■雨続きの中■
前回に続いていつもの晴海丸さんに乗り込み、福井県鷹巣沖を攻めることになった。とは言うものの、雨続きな上に、天気予報上は前回よりも更に悪い予報が出ていたため、「出船はできるが、いつまで釣り続けることができるか?」といった不安を抱えてのスタートになった。
いつものように出航後、程なくポイントに到着してアンカーリング。早速様子伺いで流した仕掛の動きを確認する。すると、今回も風と潮が逆方向から向かい合うため、一旦船尾の方に流れた後の引き返して右舷前方に流れてゆくモノで、いわゆる二枚潮だったが、前回よりも中層以下の潮は“やや”という文字が頭につくが、動きかあるようだった。したがって、糸フケは気になる程の量が出ないため、条件的には今回の方が少しマシなようであった。
開始後しばらくは、前回の初期段階でアタリの出た発泡ウキ7番を1個のセッティングで、流す距離を変えて探っていたが、エサが殆ど盗られなかった。以降は、発泡ウキを外したうえで距離を伸ばして数度流したが、あまり変化がないことから、船長判断でアンカー位置の修正が行われることになった。
■ヒラマサ登場■
狙う場所はほぼ同じだが、そこへ我々の流す仕掛がウマく入るよう、船長は慎重に魚探をかけ直していた。そして、ここだというと位置へアンカーを入れ直し、実釣再開となった。
再開後しばらく経った後、船首で声が上がった。最初の内は、大した引きに見えなかったが、水深分=60mを切るあたりから、ギュンギュンと竿を絞る力強い締め込みが始まった。
そして、それを何度かしのいで無事にネットイン。正体は、94cmのヒラマサで、鷹巣沖では大ヒラマサと言っていいサイズだった。
普通なら、こんなヒラマサを目の当たりにすると「時合い到来!」と、俄然ヤル気が出てくるのだろうが、今年は単発続きで半ば自虐的になっているだけに、そんな気はボクには起こらず、「ただただ自分の釣りを繰り返すのみ。」と、黙々と仕掛の調整を繰り返していった。
しばらくの間は送り出しが30mで、発泡ウキは無しの状態で探っていたのだが、時折エサが盗られるようになったので、もう一度7番を入れてみることにした。すると今度はエサが残ったので、流す距離を伸ばしてみる。
しかし、これではエサが残る一方なので、「少し手前で落として流してみようか?」との思いから、発泡ウキを外してガン玉Bを一つ打ってみた。そして、この流しでは普通に流してエサが盗られたので、送り出しの量を縮めて25mにして、50mまで糸が出た時点で30秒間糸の出を止めてから流してみることにした。
この作戦が当たったのか、それとも単なるタイミングの問題だったのかは判らないが、130mでビューンッ!とスプールの急速逆転が始まった。
すかさず竿を手に持って大アワセ。締め込み具合から始めは、そこそこサイズのマダイかな?と思わされてしまったが、80mを切るあたりで魚が俄然ヤル気を発揮し始めたことから、中型のヒラマサと確信する。
とは言っても、このクラスなら、引きを楽しみながら余裕のやり取りが展開できる。そして、心地良い安堵感と共に無事にネットイン。
「まずは1本!」と、獲れたことにほくそ笑み、続いての流しに入るが、やはり連発はなかった。
アタリのあった130mまで流すのに15分以上かかる潮なので、一時間で流す回数はたかが知れている。仕掛のセッティングや流すパターンをちょこちょこといじっている間に、すぐに時間が経過するので、次のアタリまで我慢の時間は長い。
途中、紆余曲折あって、サルカンの近辺にガン玉Bを2個打つに至っていた。この仕掛を送り出し30mで馴染ませてから流し込み、50mで1分間停止させた後、更に流し込んでゆくパターンを組んでみた。
そして、90mあたりでスプールが急速逆転を開始する。久々のアタリだったが、締め込みはキツくない。
それでも魚の引きを楽しみつつ、無事にゲット。当初はハマチ~メジロを想像していたが、正体はいわゆる小マサ・サイズのヒラマサだった。
小マササイズなら、群れの個体数が多いために連発してもおかしくないのだが、潮行きが悪い影響なのか、オキアミのマキエサが流れてくるコースに長居してくれず、続く小マサはなかった。
■最終段階■
この日は不思議と外道のマダイが全く釣れてこないから、ヒラマサの回遊待ちで焦れる中、気付けば、シトシトと降っていたはずの雨は大粒になり、北東の風は北北東の強風に変わって、あと数度ズレてしまうとアンカーロープに仕掛が絡み付く“アンカー潮”になる状況に陥っていた。
残された時間は1時間と少しだったが、ここで急にサシエサが盗られ始めたため、7番の発泡ウキを装着し、送り出しは20mと、やや少なめにすることで、浮かせてエサ盗りをかわす方向へセッティングをシフトさせたが、それでもサシエサは盗られていた。
次の流しでは、50mで30秒の停止を加えることで更に浮かせてみたが、今度はサシエサが残った。そして、その次では再び途中の止め時間は無しで流してみたが、これまたサシエサは残ったままだった。
この状況下では「もしや、ヒラマサがウロ付き始めたのでは?」といった、浮かれた読みはなかったが、セオリー通りに今度は送り出しは20mのままで、ウキを外したノーマル状態に戻し、途中の止め時間も無しで流すことにした。
そんな中、船長から、「今の流しを含めて2投で納竿」との声がついにかかった。焦りばかりが募る状況だったが、この流しをそのまま続けるか、最後の一投に賭けるため、「一旦回収してサシエサを点検しようか?」と迷ったが、“乗りかかった船”ではなくて、「“流しかかった仕掛”だから、とりあえず150mまで流してみよう。」と、続行させる方を選んだ。
この判断が良かったのか、単にツイていただけなのかは判らないが、カウンターが130mに差し掛かった頃にスプールが水しぶきを上げるが如く、急速逆転を開始した。
■必死の攻防■
アワせた瞬間に「ズドンッ!」と衝撃が伝わり、大マサ・サイズと確信して慎重かつ大胆にやり取りを開始する。このあたりは前回~今回の釣行で何度も予行演習済みなため、大きく慌てることはなかった。
このクラス相手では、ハナから中型電動リールの巻き上げは止まりがちになるので、リールのドラグはキツ目の設定、アクセルレバーはフルスピードにしたまま、左手で竿を立てたままで保持し、右手で道糸を掴んでリール側に送り込む“引き抜き”で強烈なファースト・ランに応戦する。やり取りの初期段階は「やるかやられるか」のバトルだ。(と、カッコイイことを言っているが、ボクの場合は近頃ヘマが多くて、バラす確率が高いのだが…。)
ファーストランをしのいだ後は、重量感はあるものの、大きく暴れることなく70mまでは巻き上げに対して比較的素直についきてきてくれた。しかし、相手はここから再び本領発揮で、いとも簡単にドラグを滑らせ、10m単位でリールから道糸を引き出してゆく。
「押さば引け、引かば押せ」の攻防が何度かあった末、ようやく足下の水深60mに対する一応の安全距離である、カウンター読みで50mまでの引き寄せに成功する。(道糸50m+ハリス6m+斜めに道糸が出ている分の余裕-魚が疾走する距離と道糸の伸び(計10mほど)=安全距離は50mほど)
ここからは最終段階である手手繰りでの攻防に備えて、更に相手を弱らせる。具体的には少しドラグを緩めておき、相手が走れば海底に届かない程度の距離まで“走らせては巻き上げ”を繰り返すのだが、こちらとしては、「ハリ穴が広がって外れてしまわないか?」と心配になる場面だ。
「充分弱らせた。」と思い、船長に「そろそろ引き上げようか?」と声を掛けてから、サルカンが見えるあたりまで距離を詰める。
この時点で、船長から「デカイよ、これは、メーターあるかも?」との声が上がり、こちらもほくそ笑みつつ、「ここで手手繰りする船長にバトンタッチ。」と思いきや、またもや相手のパワーが復活する。
ここで一旦はサルカンを掴んだ船長だったが、まだ弱り切っていないヒラマサが、船下を抜けて反対方向に走ったことを受けて、「手を離すよ。」との声が上がった。
こんな場合に備えて、ボクはいつもリールのドラグを緩め、なおかつリールのクラッチはオフにして右手親指でスプールを押さえながら、竿先を水面近くに保持して構えている。これは道糸が短く巻き取られた段階になると伸びしろが減ってショック吸収力が充分ではないため、急な走りでハリスが飛ぶ確率が上がるからだ。そしてなおかつ、船長には「ヤバかったら、いつでも糸を離してOK。」と声を掛けることで、意思疎通を図っているのだ。
そして再びボクとヒラマサの船下での攻防が始まった。
一旦、元ガイドの近くまで海中に竿を突っ込んで船底との距離を取り、「その昔にやった、タイコリールでのチヌ釣り」の要領で、右手親指の押さえ加減で走りを制御しながら、走りが緩んだ時点でクラッチをオンし、竿が伸されないように踏ん張っていると竿の反発力に魚が負けて、竿先から円を描くように船下を回り始める。
次いで船下から魚が出たのを確認したら、テンションを掛けながら竿を水平やや上に保持し直し、魚が向かう方向に竿先を向けながら頭を浮かせにかかる。これは「引かれる方向とは逆に向かう、魚の性質」を利用した竿さばきで、これを使うと魚は8の字を描きながら上がってくるのだ。(これは磯のグレ釣りで勉強した成果でアリマス!。)
これで船長が再びサルカンを掴む迄に至ったのだが、またもや反対方向に走って同じ動作の繰り返しになった。いつ何処でハリスが根ズレを起こしているかも知れず、慎重にならざるを得ないのだが、この動作が少なくとも5~6回続いたうえ、バッテリーケースを右手に持ち、左手で竿を持って右舷から左舷、左舷から右舷への移動も伴ったので、こちらもヘロヘロになる。
船際での何度もの攻防が続いた末、ヒラマサがバランスを崩して横向きに泳ぎ始めたのを確認した後、船長が一気にネットイン!。
「昨年に続くメーター級か?」と、一旦は腰が浮くほど喜びそうになったが、僅かに2cm足りない98cmだった。(スケールと同じ、キビシ目の採寸法)
しかしながら、鷹巣沖では大金星サイズであるうえ、長い釣り人生で出会った秋ヒラマサの中では“一番のファイト賞”をあげたい程の、価値ある1本だった。
勿論、この魚の後は時間切れでアウト。強まる風と雨の中、退散するように帰港した。
■縁起の良い八並び■
玄達瀬への釣行以来、釣果はポツポツと得ているが、心理的には苦しみ抜いての結果ばかりなので、一度くらいは思い通りに展開して、“スカッと連発!”となる日が来ることを願っている。そんな中にあって、ここ2回の釣行では、前回が、88cm、今回が68、78、98cmで、「八並び」が成立している。これは、今後の釣果が「末広がり」になるお告げなのだろうか?。
そんな日が来ることを願って、これから先は、鷹巣沖のヒラマサと平行して舞鶴沖も攻めてゆく予定だ。
来週は、大型連休のため休刊します。
前回に続いていつもの晴海丸さんに乗り込み、福井県鷹巣沖を攻めることになった。とは言うものの、雨続きな上に、天気予報上は前回よりも更に悪い予報が出ていたため、「出船はできるが、いつまで釣り続けることができるか?」といった不安を抱えてのスタートになった。
いつものように出航後、程なくポイントに到着してアンカーリング。早速様子伺いで流した仕掛の動きを確認する。すると、今回も風と潮が逆方向から向かい合うため、一旦船尾の方に流れた後の引き返して右舷前方に流れてゆくモノで、いわゆる二枚潮だったが、前回よりも中層以下の潮は“やや”という文字が頭につくが、動きかあるようだった。したがって、糸フケは気になる程の量が出ないため、条件的には今回の方が少しマシなようであった。
開始後しばらくは、前回の初期段階でアタリの出た発泡ウキ7番を1個のセッティングで、流す距離を変えて探っていたが、エサが殆ど盗られなかった。以降は、発泡ウキを外したうえで距離を伸ばして数度流したが、あまり変化がないことから、船長判断でアンカー位置の修正が行われることになった。
■ヒラマサ登場■
狙う場所はほぼ同じだが、そこへ我々の流す仕掛がウマく入るよう、船長は慎重に魚探をかけ直していた。そして、ここだというと位置へアンカーを入れ直し、実釣再開となった。
再開後しばらく経った後、船首で声が上がった。最初の内は、大した引きに見えなかったが、水深分=60mを切るあたりから、ギュンギュンと竿を絞る力強い締め込みが始まった。
●船下に来てのやり取り●
そして、それを何度かしのいで無事にネットイン。正体は、94cmのヒラマサで、鷹巣沖では大ヒラマサと言っていいサイズだった。
普通なら、こんなヒラマサを目の当たりにすると「時合い到来!」と、俄然ヤル気が出てくるのだろうが、今年は単発続きで半ば自虐的になっているだけに、そんな気はボクには起こらず、「ただただ自分の釣りを繰り返すのみ。」と、黙々と仕掛の調整を繰り返していった。
しばらくの間は送り出しが30mで、発泡ウキは無しの状態で探っていたのだが、時折エサが盗られるようになったので、もう一度7番を入れてみることにした。すると今度はエサが残ったので、流す距離を伸ばしてみる。
しかし、これではエサが残る一方なので、「少し手前で落として流してみようか?」との思いから、発泡ウキを外してガン玉Bを一つ打ってみた。そして、この流しでは普通に流してエサが盗られたので、送り出しの量を縮めて25mにして、50mまで糸が出た時点で30秒間糸の出を止めてから流してみることにした。
この作戦が当たったのか、それとも単なるタイミングの問題だったのかは判らないが、130mでビューンッ!とスプールの急速逆転が始まった。
すかさず竿を手に持って大アワセ。締め込み具合から始めは、そこそこサイズのマダイかな?と思わされてしまったが、80mを切るあたりで魚が俄然ヤル気を発揮し始めたことから、中型のヒラマサと確信する。
●中マサの引き●
とは言っても、このクラスなら、引きを楽しみながら余裕のやり取りが展開できる。そして、心地良い安堵感と共に無事にネットイン。
●78cmの中マサ●
「まずは1本!」と、獲れたことにほくそ笑み、続いての流しに入るが、やはり連発はなかった。
アタリのあった130mまで流すのに15分以上かかる潮なので、一時間で流す回数はたかが知れている。仕掛のセッティングや流すパターンをちょこちょこといじっている間に、すぐに時間が経過するので、次のアタリまで我慢の時間は長い。
途中、紆余曲折あって、サルカンの近辺にガン玉Bを2個打つに至っていた。この仕掛を送り出し30mで馴染ませてから流し込み、50mで1分間停止させた後、更に流し込んでゆくパターンを組んでみた。
そして、90mあたりでスプールが急速逆転を開始する。久々のアタリだったが、締め込みはキツくない。
●少し軽めの締め込み●
それでも魚の引きを楽しみつつ、無事にゲット。当初はハマチ~メジロを想像していたが、正体はいわゆる小マサ・サイズのヒラマサだった。
●68cmの小マサ●
小マササイズなら、群れの個体数が多いために連発してもおかしくないのだが、潮行きが悪い影響なのか、オキアミのマキエサが流れてくるコースに長居してくれず、続く小マサはなかった。
■最終段階■
この日は不思議と外道のマダイが全く釣れてこないから、ヒラマサの回遊待ちで焦れる中、気付けば、シトシトと降っていたはずの雨は大粒になり、北東の風は北北東の強風に変わって、あと数度ズレてしまうとアンカーロープに仕掛が絡み付く“アンカー潮”になる状況に陥っていた。
残された時間は1時間と少しだったが、ここで急にサシエサが盗られ始めたため、7番の発泡ウキを装着し、送り出しは20mと、やや少なめにすることで、浮かせてエサ盗りをかわす方向へセッティングをシフトさせたが、それでもサシエサは盗られていた。
次の流しでは、50mで30秒の停止を加えることで更に浮かせてみたが、今度はサシエサが残った。そして、その次では再び途中の止め時間は無しで流してみたが、これまたサシエサは残ったままだった。
この状況下では「もしや、ヒラマサがウロ付き始めたのでは?」といった、浮かれた読みはなかったが、セオリー通りに今度は送り出しは20mのままで、ウキを外したノーマル状態に戻し、途中の止め時間も無しで流すことにした。
そんな中、船長から、「今の流しを含めて2投で納竿」との声がついにかかった。焦りばかりが募る状況だったが、この流しをそのまま続けるか、最後の一投に賭けるため、「一旦回収してサシエサを点検しようか?」と迷ったが、“乗りかかった船”ではなくて、「“流しかかった仕掛”だから、とりあえず150mまで流してみよう。」と、続行させる方を選んだ。
この判断が良かったのか、単にツイていただけなのかは判らないが、カウンターが130mに差し掛かった頃にスプールが水しぶきを上げるが如く、急速逆転を開始した。
■必死の攻防■
アワせた瞬間に「ズドンッ!」と衝撃が伝わり、大マサ・サイズと確信して慎重かつ大胆にやり取りを開始する。このあたりは前回~今回の釣行で何度も予行演習済みなため、大きく慌てることはなかった。
このクラス相手では、ハナから中型電動リールの巻き上げは止まりがちになるので、リールのドラグはキツ目の設定、アクセルレバーはフルスピードにしたまま、左手で竿を立てたままで保持し、右手で道糸を掴んでリール側に送り込む“引き抜き”で強烈なファースト・ランに応戦する。やり取りの初期段階は「やるかやられるか」のバトルだ。(と、カッコイイことを言っているが、ボクの場合は近頃ヘマが多くて、バラす確率が高いのだが…。)
ファーストランをしのいだ後は、重量感はあるものの、大きく暴れることなく70mまでは巻き上げに対して比較的素直についきてきてくれた。しかし、相手はここから再び本領発揮で、いとも簡単にドラグを滑らせ、10m単位でリールから道糸を引き出してゆく。
「押さば引け、引かば押せ」の攻防が何度かあった末、ようやく足下の水深60mに対する一応の安全距離である、カウンター読みで50mまでの引き寄せに成功する。(道糸50m+ハリス6m+斜めに道糸が出ている分の余裕-魚が疾走する距離と道糸の伸び(計10mほど)=安全距離は50mほど)
ここからは最終段階である手手繰りでの攻防に備えて、更に相手を弱らせる。具体的には少しドラグを緩めておき、相手が走れば海底に届かない程度の距離まで“走らせては巻き上げ”を繰り返すのだが、こちらとしては、「ハリ穴が広がって外れてしまわないか?」と心配になる場面だ。
「充分弱らせた。」と思い、船長に「そろそろ引き上げようか?」と声を掛けてから、サルカンが見えるあたりまで距離を詰める。
この時点で、船長から「デカイよ、これは、メーターあるかも?」との声が上がり、こちらもほくそ笑みつつ、「ここで手手繰りする船長にバトンタッチ。」と思いきや、またもや相手のパワーが復活する。
ここで一旦はサルカンを掴んだ船長だったが、まだ弱り切っていないヒラマサが、船下を抜けて反対方向に走ったことを受けて、「手を離すよ。」との声が上がった。
こんな場合に備えて、ボクはいつもリールのドラグを緩め、なおかつリールのクラッチはオフにして右手親指でスプールを押さえながら、竿先を水面近くに保持して構えている。これは道糸が短く巻き取られた段階になると伸びしろが減ってショック吸収力が充分ではないため、急な走りでハリスが飛ぶ確率が上がるからだ。そしてなおかつ、船長には「ヤバかったら、いつでも糸を離してOK。」と声を掛けることで、意思疎通を図っているのだ。
●ここからが、言うことを聞かない●
そして再びボクとヒラマサの船下での攻防が始まった。
一旦、元ガイドの近くまで海中に竿を突っ込んで船底との距離を取り、「その昔にやった、タイコリールでのチヌ釣り」の要領で、右手親指の押さえ加減で走りを制御しながら、走りが緩んだ時点でクラッチをオンし、竿が伸されないように踏ん張っていると竿の反発力に魚が負けて、竿先から円を描くように船下を回り始める。
次いで船下から魚が出たのを確認したら、テンションを掛けながら竿を水平やや上に保持し直し、魚が向かう方向に竿先を向けながら頭を浮かせにかかる。これは「引かれる方向とは逆に向かう、魚の性質」を利用した竿さばきで、これを使うと魚は8の字を描きながら上がってくるのだ。(これは磯のグレ釣りで勉強した成果でアリマス!。)
これで船長が再びサルカンを掴む迄に至ったのだが、またもや反対方向に走って同じ動作の繰り返しになった。いつ何処でハリスが根ズレを起こしているかも知れず、慎重にならざるを得ないのだが、この動作が少なくとも5~6回続いたうえ、バッテリーケースを右手に持ち、左手で竿を持って右舷から左舷、左舷から右舷への移動も伴ったので、こちらもヘロヘロになる。
船際での何度もの攻防が続いた末、ヒラマサがバランスを崩して横向きに泳ぎ始めたのを確認した後、船長が一気にネットイン!。
「昨年に続くメーター級か?」と、一旦は腰が浮くほど喜びそうになったが、僅かに2cm足りない98cmだった。(スケールと同じ、キビシ目の採寸法)
しかしながら、鷹巣沖では大金星サイズであるうえ、長い釣り人生で出会った秋ヒラマサの中では“一番のファイト賞”をあげたい程の、価値ある1本だった。
●98cm!の大マサ●
勿論、この魚の後は時間切れでアウト。強まる風と雨の中、退散するように帰港した。
■縁起の良い八並び■
玄達瀬への釣行以来、釣果はポツポツと得ているが、心理的には苦しみ抜いての結果ばかりなので、一度くらいは思い通りに展開して、“スカッと連発!”となる日が来ることを願っている。そんな中にあって、ここ2回の釣行では、前回が、88cm、今回が68、78、98cmで、「八並び」が成立している。これは、今後の釣果が「末広がり」になるお告げなのだろうか?。
そんな日が来ることを願って、これから先は、鷹巣沖のヒラマサと平行して舞鶴沖も攻めてゆく予定だ。
来週は、大型連休のため休刊します。