&オキアミ、短い方にはイカの短冊&オキアミを抱き合わせで装餌してみることにした。
 ここまで指示ダナではエサが盗られる一方だったので、それよりも5mタナを上げたが、状況は変わらなかった。
 次の設定では、63mで巻きエサを振り出して、3m巻き上げてもう一回振り出す。そして竿受けにセット。しかし、アタリは出ない。エサ盗りが多いので、インターバルを詰めて1分30秒後に、もう一回振り出し、3分での回収を考えていたが、竿を振り上げた後にサシエサの落ち方に変化を加えようと、ゆっくりと竿先を下げながら手持ちで送り込んでゆくと、途中で「グンッ!」と引き込むアタリを捉える事に成功した。
 しかし、そこからの走りがなく、竿にもたれかかるような動き動きしかないので、その動きに合わせてゆっくりと竿先を送ってやると、重みが増していったので、アワセを入れてみる事にした。ここでようやく魚が走り、手応えが竿全体に伝わった。

●中型メダイの走り●


 これまで周りで釣れていたサイズとは違う引きなうえ、ハリ外れをやらかした後なので、緊張感は高まったが、相手は中型であったために、大きな苦労はなく、無事に玉網に納まった。だが、船上にあがった時点で既にハリか外れていて間一髪の状況だった。

●70cm●


 7人分の鍋具材が調達出来た事もあって、安堵感は得られたが、釣りでの満足感を得るには次を狙わねばならない。
 自分なりに分析してみると、掛かったメダイは、短い方のハリスに掛かっていたので、長い方のハリスを3.5mに詰めてみる事にした。また、勝手な予測かも知れないが、メダイ振り出したマキエサを伝って潮下から群れとなって食い上がるというよりも、カゴが振られ、そこマから出たキエサに近い個体のみが反応していると思ったので、それをイメージしてサシエサの落ち込みを誘いを演出してみる事にした。
これが効果的で、その後は周囲が沈黙しがちな中、小メダイながら、アタリを拾えるようになったが、それらは、全て3.5mのハリスに掛かってきた。

●50cmクラス●


 但し、船長がポイント変更を行い、アンカーを降ろした直後の、数投内の交通事故的チャンスを捉えてのモノが殆どだった。それも誘った間にアタリがコツンと一回あるだけで、半信半疑でアワせると掛かるといった展開だった。しかも、喰い渋りの為に掛かりが浅く、当日得たアタリの半分はハリ外れでロストしていた。だが、結局、充分過ぎる量の鍋具材は得られたので大満足の1日だった。


 天秤ズボ釣りは本的に真下方向しか探れない釣りであるから、個人的には好みではない事は確かたが、制約のある中でも工夫次第で展開が変わるという事を久し振りに体験し、その面白さの一部が再確認出来たような感はある。
 そして、この日の展開から、「到着後の数投勝負」と判断して、僅か数投のみで移動を繰り返してくれた船長の姿勢には感銘した次第だ。

 
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メダイを求めて東奔西走 ~その1

2020-02-08 12:30:00 | 船釣り・釣行記
 今回は時間がなく、簡易版。

 釣りをしない友人たちと集まっての鍋大会。その具材ゲットを買って出たのは良いけれど、風が吹き、断念している内に期日が迫り、残すところ二週間を切って少々焦っていた。
 何が何でも、鍋具材では最高に旨いメダイを釣らなくてはならないため、いつもの完全フカセは断念して、あまり得意ではないというか、「どうしても」という場合を除いてほとんどやらない天秤ズボ釣りにチャレンジしてきた。 

 訪問したのは兵庫県但馬海岸にある、柴山港から出向する第三豊洋丸さん。いつもは完全フカセ釣りでお世話になっている船だが、1~3月はメダイや根魚狙いを中心に船を出している。過去の釣果欄を確認する限り、白石グリよりも安定しているように思えたので、期待を持っての釣行だった。

 暖冬の極みになっている今冬だが、ここ但馬海岸も例外ではなく、雪を被らない山々をバックに無事出港。目指すは100mラインに点在する漁礁の一つだった。

 そして第一投。底取りを行い、10mを切ったところまで巻き上げて撒きエサを一振り。すると、早くも竿先をフワフワと持ち上げる特有の前アタリが現れ、その後に竿先が海面に向かって突き刺さっていった。
 アワセを入れると、そこに待っていたのは、まさしく心待ちにしていたメダイの走りだった。

●中型メダイの引き●

 引き味から中型と判断。口切れが怖いのでテンションをキープしつつ、ゆっくり目に引き上げて無事にゲット。70cmには少し足らないが、鍋料理なら、2~3人前にはなるので一安心できた。

●68cm●


 そして続いての投入。船長が撮影したいというので、竿受けにセットした後に、それに応えていると、後ろで「兄ちゃん、アタッてるで~。」の声が。
 慌てて竿を掴んでアワセを入れたが、対処が遅れたために漁礁にハリスが擦れて仕掛が飛んでしまった。この日は風と潮が反対で船位が安定しなかったので、どうやら漁礁のすぐ際にズレた所で食ってきたようだ。
 「連発するからいいや。」と思ったのも束の間、そこからは沖メバル他の外道はアタるものの、メダイからのアタリは全く途絶えてしまった。どうやら底潮の動きが止まったのが原因のようだった。
 そんな中、船長は懸命にポイントを探してアチコチと奔走してくれたが、最初の1匹以外にメダイはゲットできず、この日の釣りが終わってしまった。

 68cmが1匹では7人前の鍋具材には到底足るはずもなく、ボクのメダイ探しの旅は、まだまだ続くのであった。
 
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’20年版 完全フカセ・タックル 〜ロッド編

2020-02-01 12:30:00 | 船釣りタックル&仕掛、戦略他
■完全フカセ釣り専用竿■

 さて、今回はロッド編だが、ボクの判断基準からすると、リールと同じく新品市場に「これは!」という物がないのが悩みの種だ。
 以前にも記したが、完全フカセ釣りにおいては「オモリ負荷は何号」や「置き竿にした際に食い込みが…」なんて話は関係なく、磯竿と同様に「魚を寄せるための調子」をひたすら追及して欲しいのだが、現行販売品で実際にそのコンセプトで設計しているのは、がまかつの真鯛スペシャルLVシリーズ(今年からタイプⅡに移行)と、少し感じは違うが、ダイワのリーオマスター・フカセ SX の2種類しか存在しない。

●リーオマスター・フカセ SX H-300●


 「じゃぁ、その2種のどちらかを選べばイイじゃないか。」と、言われてしまいそうだが、両竿共に白石グリのヒラマサ狙いだとパワーレンジが合い、威力を発揮するものの、ヒラマサの大きさと走りが違い、それに対抗するハリスの太さが違う玄達瀬でのやり取りではかなり厳しくなる。その他諸々、突き詰めてゆくと、簡単にはいかないのだ。
 で、ここから先はボクの考える「必要条件」に沿って記してゆく。


■必要な長さ■

 2016年頃まで、鷹巣沖や白石グリ辺りへの釣行時であれば、ボクは船竿としては長めの、がまかつ・真鯛スペシャル LV・H375という竿を愛用していた。

●真鯛スペシャル LV・H375●

 この竿は、踏ん張っていると一旦曲がり込んだ後、胴部の反発力で起きてくるという、まさしく磯竿的7:3調子であり、そこを高く評価していた。しかし、愛用しているうちに評価が揺らいできた。そのきっかけはドラグチェッカーを介した実験だった。
 その実験結果は、全長3.75mの、この竿は当然ガイド数が多く、また、ガイド間でラインがブランクスに触れる距離が長いため、2.5mクラスの竿に比べると7%ほど摩擦抵抗が多くなるというモノだった。
 磯釣り界では、「竿尻を魚に向けるくらいの気持ちでで竿を立てろ。」と言われるが、これは「これくらいの意識で絞り込まないと、本人が思っている程竿が立っておらず、胴の反発力が生かせない。」という意味だ。
 竿が長ければ長い程テコの原理で必要以上の力がかかるのは当たり前の事。更に摩擦抵抗が7%増した中で竿を立てる作業は、無駄に体力を消耗するように思えてきた事が第一点。それに加えて、「『ガイド間でラインがブランクスに触れる距離が長い』は仕掛けをフリーで流す際にも余計な抵抗が増える。」という第二点目のデメリットを考慮して、全長2.5mクラスの竿を導入するに至った。それは2017年の事だった。

 玄達瀬で普段使いしている長さだったため、扱いに不自由は無く、取り回しの楽さは大きなメリットだった。ただ、全長が短い分だけ、事と次第によっては舵やスクリューに絡み易くなるという、デメリットはあったが、「船際でヒラマサが釣り座の反対方向に走れば、今までよりも更に腕を伸ばす事を意識して海中に竿を突っ込む」という竿さばきで対策してからは、取り込みが安定するようになった。
 そしてそれからも試行錯誤は続き、折に触れ、様々な竿を試したが、その経験から、2.4m未満は短く、3.0m以上では長すぎるという結論になり、現在では全長2.65mの竿を愛用している。但し、例外があって、乗合船で釣り座がミヨシ側になった場合には、オマツリ防止に今でも3.75m以上の竿を使用する事がある。
 一昔前だと、「3.0mは短めの置き竿用、3.6mが長めの置き竿用、2.7mが手持ちの長め、2.4mが手持ちの短め」という考えがスタンダードだったが、現在では汎用品を除くと殆どの大物竿が2.35m以下になっているので、時代の流れはボクの考えと相反している。だが、オモリを背負わない完全フカセでは、ヒラマサがフルパワーで突っ込んだ際に舷側、船底、スクリュー、そして舵といった障害物に摩れる確率が高いので、それをかわす為には、もう少し長さが必要というのが、ボクが経験から得た見解だ。
 新品市場で2.7mクラスの青物専用竿を探すのは点数が少なく、厳しい状況だ。そのため、広く探すには中古市場も視野に入れなくてはならないが、そこでも流通量は少ない。仕方ないので、全長2.35m~3.0mの範囲内で新品を探すのが現実的となるが、ただ長さだけを考慮すれば良いワケではないのが、竿選びの難しいところだ。

■調子について■

 ここ近年に各メーカーから発売された大物狙いの竿は、ほとんどが6:4調子になっている。
 恐らくこれは、オモリを背負った際に船の揺れを吸収する事を視野に入れて設計しているのだと思う。だが、何度も言うが、オモリを背負わない完全フカセにはそんな機能は必要ない。欲しいのは、時には300m先になるかも知れない位置からヒラマサを引っ張り出してくる能力だ。
 少し考えれば解るが、船の揺れに対してオモリ負荷の掛かった仕掛を安定させる手段が胴部の反発力を殺す事であり、疾走する魚の頭を釣り人側に向けるのには、逆に胴部の反発力が必要になる。当然ながらこの二律背反的な要素を兼ね備える事は、本来、至難の業なのだ。
 また、胴調子竿は、曲がりのロスが大きく、例えばマダイ用の5:5調子のグラス竿に大型青物が掛かった様子を見れば解るが、魚の走りを受け留めるのは全長の半分より手前の位置になり、竿先から30~40%程度が魚の居る方向へと一直線になる。こうなると、その直線になった部分は無駄になり、全長が短い7:3調子の竿が曲がっているのと理屈では変わらない。「だったら初めっから取り回しの良い方を使った方が、効率が良いのでは?。」というのがボクの考えだ。
 また、「胴調子の竿は持ち重りし易い」というのは磯釣り界での共通認識であるし、素材面からも胴調子を実現するためのグラス素材の多用は重量増加の元凶にもなって、これまた取り回しが悪くなるのだ。 


■現状の竿■

 ボクが思う最適な長さである全長2.7mクラスの、大物狙いの竿で、7:3調子を謳った竿は現行販売品に存在しない。中古市場で探しても、大昔の「骨董品級ロッド」しかないのが現状だ。
 それに加えて取り回しの良い「細身&軽量かつ高反発」の、カーボン含有率の高い竿となると尚更ハードルが上がるどころか、棒高跳びのバーが上がってしまう。
 ボクの場合は現在のところ、ダイワ・マッドバイパー・スティング265Mという竿を愛用しているが、この竿はこれまで述べてきた条件に全て合致した竿ではないため、100点満点の竿だとは思っていない。

●マッドバイパー・スティング265M●


 この竿の全長は2m65cmで、調子は6:4に分類され、「M」の表示からも解るが、シリーズでは中間の硬さになり、オモリ負荷が60~150号なので、号数表示の竿に換算すると、100号竿相当という事になる。
 実はこれ、本来は玄達瀬での12号ハリス用として購入したのだが、その動機はいつも玄達瀬釣行でお世話になっている、晴海丸の船長が「これで間違い無し!」と言っていた事と、関東方面の釣り船の船長が「メーターオーバーのヒラマサを獲った実績No1」と釣果欄に載せていた事だ。
 「まぁ、試しに一丁。」程度で導入した竿だったが、両船長の意見は正しかった。
 そして、トラブルが発生した際の代用としてこの竿を白石グリ(8号ハリス)で使用してみたところ、太ハリス使用時と殆ど変わらない感覚で扱える事が判明し、今ではどこでヒラマサを狙うのも「これ一本!」で通している。
 中~小型はともかく、90cm以上のヒラマサが掛かると、この竿はどこにもクセが無く全体がキレイな円を描いて曲がり込む。曲がりにピーク位置が無いのは、「引っ掛かりが無い」という事なので、それがハリスの、適応範囲の広さに繋がっているのだ。
 ブランクスの肉厚が分厚く、100号竿クラスでありながら、適応ハリスが30号迄と、高負荷に耐えられる設計になっており、それが効いてヒラマサに突っ込まれた後は、確実に胴の戻りが期待できるのがウレシイ。
 上記の点に関してはyoutubeの動画 https://www.youtube.com/watch?v=_bR3zRnyLNw&t=93s で確認すると解ってもらえると思う。
 だが、欠点もあって、カーボン含有率77%であっても自重が重く、605gもある。また、シャキッとした張りのある竿が好みのボクにとっては、シャープさに欠け、どことなくダルな感があるのが残念に思う。
 但しこの竿、販売終了から何年も経過しているだけにオークションや中古販売サイトでもあまり見掛けなくなってしまい、入手が難しくなっているが、全長が2.4mの240Mも視野に入れると、少しは状況が改善する。尚、新型の現行スティングは、全く違う設計思想であり、全長も短くなった別物になる。

 他に好印象だった竿として、これまた旧製品ではあるが、ダイワのリーディングX・ゴウイン265Hがある。これは硬さがH表示でありながら、スティング265Mより少し柔らかく、曲がりの支点が手前に来る。対応能力としては、「ギリギリで玄達瀬の超大型、余裕で白石グリの大型」という感じだ。

●リーディングXゴウイン265H●

 この竿は現在にも系譜が繋がっていて、全長はやや短いが、現行ゴウイン・アオモノがそれに当たる。ボク自身は使用した事が無いので何とも言えないが、もしかすると、そのシリーズ中のHー235・Eは、二世代前の265Hと同様に「使える竿」なのかも知れない。

 その他、7:3調子でスティング265Mよりも曲がりの支点が前に行く、アルファタックルのスフィンクス・バーサタイルの253(玄達瀬=◎、白石グリ=〇)及び252(玄達瀬=〇、白石グリ=◎)もオススメできる。但し、カタログ掲載モデルでありながら、生産中止になっていて、これまたデッドストック物か中古市場で調達せねばならない。

●スフィンクス・バーサタイル252●


■竿選びの条件■

 市場に少ない竿をここまで長々と紹介したのは、ボクのが考える「完全フカセのヒラマサ竿は、どんな基準で選べば良いか。」をお伝えしたかったからだが、それらを要約すると、
①「胴に乗り過ぎない6:4もしくは7:3調子で、全長2.35m~3.0m」
②「オモリ負荷が最大で150号の、汎用竿で言うところの100号クラス以上」
③「曲がり込んだ際に、スムーズなカーブを描く」
④「カーボン含有率の高い物」
の4点になる。
 少し解説すると、
 ①は上段で確認してもらうとして、②は、昔から青物竿は80号が定番とされていたが、それは終始ドラグを緩めて走らせることが可能なブリ族相手の話で、ここ一番というところで糸の出せないヒラマサ相手では、もう一段硬い方が突っ込まれた後の反発力が得られて扱い易い。ただ、100号竿と言っても、汎用竿(シリーズ内のランナップがワイドな竿の事)は胴に乗り過ぎる柔らか目が多いので、迷ったら硬い方を選ぶのがボクの持論だ。
 ③は、同じ6:4調子の表示があっても竿ごとに設計が違い、中にはひらがなの「へ」の字のように曲がる竿や英語の「U」の字に曲がる竿もあるが、曲がりにピークがある竿はその部分で硬い芯が出てしまって、ハリスの守備範囲が狭くなる傾向がある。
 ④は、②と少しカブるが、ヒラマサの走りを制する高反発力が期待出来るうえ、例外もあるが、軽量になる。

という事になる。

 以上、竿選びで困った際の、参考意見としてもらえれば幸いだ。

釣りのスタイルは個人個人によって千差万別。調子や長さに各自の好みがあるのを否定するわけでは無い事をお断りしておく。 



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